表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

248/442

248ーシェフ潜る

「アハハハ! リリ殿下! 懐かしいな!」

「おっちゃん、本当だね。5年も経っちゃった」

「ああ。だけどまたこうして来れたじゃねーか。それで充分だ」

「おっちゃん、有難う」

「殿下もちょっと大人になったしな」

「えー、ちょっと?」

「ああ。ちょっとずつでいいんだ」


 ニルズが親目線、いや祖父目線で見ていてくれるのが、有難い。

 皇帝はこの世界の親だが、やはり皇帝。いや、嫌いじゃないよ。ちゃんと親として好きだぜ。

 でも、やはり皇帝だと言う意識は当然大きい。


「殿下! 私、今日は潜りますよ!」


 またシェフが言ってるよ。


「えー、シェフ駄目!」

「え、殿下。今日は準備もしてきて……」

「駄目。だから言ったじゃん。シェフは作る人」

「ハハハハ! シェフ、また言ってんのか!」


 そうだよ、ニルズ。何とか言ってやってくれよ。


「リリ、なんだ?」

「兄さま、めちゃ食べてますね」

「美味いからな!」


 フレイが、マグロとヒラメとおにぎりと順に頬張って食べている。


「フレイ殿下、海底にも美味いのがいるんですよ。それをとりに潜りたいのですが、リリ殿下が駄目だと」

「そりゃそうだろ。シェフは作る人だからな」

「ほら。フレイ兄さまも同じ事言ってるじゃん」

「殿下ー! 今日だけ! お願いします!」

「では、私が……」

「いや、だからオク。なんでだよ」


 このクダリ、5年前もやったぞ?


「殿下、今日だけ! 1度だけです!」

「もう。兄さま、どうしましょう?」

「シェフ、お前さ絶対に無事に戻ってこいよ? リリのシェフはお前だけなんだからさ」

「もちろんです! 分かってます!」

「まあ、じゃあ1度だけ良いんじゃないか?」

「殿下! 有難うございます!」

「シェフ、俺一緒に潜りますよ」

「ニディ、すまない」

「ニディ、有難う」

「いえ、リリアス殿下。直ぐに戻りますよ」

「うん、そうして」


 もうシェフは。そんなに潜りたいのかね。



「殿下、私も……」

「だから、オク。駄目!」

「シェフ、これを咥えて下さい。息が続かなくなる事がありませんから」


 ニディがシェフに長細い小さな白い石?を手渡した。表面は多孔質か?軽石の様な表面だ。


「その様なものがあるのですか?」

「はい。この辺りの漁師は皆持ってます」

「おっちゃん、あれ何?」

「ああ、咥えておくとな息ができるんだ」

「へえ、天然の物?」

「ああ、領内で採れる石だ」

「石?」

「ああ、石と言っても軽いんだ」

「へえ、凄いね」


 前世のダイビングみたいに背中に大きなタンクを背負わなくてもいいんだ。ファンタジーだよ。


 シェフがニディに先導されて、海に飛び込んだ。

 素人だし、潜れないんじゃないか? なんて軽く思っていたんだが。

 シェフはまた凄かった。軽く水を蹴ると、すんなり潜って行った。


「もう、シェフの身体能力どうなってんの?」

「凄いですよね」

「リュカ、できる?」

「いや、俺は泳ぐのは苦手です。泳げますけどね」

「獣人は皆苦手ですね」

「じゃあ、オクなんで潜りたいと言ったの?」

「まあ、1度海の底を見てみたいと」


 オクソール、お前も意味不明だ。



「殿下! 凄いです!!」


 シェフが海から顔を出すなり叫んだ。


「シェフ! どうしたの!?」

「この辺り全部です!! ビッシリと!!」

「だからー! シェフ! 何がー!?」

「ウニと牡蠣です! この辺りの海底にビッシリとです!! 一面全部です!」

「えぇーッ!!」


 シェフとニディが船にあがってきた。


「アハハハ! シェフ! 面白すぎです!」


 船にあがるなり、ニディが爆笑している。


「ニディ、迷惑かけちゃった? シェフ、食べ物の事になると見境ないから」

「いえ、殿下。迷惑など全然です。それより、シェフが……アハハハ!」

「ニディ、そんなに笑わなくても」

「だってシェフ!」


 え? シェフ、何やったんだ?


 ニディの話だと……

 シェフはウニや牡蠣がびっしりとある海底が見えた途端に、その海底目掛けて突進? して行って海底で両手を広げて悶えていたらしい。

 まあ、気分は海底を抱きしめたかったんだろうな。うん、多分。


「それでですね、殿下」


 シェフがウニの殻を割りながら話す。


「うん、シェフなぁに?」


 俺は、それをフォーク片手に待っている。小さいスプーンが欲しい。


「私、気付いたのですが、この辺は深いです。あんな大型のツナスが回遊してくる位ですから。はい、どうぞ」

「うん。それで? 有難う」


 ウニをもらい食べる。美味い!


「遠浅なんですよ」

「え、そうなの?」

「はい。今、船があるこの辺りは徐々に深くなっていっています。もう少し沖に出ると、もっと深くなるでしょう。ここはちょうど境目ですね。

 その陸側です。陸からこんなに離れているのに、浅いんです。珊瑚礁です」

「そうなの?」

「はい。で、殿下。陸側の海をよーく見て下さい」


 え、陸側……?

 シェフがあの辺と、指を指す方をじーっと見る。

 ………………んッ!?

 珊瑚礁らしき白い物が見える。もしかして円になってるのか? 珊瑚礁の先が並んでるよな?


「あれれ?」

「分かりますか?」

「おっちゃん!」

「なんだ?」

「あそこ! あれ白くない?」


 俺が指差す方をニルズが見る。


「ああ、あそこか。あそこは浅くてこの船では行けないんだ。」

「おっちゃん、あそこ行けないの?」

「1度港に戻って船を乗り換えたら行けるぞ」

「行きたい!」

「まあ、明日にしな」

「え……」

「明日なら船を用意しておいてやるよ」

「そう? いいの?」

「ああ。いいさ。な、ニディ」

「はい。明日準備しときますよ」

「本当? 迷惑掛けちゃうね」

「いえ、リリアス殿下。嬉しいです」

「え? ニディ?」

「親父に凄い自慢されてたんですよ。リリ殿下、リリ殿下って。だから、今回は俺もご一緒できて嬉しいです」

「有難う。おっちゃんもニディも有難う!」

「まあ、今日は食べな!」

「うん!」

「殿下! ウニと牡蠣もどうぞ! 牡蠣はソテーしてみました!」


 ソテーの匂いに釣られてフレイがやってきた。


「おー! 美味そうだ!」

「フレイ殿下、どんだけ食べるんですか!」

「デューク、いいじゃん。美味いんだよ」

「兄さま、お腹大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ! 外で食べる事なんてないしな。それに捕れたてだぞ?」


 フレイよ。食べ過ぎで腹痛くなっても知らねーぞ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ