23ー結果
「……ふわぁ……」
「殿下、おはよう御座います」
「ニリュ、おはよう」
良く寝たぜ。今日も寝起きスッキリだ。さて、どうなったかな?
「ニリュ、オクは?」
「控えておりますよ。ですが先にスタンバイしている者がおりますので」
「あぁ……わかった」
ベッドからおりて顔を洗って、ニルに着替えを手伝って貰い、やっとテーブルに着く。
「ニリュ、いいよ」
「はい、畏まりました。シェフお願いします」
「はい! おはようございます、殿下!」
今日も朝から本当に元気なシェフだ。
「シェフ、おはよう」
「今朝は、殿下がお好きなクロックムッシュをお作りしました。温かいうちにお食べ下さい。」
おー、クロックムッシュか。美味そうだ。
「美味しそう。オクは? 食べたの?」
「いえ、部屋の外で待っておられますよ」
「じゃあ、シェフ。今朝もオクの分もお願い」
「はい! 畏まりました!」
そう、言ってシェフは厨房へダッシュして行った。相変わらずはえーな。
俺は先にいただきますだ。ウマウマ。
「オク、入って」
「失礼致します」
「そこ、座って」
「いえ、私は……」
「座って」
「はい、失礼します」
「……で、オク」
「はい、全員捕縛しました。奴隷商に、捕らえられていた者達も全員無事です」
おぉー、良かった!
「よかった! リュカには?」
「はい、朝一で知らせました」
「よりょこんでた?」
「はい。勿論」
オクの報告によると……
まだ夜が明けきらない頃に、帝都から兵団が到着した。奴隷商と出入りしていた男爵の邸を、同時に兵達が静かに取り囲んだ。そして、一斉に兵達が踏み込んだ。
奴隷商や男爵もまだベッドの中で寝ていたそうだ。お陰で兵達は一気に邸の者達を捕らえた。奴隷商の地下牢に捕らえられていた者達も全員保護した。
そして同じ頃、支援者の振りをして狼獣人の村を売った者も捕らえた。奴隷商には数人のごろつきが居たそうだが、全員酒を呑んで寝ていたらしい。何とも呑気なものだ。
捕らえた者達は、一旦領主である伯爵家の牢に入れられ、兵達が監視している。明日にでも帝都に護送される。
保護された者達は全員この邸にいるらしい。同じ場所に保護するのを避けた為だそうだ。
「失礼致します。オクソール様、お待たせ致しました。どうぞ、お召し上がり下さい」
「シェフ、辱い。頂きます」
うん、今日は抵抗しないんだな。
「……美味い」
「有難うございます!」
「でしょー、おいしいね〜」
そうだろうよ。ハムとチーズとベシャメルソースのハーモニーは絶品だろうよ。
モグモグと食べる。ニルが横からほっぺを拭きたがるが、そんなの後だぜ。ほっぺが膨らむぜ。
「それで、殿下」
「うん……」
「兵団を率いてこられたのが、第1皇子殿下です」
第1皇子殿下、俺の1番上の兄で次期皇帝だ。
フレイ・ド・アーサヘイム 21歳。
金髪で少しワイルドなストレートの髪を後ろで一つに結んでいて、澄んだ青空の様なスカイブルーの瞳のイケメンだ。今は父の補佐をしている。
「にーさまが!?」
「はい、来られております」
「えっ!!」
「殿下、先に食べませんと。フレイ殿下は逃げませんよ」
「オク…… 気持ちだよ、気持ち」
「はあ…… 美味いです」
「…… 」
ニルよ。お前はオクソールの言葉をどう思うよ。
「オクソール様、殿下が仰っておられる事と少しズレていますね」
そうだよ、その通りだよ!
「ニリュ、りんごジュースちょうだい」
「はい、殿下。まだぶどうジュースも御座いますよ?」
「いいの。朝はやっぱり、りんごジュースがいい」
りんごジュースが置かれた。両手でコップを持ってコクコクコクと飲む。
「ねえ、オク」
「はい、何でしょう?」
「奴隷商に捕まっていた人達はどうなりゅの?」
「はい、殆どの者が攫われてきた様です」
「そうなの!? なんてひどい!」
「はい。ですので、皆街や村に送り届けます」
「誰が?」
「兵達がです」
「そう、よかった。ちゃんとみんな送り届けてあげてね」
「はい、勿論です」
「ちゃんとした服着てりゅのかなぁ……リュカはボリョボリョだったかりゃなぁ。みんなお腹すいてないかなぁ……」
「殿下、ご心配は無用です。邸の者がしっかり世話しております」
「そうなの? ありがとう」
俺は、両手でコップを持って、リンゴジュースを飲みほした。プハッ。
「殿下、1つ問題が」
「え? なに?」
「リュカです」
「そっか、まだかりゃだが治ってないもんね」
「いえ、そうではなく」
なんだよ? 含みを持たせるなー。
「リュカが殿下に仕えたいと言っております」
「……はぁっ!?」
待て待て待て! 何をどう考えたらそうなるんだ? 俺、リュカとは一度しか会ってないぞ。
「オク、どうしよ?」
「はあ、どうにも…… 」
ニル、まただよ。オクソールをどう思うよ?
「オクソール様、答えになっていませんね」
ニル、その通りだ!
「……ごちそうさま。シェフ、今朝もおいしかった! ありがとう」
「はい、殿下! 有難うございます!」
そうして片付けて、シェフは満足気に去って行った。