表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

253/437

253ー潜るぞ!

今日も遅くなってしまいましたぁ!

申し訳ないです。

「クーファル殿下、泳ぎは?」

「ああ、大丈夫だ」


 なんだよ! クーファルだけズルいじゃん! 俺だって潜りたい!


「兄さま! ボクも!」

「リリは泳げたか?」

「いいえ、泳いだ事ないです。湖に落ちてからは、水場には近寄らせてもらえなかったですから」

「そうだよな。オクソール、お前泳ぎは?」

「はい、獣人なので得意ではありませんが、泳げます」

「クーファル殿下! リリ殿下が行くなら俺も行きます!」

「リュカ、泳げるか?」

「はい! オクソール様と同じ理由で得意ではありませんが、泳げます。あの湖の底まで潜れます!」


 あの湖とは、俺が3歳の時に落ちた湖だな。リュカのいた村からは近い。


「そうか。んー、リリはでも…… 」

「兄さま、何ですか?」

「泳げないだろう?」


 そうだ。俺、泳げないんだった……

 今更、ガビーン! だ。


「殿下、私が引っ張って潜りましょうか?」

「オクソール、出来るのか?」

「はい。リリアス殿下お一人位なら」

「俺も! 俺も側で補助します!」

「んー、ニディどう思う?」

「え!? クーファル殿下、俺ですか!?」

「ああ、だって実際に潜ったのはニディだけなんだろう?」

「え!? お、親父! どうしよう!?」

「お前が思う事を言えば良いんだ。この方達はそう言う方だ。変に構なくていい」

「うん。ニディ、そうだよ」

「リリアス殿下。じ、じゃあ……あの……深さはありますが、海流がある訳ではないんです。むしろ、ありません。ですから、補助さえしっかりすれば大丈夫だと思います」

「そうか、流れがないのか。それはまた、どうしてだ? リリ」

「兄さま、ブルーホールですから。そこだけ落ち込んで深くなっているので、底に行けば行く程流れもないのでしょう」

「なるほど。しかし、ブルーホールだけでも珍しいのに、そこから魔石とはね。この領地は一体どうなっているんだ」

「兄さま、大陸の端ですから」

「ああ、まあな」

「クーファル殿下、見えてきましたよ! あれです!」


 ニディが指差す。

 珊瑚礁が白っぽく丸く円の様になっているのが見えてきた。海のブルーが円の中だけ濃い色になっている。知識がなければ、とても自然に出来た物とは思えないだろう。



「リリ、凄いね。本当にブルーホールだ」

「はい、兄さま。こんなに海の色がハッキリと違うとは思いませんでした」

「ああ。素晴らしい。よく見つけたな」

「シェフが気付いたんです」

「そうか、シェフが。シェフも居たら潜りたがっただろうね」


 今はシェフはお留守番だ。シェフのお仕事があるからな。夕食の準備をしたいのだそうだ。

 残念がっていたが、自分で残ると言ってきた。シェフは、自分はリリアス殿下の食事を作るのが1番ですから。と、言いながら肩を落としていたけどな。苦渋の決断みたいにさ。大袈裟な。シェフも潜ってみたかったんだろうね。


 クーファルの側近ソールもお留守番だ。オクソールもリュカもいるからいいと、クーファルに言われていた。せっかく来たのに。

 ユキとラルクも、アーシャとアースとレイに捕まってしまいお留守番。




 ブルーホールの真ん中に船を進ませる。


「リリ、まるで吸い込まれそうだな」

「はい、兄さま」

「1番底に横穴があるのではなくて、途中にあるんです。そこも海流はなさそうでした」


 ニディが説明する。


「横穴か……外海に繋がっているかも知れないね。リリ、船からでも鑑定をしたかな?」

「あ、いえ。忘れてました」

「リリ、鑑定しながら移動できるのかな?」

「はい、兄さま」

「よし! 一度リリも一緒に潜ってみよう。オクソール、無理そうなら直ぐに上がってくれ」

「はい、殿下」


 やったぜ! 俺も潜れる! 超嬉しい!


 この世界、水着やウェットスーツなんて物はない。だから皆下着姿だ。ニディに例の石をもらう。


「これを咥えるのか?」

「はい。クーファル殿下。そしたら、息が出来ます」

「どれ位の時間大丈夫なんだ?」

「分かりません。ですが、何時間でも。それこそ、コレ1個を何十年と使います」

「そうなのか!? 凄いな」

「殿下、絶対に私を離さないで下さい」

「うん、オク。分かった!」

「殿下、俺も絶対に側にいますから」

「うん。オク、リュカお願いね」


 俺とオクソールは万が一、流されたり等で離れたりしてしまう場合を考えて、腰にロープをくくりつけて繋げる。


「皆さん、いいですか? ついてきて下さい」

「ニディ、頼んだぞ。俺は船からずっと見ているからな! もしヤバくなったらそのまま真っ直ぐに上に上がってくれ!」


 ニルズが船で番をしてくれる。


 さあ、ブルーホールに潜るぞ!


 ――ザバーン!!


 皆、ニディについて海に飛び込んだ。

 オクソールにしっかり抱えられて、海底を目指す。深いブルーに吸い込まれる様だ。どんどん陽が届かなくなっていく。静かな世界だ。

 俺は体をオクソールに預け、オクソールの体に掴まりながら、海面を振り返る。太陽の陽がキラキラしている。

 幻想的だ。こんな世界、俺は知らない。

 この小さい体は大丈夫だろうか? この世界の俺は、前世では想像もできない経験をしている。前世で平和に医者をしていたら、到底出来ないだろう経験をだ。


 ずっと海底を目指して潜る。本当に息が苦しくない。この石はなんなんだ? 不思議だ。まあ、魔法のある世界だ。俺にとっては、不思議だらけだ。


 暫く潜ると、陽の光があまり届かなくなるのでライトで光を出す。海底が見えてきた。海底に到着し、俺はクーファルに言われた通り、鑑定をする。其々の魔石がどの魔物の物なのか分かる。

 珊瑚もあった。宝石珊瑚と呼ばれるものだ。

 よく見ると周りの岩盤も詳しく見える。地層になっている。かなり、古い年代のものだ。このブルーホールは一体いつできたのか。ああ、そうか。そう言う事か。


 オクソールも精霊の眼を使っているのだろう。魔石を手に取って見たりしている。


 そして、ニディが上の横穴を指す。

 あー、あそこに横穴があるのか。クーファルが頷くと、ニディが横穴を目指して少し浮上する。

 海底から1/3位浮上したところに、大きな横穴があった。先頭のニディが入って行く。

 俺はずっと鑑定をしている。

 ここはやはり鍾乳洞になっていた。気の遠くなる様な時間をかけて、こうなったんだ。ブルーホールだけでも、想像できない程の時間が掛かってできている。

 その中にある鍾乳洞だ。しっかり鍾乳石も残っている。

 全くと言って良い位、流れがない。少し横穴に入ると、もう陽が届かなくて真っ暗になっていく。

 俺は前後と真ん中位に、数個ライトを出す。前は大きめに出した。ライトで照らし出された鍾乳洞は幻想的で、何億年もの時間が作り出したファンタジーだ。


 この鍾乳洞の壁…… オクソールを見ると頷いた。オクソールにも見えている。

 どんどん、奥へと進む。微かに陽が差し込んできた。どこかに出るらしい。

 途中に横穴はなかった。これ1本か。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ダイビングって空気供給ができれば素人や泳ぎが得意でない者でも問題なし。初めてで、どんな水中環境でも行けるというほどそこまで簡単じゃないのですが…しかも横穴とか…水温低下から身を守るダイ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ