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255/442

255ー保護者同伴?

「……んん〜……」

「殿下、お目覚めですか?」

「あ、ニル。ボク寝てた?」


 目が覚めたらベッドだった。久しぶりだな、これ。

 俺はよっこいしょとベッドをおりてソファーに座る。


「はい。久々にオクソール様が」

「ああ、疲れちゃって。りんごジュースちょうだい」

「はい。珍しいですね。そんなにお疲れになるのは」

「うん。初めて海に潜ったんだ!」

「海にですか!? 殿下は泳げましたか!?」


 りんごジュースを置きながらニルが聞いてきた。


「泳げる訳ないじゃん。オクに連れてってもらったの。コクン……良い経験になった」

「そうですか。何事もなくて良かったです。ああ、殿下。アウル様がお待ちかねですよ」

「アハハハ、アウルが?」

「はい。オクソール様に抱かれて戻ってらしたので、殿下が倒れられたのだと勘違いされて」

「あらら……」


 俺は疲れて寝ているだけだと、クーファルやオクソールが説明したそうだ。

 だがアウルースは、そんなになるまで何をさせたんだ! と、怒ったらしい。

 あの子はもう何なんだろう。まだ2歳なのに、賢い子だ。


 クーファルは辺境伯にブルーホールの説明をしてくれていた。夕食にニルズが捕りたての魚を持ってきてくれるそうだ。夕食を食べたらクーファルは城に戻る。

 いや、クーファル。マジでいてほしいよ。頼りになる兄だ。


「リリしゃまー!!」


 アウルースがポテポテと走ってくる。


「アウル、ごめんね。心配かけちゃった」


 俺はアウルースの待つ応接室に来ている。


「リリしゃま、平気れしゅか!? いたいいたいないれしゅか!? お熱ないれしゅか!?」


 アウルースが心配そうに、俺の身体のあちこちをペタペタと触る。

 俺はソファーに座り、アウルースを自分の横に座らせる。


「アハハ、アウル大丈夫だよ。寝ていただけだから」

「リリしゃま、よかったれしゅ」

「あー! もう! アウル可愛い! ありがとう!」

「キャハハハ! リリしゃまー!」


 俺は、アウルースを抱きしめる。可愛いぜ!

 何度も言うが、俺は決してショタコンじゃあない。  


「フィオン、これは何だ?」

「クーファル兄上、あなたの弟です」

「いや、一人はフィオンの息子だろう?」

「もう、二人は毎日あれです」

「フィオンの息子は、リリが大好きらしいね。私はさっきアウルに叱られたよ」

「リリには何かあるのでしょうか?」

「ん? フィオン、どうした?」

「本当に、こんなにリリに懐くとは思わなかったのです。仲良くなるだろうとは思ってましたが」

「そうだね。もしかしたら、何かあるのかもね。リリが好かれるのは子供に限った事じゃないだろう?」

「そうですわね」

「ああ。王国でもそうだったよ。リリを崇拝する者もいた程だよ」

「兄上、その話を聞いた時は心臓が止まるかと思ったのを覚えてますわ。

 リリを狙っている王国にわざわざ連れて行くなんて無謀な事を! 無事だったから良かったものの……本当に父上は何を考えておられるのかしら!」


 あーあ、クーファル。駄目だよ、王国に行った事を言ったらさ。知らないぞ、俺は。


「リリしゃま、海に行ったれしゅか?」


 アウルースが俺の横を陣取っている。ちょこんと座っていて、まだ足が下につかない。


「そうだよ。オクに連れてもらって潜ったんだ」

「もぐりゅ?」

「そう。海の中にブクブクって」

「えぇッ!! リリしゃま平気でしゅか!?」

「アハハ、大丈夫。オクは凄いからね」

「おぉー!! オクはしゅごい!」

「そう。オクは凄いんだ」


「クーファル兄上」


 俺とアウルースの話を聞いていたフィオンの雲行きがまた怪しくなってきた。


「ん? 何かな? フィオン」

「リリは海に潜ったのですか? リリは泳げませんよね?」

「あ……いや。大丈夫、オクソールと一緒だから。ね、フィオン」

「兄上! もう、リリに危険な事はさせないで下さい!」


 それからクーファルはフィオンとアウルースに責められまくった。

 嬉しいね。そんなに俺の事を思ってくれて。フィオン親子は本当に有難い。

 やっぱ、アウルースはフィオンの血を継いでいるだけの事があるわ。



「リリ、兄さまはもう疲れたよ。こんなに親子で責められるとはね」

「クーファル兄さま、すみません。アウルはさすがフィオン姉さまの子ですね」

「ああ、まったくだ。そっくりだな」


 それから、ニルズが持ってきてくれた魚介類をたらふく食べて、クーファルとソールは城に帰って行った。

 クーファル、マジで助かったよ。有難う。



「リリアス殿下、今日は昼から裏山に行きませんか?」

「アスラ殿、山ですか?」


 翌日、朝食を食べているとアスラールが誘ってくれた。


「ええ。以前リリアス殿下が栗と松茸を見つけられた山です。今の季節は苺ができていますよ」

「おぉー、苺ですか!? アスラ殿。また連れて行ってもらえますか?」

「ええ! もちろんです!」

「れしゅ! ボキュもれしゅ!」

「あー、アスラ殿。どうしましょう?」

「ああ、父親に面倒見てもらいましょう」

「じゃあ、アーシャも行きましょう!」

「え? アーシャもですか?」

「もちろんです! アウルだけなんて不公平は駄目です。アーシャも父親のアスラ殿が見て下さい。ボクはオクに乗せてもらいますよ」

「リリアス殿下、有難うございます」

「アーシャも! 一緒!」

「そうだよ、アーシャも一緒に行こう」

「あい!」




「いやッ!」

「アウル、無理言うな」

「いやッ! リリしゃまと一緒!」

「アウル、父様と一緒に乗ろう」

「いぃやッ!!」


 アウルースが俺と一緒の馬に乗ると、言い出した。お顔を真っ赤にして、ブンブン横に振ってアルコースの馬は嫌だと言っている。


「オク、どうする?」

「殿下、大丈夫ですよ? 一緒に乗りましょう」

「本当に?」

「ええ。ただし、殿下。しっかりアウル様を支えて下さい」

「うん、分かった。じゃあ、アウル。ボクと一緒にオクに乗せてもらおう」

「リリしゃま!」

「でもね、約束してほしい」

「なんでしゅか?」

「ジッとしている事。危ないからね」

「あい!」


 アウルースは元気良く手をあげる。


「帰りはちゃんと父様の馬に乗る事」

「えぇー…… 」


 顔だけでなく身体全部で、嫌だと訴えている。吹き出してしまいそうだ。表情が豊かだ。


「約束出来ないなら、アウルは一人でお留守番だ」

「いやれしゅ!」


 アハハ、アウルースは両手を握り締めてるぜ。


「じゃあ、約束できる? お馬さんもね、アウルとボクと二人も乗せたら疲れるんだ。だから、帰りは父様の馬ね」

「あい……仕方ないれしゅ。帰りは父しゃまの馬にのりましゅ」

「よし! アウルは良い子だ」

「殿下、申し訳ありません」

「アルコース殿、大丈夫ですよ」


 そうして、俺とアウルースはオクソールに、レイはリュカに、アースはシェフに、ラルクはアスラールの側近セインに、アンシャーリはアスラールに、其々馬に乗って出発する事になった。

 なんだか、子供が多いな。保護者同伴の遠足かよ。


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