238ー天使が二人
「リリ!」
「姉さま!」
俺達を包んでいた白い光が消えると、フィオンに抱き締められた。
「姉さま! お久しぶりです! お元気でしたか?」
「ええ! リリ! 会いたかったわ!」
「姉さま! ボクもです!」
このフィオンの反応、久しぶりだ。ちょっと嬉しい。
「リリアス殿下、お久しぶりです」
「アラ殿、大勢になってしまってすみません。宜しくお願いします」
「リリアス殿下! よくいらっしゃいましたわ!」
「アリンナ様! お元気そうで!」
「リリアス殿下、お待ちしてましたよ」
「アスラ殿、宜しくお願いします!」
「リリアス殿下、さあ上がりましょう。息子に会ってやって下さい」
「アルコース殿、是非!」
辺境伯一家が待っていてくれた、地下の転移門から上に移動する。懐かしい、辺境伯邸だ。
応接室に移動すると、皆が揃っていた。
「アース、大丈夫だった?」
「はい、リリ殿下。アッと言う間でした」
「嘘つけ。ズッと俺の腕を握ってたじゃないか」
そうなのか? アースてビビリだよな。
「さあ、殿下。お座り下さい。りんごジュースをご用意してますよ」
「アリンナ様、ありがとうございます」
そして皆一通り自己紹介した。皇后様も転移は初めてだけど、なんともない様で良かった。
「殿下、息子のアウルースです。アウルとお呼び下さい。アウル、ご挨拶を。母さまの弟君だよ」
アルコースに連れられて、小さな男の子がやってきた。
「はじめまちて、アウリュでしゅ」
「はじめまして、ボクはリリだよ。大きくなったね〜。会いたかったよ!」
俺はアウルースの目線に合わせてしゃがみ頭を撫でた。赤ちゃんの時にほんの少し会った以来だ。超可愛い!
アウルース・サウエル
フィオンとアルコースの息子、2歳だ。
フィオンの金髪にアルコースの蒼色の瞳。クリックリのお目々に、プクプクのほっぺだ。辿々しい喋り方もなんとも可愛い。まんま、小さいフィオンだ。
「リリ?」
「うん。リリだよ。いっぱい一緒に遊ぼうね」
「うん! リリ!」
「こらこら、リリ様だ」
「父しゃま、リリしゃま?」
「そう、リリ様だ」
「リリしゃま!」
「アハハハ、可愛い〜!」
思わず抱き締めちゃったよ!
「リリアス殿下、私の娘です。アンシャーリです。アーシャと呼んでます。アーシャ、リリアス殿下だ。ご挨拶をしなさい」
「初めまして、アンシャーリです」
小さな女の子が、小さな手でスカートを摘んで挨拶してくれる。
「初めまして、上手にご挨拶できるんだね。宜しくね。ボクはリリ。リリでいいよ」
「リリ殿下?」
「うん、そうだよ。アーシャも一緒に沢山遊ぼう!」
「はい! リリ殿下! 殿下とっても可愛い!」
「アハハハ、可愛いのはアーシャだよ〜!とっても可愛いね〜!」
アンシャーリ・サウエル
次期辺境伯、アスラールの子だ。
ブルーシルバーの髪を緩くおさげにしていて、瑠璃色の瞳だ。アスラールによく似ている。ちょっと勝気そうな女の子だ。
「殿下、妻です」
「リリアス殿下、お初にお目に掛かります。ラレース・サウエルと申します。宜しくお願い致します」
「アスラ殿の!? 初めまして、リリです!宜しくお願いします」
「まあ! こちらこそ! 姉からいつもお話を聞いていて、お会いできて光栄です」
金髪にオレンジの瞳。穏やかそうな女性だ。前に聞いていた幼馴染だな。薬師のアイシャの妹だ。
「アウル、おばあさまよ」
フィオンに連れられアウルースが皇后様に挨拶していた。
「かあしゃま、おばあしゃま?」
「そう。母さまの母さまよ」
「まあ……! なんて可愛いのかしら!」
皇后様はそう言ってアウルースを抱き締めた。あー、フィオンの母だわ。やる事そっくりだ。
「母上、アウルがビックリしますわ」
「あらあら、フィオンごめんなさい。だって可愛いんですもの!」
「アウルース、俺は母さまの兄さまだ」
フレイが横から顔を出す。
「にいしゃま?」
「アウル、おじさまね」
「いや、フィオン。それは嫌だ」
「だって兄上、伯父じゃないですか」
「まあまあ! あなたはお姫様みたいね」
皇后様はもうアンシャーリに目がいってるよ。
「アンシャーリです!」
「はい、お利口さんね。おばあさまよ。よろしくね」
「おばあさま!」
「はい。おばあさまよ」
「リリアス殿下、りんごジュースどうぞ」
「アリンナ様、有難うございます」
「リリしゃま、りんごジュースしゅき?」
トコトコとアウルースが寄ってきた。
「うん。大好き。アウルは?」
「ボキュもしゅき!」
「そうか! 美味しいもんね! アウル、アーシャ、おいで、一緒に飲もう!」
「あい! リリしゃま!」
「はい! リリ殿下!」
あぁー! 癒されるぅ〜! なんて可愛いんだ! 両手に花だよ! もう、スリスリしたいよ!
「アハハハ、リリ殿下。もうメロメロですね!」
「アース、だって可愛いじゃん! 超可愛い!!」
「だあれ?」
「アウル、アーシャ、ボクのお友達だよ。アース」
「アーシュ?」
「ああ。よろしくな。アウル」
「アウル、アーシャ、僕はレイだよ」
「レイ」
「そう、レイだ」
もう、キリがないぜ。子供は天使だ!
「なんか殿下のお小さい頃を思い出しますね」
「リュカ、そうだな。殿下も天使の様だった」
俺の後ろで、リュカとオクソールが何か言ってるよ。
「アウル、リュカとオクだ。こっちはラルク」
「ん〜、オキュ、リュカ、えっと……リャリュク!」
「そうそう! お利口さんだね〜! 凄いや!」
「いや〜、思い出しますね〜! 殿下の、りゃりりゅりぇりょ! 可愛かった!」
「リュカ、思い出さなくていいよー!」
「殿下のお小さい頃に少し似ておられますか?」
オクソールが、目尻を下げて言う。オクソールのこんな顔は珍しい。
「オクソール、そうでしょう? 似ているわよね!」
「はい、フィオン様」
「オクソール殿、そんな畏れ多い!」
「アルコース殿、何を今さら」
「そうよね、本当だわ」
「いやいや、そんな」
「あら、私はリリの母さまだから、何になるのかしら?」
あー、母よ。それは多分残念ながら……
「母さま、おばあさまでは?」
「リリ、それは嫌だわ」
「そうね、エイルはまだそんな歳ではないものね」
「あら、皇后様もですわよ?」
「でも、おばあさまって呼ばれると嬉しいのよ。可愛くて。孫は可愛いと言うけれど。駄目ね、本当に可愛いわ」
「フレイ殿下の赤ちゃんもきっとすぐですよ」
「エイル様、止めて下さい! プレッシャーかけないで下さい!」
「あら、ごめんなさい。でも、私はやっぱりリリの小さい頃を思い出してしまうわ」
おいおい、何で俺の話になるんだよ。
「エイル、リリアスは本当に天使だったもの。あの笑顔に皆やられたのよ」
「皇后様、そうでしたわね。ニコッと笑って、ありがとう。でしたね」
「そうよ、エイル。本当にあれは反則だわ」
「え? ボクの話ですか?」
「ええ、リリは天使だったって話よ」
「もう、母さまも皇后様も、今天使が二人も目の前にいるじゃないですか」
「フフフ、本当だわ」
「小さい子供がいると、賑やかで明るくなって良いわね」
「皇后様、正に幸せですわね」
「ええ、エイル」
ああ、幸せだよ。やっと会いに来れた。やっと俺のお休みだー!