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254ー疲れたよ

「プハッ!」


 俺は、オクソールに抱きかかえられたまま海面に顔を出した。リュカも直ぐ側に顔を出している。


「殿下、大丈夫ですか?」

「うん、オク。大丈夫。オク、壁見た?」

「はい、驚きました」


 俺の鑑定より、オクソールの精霊の眼の方が詳しく見えている筈だ。


「皆さん! 大丈夫ですか!?」

「ああ! リリ、大丈夫か!?」

「はい、兄さま! ニディ! ここはどこ!?」

「殿下、振り返って下さい! 親父の船が見えます!」


 そう言われて、俺はオクソールの首元に抱きつきながら振り返る。

 ニルズが手を振っているのが分かる。それ程離れていない。外海にも出ていないらしい。


「あと10分か15分程沖に向かって泳げば外海です。ギリギリのとこです。このまま、船に戻りましょう!」


 皆、船に向かって泳ぎ出す。


「殿下、私の背中に乗って寝そべって掴まれますか?」

「うん、オク」


 俺はオクソールの背中にヒョイと乗せられ、小判鮫の様にオクソールの腰に掴まる。

 オクソールもリュカも泳ぎは得意ではないと言っていたが、現役漁師のニディに平気でついて行く。クーファルもだ。



「無事で良かったよ! なんであんな所に出てきたんだ?」


 船に戻るとニルズが驚いた様に聞いてきた。

 ニルズ、聞きたいのは分かるが、ちょっと待ってくれ。

 とりあえず、皆にクリーンだ。海水でベタベタしたのがなくなる。

 次は、ドライ。シュルン、と水分がとんで皆乾いた。


「リリ、有難う」

「いえ、兄さま」


 さて、俺はりんごジュース飲むぜ。

 適当な場所に座り込み、マジックバッグからりんごジュースを出す。

 クーファルがニルズに説明してくれている。もう服をちゃんと着ている。やっぱクーファルだよ。フレイだとこうはいかない。


「……コクコクコク……ぷはッ」

「めっちゃ一気飲みしてるぜ」


 ニルズ、クーファルの説明はもう終わったのか?


「アハハハ、ニルズさん。殿下はいつもですよ。ニルさんに叱られて最近は我慢してたんですけどね、潜って喉が乾いたんでしょう」

「皆さんも水分とってください」


 ニディが飲み物を配っている。冷たい紅茶かな? 普通の茶葉? 何?

 俺1人りんごジュース飲んじゃってごめんね。


「ああ、これは水に砂糖と塩を混ぜて、ユノスの果汁を絞ってます」


 なるほど、スポドリの柚子味ね。

 柚子に豊富に含まれるクエン酸は、乳酸を早く分解し、疲労感からの回復を早める効果があるからな。良い選択だ。


「オクソール様。コレ、良いッスね。普段飲んでるのより、美味い。」

「ああ、リュカ。風味がいいな。」

「ユノスのせいですかね? ユノスがない時は、リモネンやオロンジュを絞って入れたりしますよ。」

「なるほど、騎士団でもそうしてみよう」

「オクソール様、騎士団でも飲まれているのですか?」

「ああ、ニディ。鍛練の後にな。水分補給と言ったらコレだろう?」

「アハハ、そうですね。建国当時からの定番ですね」


 だって、皇帝は元日本人なんだもんな。そりゃ、スポドリ知ってるさ。


「コクコクコク……」

「リリアス殿下、りんごジュースはもうそれ位にしとかないと」

「リュカ、もう? まだ飲みたい」

「いや、殿下。もうかなり一気飲みしてますよ?」

「え、そお?」

「はい。そうです」


 仕方ない。マジックバッグに仕舞っておこう。


「リリ、どうだった?」

「はい、兄さま。魔石だらけでした。ね、オク」

「はい。海底も、横穴の壁にも魔石がありました」

「オクソール、それは本当に?」

「はい。クーファル殿下」

「リリ、どう思う?」

「あれですね。とんでもなく想像できない程の時間、何億年も掛けてああなったんでしょうね」

「そうか。地層になっていたからね」

「はい、兄さま」


 さすがクーファル。地層に気付いてたか。


「じゃあ、海底のはブルーホールになった時に出てきたと見ていいね」

「みたいですね。兄さま、それしかないですよね、あの地層を見ると」

「ああ、そうだね。しかし……」

「兄さま?」

「大昔はこの近辺にも大型の魔物がいたと言う事だね」

「はい。もしかしたら、海の深さも違っていたのかも知れませんね」

「そうだね。これだけの珊瑚礁だ。気が遠くなる時間を掛けてできたんだろう。地層に埋もれていた事と、海流がなかったから魔石も削られずにあの大きさで残ったんだろうね」

「はい。兄さま。実際に見て良かったです。ブルーホールに潜れるなんて機会はありませんし」

「ああ、本当に。貴重な体験をさせてもらったよ」


 実際に潜って見た結果、危険は無いだろうと言う結論になった。

 また辺境伯の儲けに繋がるな。

 しかし、ブルーホールの底にあった宝石珊瑚だ。貴重な珊瑚が沢山あった。所謂、赤珊瑚と呼ばれる物もある。前世の某国が大好きな珊瑚だ。


「リリ、どうした?」


 俺は声を抑えて、クーファルだけに聞こえる様にこっそり話す。


「クーファル兄さま。魔石と一緒にあった珊瑚も磨けば宝石として価値があるのです」

「珊瑚がかい?」

「はい。宝石珊瑚と言われる物です。濃い赤珊瑚から白い珊瑚も。濃い赤珊瑚はあまりないので、価値が高いでしょうね。でも、乱獲すると貴重な珊瑚が無くなってしまいます」

「そうか…… それでリリは兄さまだけに教えてくれたのかな?」

「はい」

「じゃあ、このまま黙っておこう」

「兄さま」

「辺境伯領としては、魔石だけで充分すぎる程の経済効果があるだろう。もう充分だよ」

「はい、兄さま」


 そうだな。魔石は身を守る為や生活を豊かにする役に立っているが、珊瑚はただの宝石だからな。無くても困らない。


「リリ、そう言う事だ」

「はい、兄さま」

「さ、戻ろう」



 港に戻ってきた。俺は若干お疲れだ。ちょっと眠い。久しぶりだ、この感じ。

 お昼寝が必要な時は、よくこうなっていた。


「クーファル殿下、有難うございました!」

「いや、ニディ。私もとても貴重な体験をさせてもらったよ。あの魔石を採りに潜る時は必ず二人以上で潜る事だね。あの深さまで潜るのは危険だから、一人では駄目だ。戻って辺境伯に報告しておくよ。それからにする方がいい」

「はい、分かりました」

「クーファル殿下もゆっくりできるのか?」

「いや、ニルズ。私は急に来たから直ぐに帰らないといけないんだ。城でフレイ兄上の代わりをしないとね」

「じゃあ、夕飯に間に合う様に魚を届けておくから食べて帰ってくれ」

「ニルズ、有難う。嬉しいよ。おや、リリが珍しく寝そうだ」


 そうなんだよ。俺はもう目がショボショボしておネムの目になってる。


「おっちゃん! また来るよ!」

「ああ! またゆっくり来な!」

「うん! ニディも有難う!」


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