252ークーファル登場!
今日はもう一話どうぞ!
俺達は辺境伯の邸に戻ってきた。
昼食前に戻って来たので、アースとレイが驚いている。
「リリ殿下、早いですね。どうしました?」
「うん、レイ。ちょっとね」
「なんだ?」
俺はアスラールに、直ぐに部屋で書いてくるのでクーファルに手紙を出したいと伝える。
「では、父の執務室まで」
「うん、アスラ殿分かった」
俺は急いで部屋に戻る。
「ニル」
「殿下、お早いですね。どうかされましたか?」
「うん。クーファル兄さまにお手紙書きたい」
「分かりました。こちらに……」
ニルが机にお手紙セットを用意してくれる。
俺は今日のブルーホールの事を詳しく書く。そして、ブルーホールの海底に沢山の魔石があった事、鍾乳洞があるらしい事。危険がないか分からない事。
クーファルならこれだけ書けば理解してくれるだろう。
リュカと一緒にアラウィンの執務室に行くと、アラウィンと側近のハイクと、アスラールと側近のセインがいた。
「アラ殿、これをクーファル兄さまに」
「はい、殿下」
俺が5歳の時に作った魔道具だ。小箱にお手紙を入れて魔力を流すと、お手紙は城に転送される。
「殿下、アスラールから聞きました。また魔石が出たとか」
「うん。そうなんだ。見た? 大きいでしょ?」
「はい。驚きました」
「それだけの魔物がどこにいたかなんだよ」
「しかし、殿下。ニディも申し上げたと思いますが、あの浅瀬には大型は入ってこれません」
「うん。そうだよね。なら、どうしてあそこに魔石があったんだろう?」
「殿下、鍾乳洞ですか?」
お、セイン。初めて喋ったな。
「そうかも知れない。もしかして、外海に繋がってるのかも。それなら、危険なんだ」
そんな話をしていると、魔道具の小箱についている魔石が光った。
「あ、クーファル兄さま。もうお返事くれたのかな?」
「殿下、どうぞ」
ハイクがお手紙をくれる。
俺はその手紙を読む。
「あらら……」
「殿下、どうされました?」
「アスラ殿、クーファル兄さまが直ぐにこっちに来るって」
慌てて地下の転移門のある部屋で辺境伯と一緒に待っていると、クーファルとソールが転移してきた。速攻じゃねーか。
「リリ! 手紙読んだよ!」
「クーファル兄さま! すみません、ボクでは分からなくて」
「いや、興味深い。是非ブルーホールを見てみたい!」
クーファル、好奇心に駆られたか。そうだよな、俺だってそうなるさ。だが先にだな。
「兄さま、お昼食べましたか?」
「え? リリ。急いで来たからまだだが?」
「ボクもです。兄さま、お腹が空きました」
「ああ……アハハハ。リリそうだね。私も頂いてもいいかな?」
「クーファル殿下! もちろんです! ようこそお越し下さいました!」
「辺境伯、急にすまないね。母上や兄上まで世話になっていると言うのに」
「いえ、とんでもございません! さぁ、どうぞ」
「なんでだよ! なんでクーファルがいるんだ!?」
昼食を食べに食堂に入ると、フレイが突っかかってきた。
「兄上、昨日食べ過ぎで寝込まれたとか。何をなさっているんですか」
「寝込んでねーよ!」
「兄上……」
「何なんだよ、何でクーファルがいるんだよ!?」
フレイがめっちゃ嫌そうだ。そんなに突っかからなくてもいいのにさ。
「フレイ兄さま、すみません。ボクです」
「リリ? どうした?」
「ボクが分からない事があって、クーファル兄さまに相談したのです。そしたら、兄さまがわざわざ来て下さって」
そう話しながら、俺は食べるけどな。シェフの食事は美味しい!
「シェフ、これはドリア?」
「はい、リリアス殿下。久しぶりでしょう? グラタンはよく作ってましたが」
「そうだね、美味しい!」
「有難うございます!」
「シェフ、本当に美味しいわ。このホワイトソースもチーズもとっても美味しい。ねぇ、皇后様」
「ええ、本当にそうね。とっても美味しいわ。フレイ、文句言ってないで食べなさい」
「母上、しかしクーファルが!」
「だって、フレイだとリリアスの疑問に答えられないのでしょう? 仕方ないじゃない」
「リリしゃま、リリしゃま」
「ん? アウルどうしたの?」
「リリしゃまのにいしゃまれしゅか?」
「そうだよ。2番目の兄さまだ。クーファル兄さまだよ」
「くー、くーふゃる……」
アウルース、ホワイトソースでベトベトのお口がタコさんみたいになってるぜ。クーファルて言いにくいんだな。
「アハハハ、可愛いね。お口の周りがベトベトだよ? フィオンの子かな?」
「はい、兄上。アウルースです。アウル、母さまのお兄様よ。ご挨拶は?」
フィオンがアウルースの口の周りを拭く。アウルースはまだ一人ではちゃんと食べられない。スプーンを片手に持って一生懸命食べているが、汚さない様に首にかけられたナフキンにもこぼしている。
小さい子は何でも一生懸命だ。それがまた、可愛い。
「アウリュでしゅ!」
「私は君の母上とリリの兄さまだよ。クー兄さまだ」
「クーにいしゃま!」
「そうだ。よろしくね」
「あい!」
「アハハハ、可愛い」
「クーファル兄さま、懐かしいですね。クー兄さま」
「ああ、リリも小さい時はクーファルと言えなくて、クー兄さまと呼んでいたからね」
「クーファル殿下?」
「ああ。君はアスラールの子かな?」
「はい! アンシャーリです!」
「そうか、お利口だね。なんだ、ここには天使が二人もいるのか?」
「兄さま、可愛いでしょう?」
「ああ、リリの小さい時を思い出すよ」
「兄上、リリは天使でしたわ」
「ああ、その通りだ」
フィオン、フレイ、もうそのクダリは満腹だよ。
「リリ、ブルーホールを見に行けないかな?」
「クーファル兄さま、直ぐには……」
「殿下、直ぐにニルズに伝えますから大丈夫ですよ」
「アスラ殿! 有難うございます!」
「よお! クーファル殿下! 来たか!」
俺達はまた港に来ている。ニルズがまた船を出してくれるそうだ。悪いね、ニルズ。
「ニルズ、また世話になるね。無理言ってすまない」
「いいって事よ!」
「兄さま、おっちゃんの息子さんでニディです」
「ク、クーファル殿下! 初めまして、ニディです!」
「ああ、君が潜ったのかな?」
「はい!」
「詳しく聞かせて欲しいな」
船がブルーホールに着くまで、クーファルはニディを質問攻めにしていた。
「なるほど、じゃあ鍾乳洞かどうかは確認できていないんだな」
「はい。入ってみますか?」
「ああ、ニディ。是非とも。しかし……」
「兄さま、どうしました?」
「リリ、自分の目で見てみたいよね」
「そりゃあ、クーファル兄さま。ボクも見たいです!」
「ニディ、私も潜ってみたいのだが」
「「えっ!?」」
思わず俺も驚いて声を上げたよ。