24ーフレイ
「オク、先ににーさまとお会いしたいな」
「では、ご案内致しましょう」
「うん! おねがい!」
オクソールに案内されて、ニルと手を繋いで邸内を歩く。
「にーさまは寝りゃりぇたのかなぁ?」
「少しはお休みになられたと思いますよ。捕縛はあっと言う間でしたから。此方です」
――コンコン
「殿下、失礼致します。リリアス殿下をお連れしました」
「にーさま!」
オクソールがドアを開けてくれて部屋の中に入ると、お久しぶりの兄がいた。クソイケメンだな、おい!
「おー、リリアス! 元気になったか?」
そう言いながら抱き上げられた。
「はい、にーさま! お久しぶりです!」
「ああ、ちょっと大きくなったか?」
「にーさま、なってないです!」
「ハハハ、そうか?」
「にーさま、おりょしてください」
「ダメだ。リリは可愛いから暫く兄様の膝の上だ」
意味わかんねー。ゴツゴツした男の膝に座って何が嬉しいよ?
「リリ、今回はお手柄だったな。よくやった」
「にーさま? ボクは何もしてませんよ?」
「獣人を一人助けただろう? そこから繋がって沢山の人達を助けた」
そうなるのか?
「リリがあの獣人を助けていなかったら、この犯罪は表に出なかったかも知れない。そうしたら、攫われて捕まえられていた人達が家族の元に帰れなかっただろう? それは悲しい事だ。だから、リリのお手柄だ」
「にーさま」
ギュッと兄にしがみついた。
「ハハハ、リリは可愛いな。もう身体はいいのか?」
「はい、もう元気です!」
「では、そろそろ城に戻ってくるか?」
「はい、にーさま。あ、にーさまに相談があります」
「ん? なんだ?」
「最初に助けた獣人が……リュカと言います。ボクに仕えたいと言っていりゅそうです。どうしたりゃ良いでしょう?」
「そうか。リリはそのリュカ? が、嫌いか?」
「いいえ。まだ一度しか会った事がありません」
「一度か? 一度で……? そうか。リュカはこの奥にある狼獣人の村の子だったか。たしか、純血種か」
「はい。にーさま、村の事をご存知なのですか?」
「ああ、一応全ての獣人の村は把握している」
そうなのか、帝国凄いな! 情報は大事だからな。
「現在、確認できている狼獣人の純血種はあの村を含めて2箇所だけだ。それだけ希少種だ。リリにはまだ少し難しいかも知れないが、今回の様な事は少なくない。だからと言って、多い訳でもないが。希少種の狼獣人で、それも純血種だと狙われる。珍しいものを欲しがる馬鹿な奴らがいるんだ。帝国だけでなく、他の国にもな。そんな奴等から俺達は守らなければならない。あってはならない事なんだ」
「はい、にーさま」
「ま、身元がハッキリしているから、側に置いてやっても良いんじゃないか? 獣人は身体能力が人間とは段違いに秀でているからな。お前を守ってくれる」
「ボクをですか? 側にとは?」
「リリはまだオクソールとニルしかいなかっただろ。従者兼護衛にしても良いんじゃないか? ただし、そのリュカがどれだけ本気なのかだな」
俺を守る為か……それはなぁ……
「リリ、お前も希少種と一緒いやそれ以上なんだ。やっと生まれた光属性を持つ皇子だ。今迄に何度狙われた? 何度オクソールに助けられた? これからはオクソール一人だけより、もう一人いる方が良いだろう」
「でもにーさま。ボクはボクを守りゅ為だけにリュカに仕えてもりゃうのは…… 」
「だから、リュカの本気度合いが大切になる。兄様も会ってみて良いか?」
「はい、もちりょんです」
第1皇子の兄に抱かれながらリュカがいる部屋へと向かう。兄達は本当に俺には甘い。可愛がってくれるのは嬉しいが……
「にーさま、ボク一人でありゅけます」
「いいじゃないか。リリは兄様が嫌いか?」
「そんな、大好きです」
「じゃ、問題ないな」
あるよ。大有りだよ。
「殿下、こちらです」
――コンコン
「失礼、フレイ殿下とリリアス殿下がお越しだ」
中に入ると、リュカがベッドから下りて畏まって頭を下げていた。
「リュカ、まだ起きたりゃダメ」
「リリ、いいから。君がリュカか?」
「殿下、お初にお目に掛かります。狼獣人の村長の次男で、リュカ・アネイラと申します。この度はリリアス殿下に命を助けて頂きました。その上、村の者達も助けて頂き感謝致します」
そうか……リュカは長の息子だったのか。
「うむ…… 構わないからベッドに戻りなさい。せっかくリリアスに助けられた命だ。大切にしてもらわないと」
「……!」
「リュカ、お言葉に甘えろ」
「オクソール様、しかし…… 」
「構わない」
「はい。では、失礼致します」
そう言うとリュカはやっとベッドに入った。ま、第1皇子の前で横にはなれないわな。
「早速だが、リリに話は聞いた。君、リリに仕えたいそうだな?」
「はい」
「どうしてか、理由を教えてくれるか?」
「先程、申し上げた通りです。私はリリアス殿下に命を助けて頂きました。それだけでなく、村の者達も全員無事に助けて頂きました。その御恩をお返ししたいのです」
恩だなんて…… 大袈裟だ。
「君、村長の次男て言ったな。次期、副長だろう? なのに、リリに仕えると?」
そうなのか!? それならダメだ。村の役に立つ者を預かる訳にはいかないだろう。