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236ー帝国の貴族事情

 令嬢達の事件で、クーファルは開き直った。

 自分は本当に納得できる女性でないと婚約しない。女性は懲り懲りだと、皇后様に言い放ったそうだ。

 父も皇后様も困ってはいたが、令嬢達の一件があった為一応許した形になった。

 イケメンでモテ過ぎるのも、考えものなんだな。

 

「ボクは普通で良かったよ……コクン」


 アースとレイが来ているので、部屋でシェフのスイートアップルパイを食べながら、りんごジュースを飲んでいる。

 スイートアップルパイとは、俺の希望でアップルパイにさつまいものペーストを入れてもらったものだ。シナモンが効いている。

 このパイとりんごジュースが、俺の1番のお気に入りだ。


「殿下、何言ってんですか?」


 アースが変な顔をして言う。なんだよ、その顔は。


「殿下が普通ですか?」

「うん、アース。ボクは至って普通」

「……」

「アース、言っても無駄だ。殿下は分かってないから」


 レイは本から目を離しもせずに言う。

 

「レイ、天然だな」

「そうそう」


 なんだよ。何言ってんだよ。

 だって想像してみろよ。

 1番上のフレイは、金髪にスカイブルーの瞳のキラッキラの皇太子殿下だ。まあ、脳筋だけどな。若干、ジャ◯アンだけどさ。

 次のクーファルだって、ブロンドのサラサラの髪に碧の瞳。知的で穏やかな物腰が大人気だ。

 3番目のテュールは、ブルー掛かったフワフワの金髪に紺青色の瞳。精悍でカッコいいと評判だ。

 4番目のフォルセなんてとどめだ。フンワリウェーブのブルーブロンドの髪に紺青色の瞳。そこにいるだけで、まるで妖精の様だと噂されている。


「あー……なるほど」

「ね、アース。ボク普通でしょ?」

「いやいや、それでも普通じゃないし」

「まあ、でも学園に入るまでは大丈夫じゃないですか?」


 やっと本から目を離してレイが言う。


「え? レイ、ボク?」

「はい」


 そう言えば……


「ねえ、アースとレイはもう学園に通うの?」

「いえ、僕達も侯爵家なんで自由なんです。だから、高等部からです」

「レイ、そうなんだ」

「リリ殿下、気付くの遅いよ。でなきゃ、今ここにいませんよ?」


 あ、そうか。もう学園の新学期は始まってるのか。


「じゃあ、ディアも?」

「はい。侯爵家は皆高等部からですね。なるべく男爵家とは関わり合いたくないですから」

「レイ、そうなの?」

「まあ、最低伯爵家だよな」


 アースが当然の様に言った。そうなのか?


「アース、何で?」

「リリ殿下、奴ら貴族だからってつけ上がってる奴が多いんですよ」

「アース、それじゃあリリ殿下は分からない」

「え? レイ、じゃあ何て言うんだよ」

「そうだな……リリ殿下、初代皇帝の考えは知ってますか?」


 レイが読んでいた本を置いて俺に聞く。


「考え? 貴族はどうとか、てやつ?」

「そうです。貴族が偉いのではない。民を守るのが貴族だと。身分よりも個人の才能や実力だと」

「うん、知ってる」

「それをしっかり理解しているのは侯爵家までなんですよ。伯爵家でも理解している者も8割位でしょうか、男爵になると駄目です」

「どうして?」

「それはですね」

 

 レイが言うには、男爵家は何か功を上げたら爵位を貰えるらしい。伯爵家に任されて町や村などを治めているか、領地を持たない小貴族が多くて、所謂成り上がりだそうだ。

 帝国は貴族院と言う議会があって、男爵以下は議席を持たない。そして、3代の内にまた何か功を上げないと継承できないらしい。

 なのに、自分達は貴族だぞとふんぞり返っている奴らが多いそうだ。

 そして、男爵家には3年に1度、貴族院所属の監査部が監査に入る。収入はもちろん、すべて徹底的に調べられる。

 毎年1つや2つの男爵家が取り潰しになっている。


 男爵の上が、子爵だ。俺が3歳の時に王国と通じていたのも子爵だ。

 子爵は継承は出来るが、男爵と同じく領地を持たず伯爵の子飼いになっている子爵が多いそうだ。子爵家は5年に1度監査が入る。


 そして、1番数の多い伯爵。

 伯爵は、公爵や侯爵の領地の比較的大きな街を任されている者が多いらしい。

 それは、あくまでも公爵や侯爵の領地だが、任されているだけで勘違いするらしい。自分は貴族で領地を治めていると。

 10年に1度入る監査で頭を打つそうだ。

 もちろん、真面目に民の為にと働いている貴族の方が多くいる。しかし、どの世でも悪い奴等って目立つよな。



「へえ……レイよく勉強してるんだね」

「うちは侯爵家としては1番古いんです。それで殿下へのご挨拶も侯爵家の中では1番最初なんです。古い家ですから、長く貴族をやってる分だけ領地が広いんですよ。

 でも父が文官で事務次官として勤めているので領地を伯爵に任せてます。だから、時々父が見回って監視しています。それで知っているんですよ」

「ほお〜、アースの家は?」

「うちは一応武官になるのかな? 騎士団とかの現役は引退したけど、軍部にいます。でも、レイの家と同じ様に領地を伯爵に任せています。うちも父と1番上の兄とで見回ってますね。目を離すと何を仕出かすか分からないと言ってますよ」


 なんだよ。帝国も問題がいっぱいじゃないか。


 で、その伯爵以下の貴族が馬鹿を仕出かしやすいと言う事か。


「お二人共、よくお勉強されていますね」

「ラルク……」

「お二人の仰る通りです。

 貴族たる者、民の手本にならなければならない。

 貴族は民を守る義務がある。

 貴族は民の為にある。

 それを知らない下位貴族がいると言う事です」

「ラルク、それはどうにもならないの?」

「ですので、フレイ殿下、クーファル殿下を始め貴族院が下位貴族の教育をされています。それでも、勘違いをする者がいるのです。

 自分の物ではない権威を振りかざして、傲岸不遜に振る舞う者がいます。そんな貴族が、昔リリアス殿下を狙った奴等です」

「そっか……」

「リリ殿下、本当に命を狙われたのか?」

「アース、まあ……ね」

「そっか……」

「アース、怖くなった?」

「なんでだよ! 俺が早く強くなって守るぜ!」

「僕もですよ、リリ殿下」

『ハハハ、良い子達だ』


 ユキ、聞いていたのかよ。寝てると思ったわ。そうだな、良い子達だ。だから、危ない目には合わせたくない。


『リリ、安心しろ。我がいる。リュカもオクソールもいる。頼るが良い』


 そっか……ユキありがとう。リュカもニッコリ笑ってた。

 

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