225ー呼ばれた縁
あーだこーだと迷った結果だな、結局オクソールが精霊の眼、リュカがマルチプルガードになった。
「よし、じゃあ授けるからね」
ルーがパタパタと飛んで、オクとリュカの額を撫でた。
二人の額が、フワッと光った。
「リリ、鑑定だ」
『鑑定』
「あ、ある。凄いね」
「オク、試してみな? ああ、二人共詠唱は声に出さなくていいよ」
「……これはまた……! リリアス殿下、凄いですね」
「え、オク。ボクを鑑定したの? 魔力量いくつか分かった?」
「いえ、分かりません」
なんだよ、精霊の眼でも分からないのかよ。
「リリ、分かっていたら、ボクが言ってるよ」
ああ、そうだった。精霊の眼の元祖だったよ。
「リュカ、範囲は任意なんだ。リュカの思ってる範囲に展開できる。自分だけに掛けてみて」
「はい、ルー様」
すると、フワンッとリュカが透明な何かに包まれた。
「うん。オクソール、斬りつけてみな?」
「はい。ルー様」
「え、え!? ちょ、普通に怖いですよ!」
「リュカ、大丈夫だ」
「いきます」
オクソールが思い切り斬りつけた。
――カキーーン!!
「おおー!!」
魔法も大丈夫なんだよな?
『ウインドエッジ』
――キュインッ!
「殿下、マジ怖いですって! 言って下さいよ!」
「うん、凄い!」
「だろ? 良いだろー!」
ルーがパタパタと飛んでいる。
「ルー様、有難うございます」
「有難うございます!」
「良いって事よ。お祝いだよ。これからもリリを守ってよ」
「「はいッ」」
「よし。じゃあな!」
ルーがまたポンッと消えた。
「殿下、これ自分の魔力量はどうなんですか? 減ってるんでしょうか?」
「オク、自分を見てみたら?」
「えッ?どうやってですか?」
「こうやって」
俺は自分の両手を見る。
「それで見れるのですか?」
「やってみて」
「はい……あ、減ってないですね。と、言うか……自分はこんな感じなんですね」
「うん。オクは凄いよ。飛び抜けている。何もかもね。体力や身体能力なんて、獣人でもそういないんじゃないかな?」
「そうですか……知りませんでした」
まあ、そうだよな。自分がどんな能力か目で見る事なんて、普通は出来ないからな。
でも……お祝いなんだよな?
まさか、必要になるから授けたんじゃないよな? ルーはそう言うとこあるから、気になるじゃん。
今日は1日が長かった。
朝から叙任式やって、昼から披露パーティー出て、ルーがやってきて、精霊魔法なんてものをオクソールとリュカに授けて。
「ふぅ……」
「リリ、どうした?」
「ユキ、なんか今日は慌ただしかったなぁ、て思って」
「リリ、起きてるか?」
ポンッとルーが現れた。
「ルー、どうしたの?」
「リリ、神に会ったのか」
「うん。魔力量の測定で大聖堂に行った時にね」
「そうか。で?」
「で? 何?」
「聞いたのか? リリがこっちに来た事」
「ああ、うん。少し……」
「そうか。この世界を嫌いにならないでほしいな」
「え? 嫌いじゃないよ。好きだよ」
「そうか。有難うな」
「ううん。あのさ、ボクを殺そうとした姉さまね、今謙虚にやってるって。良かった。気になってたんだ」
「姉の方は元々悪い子じゃなかったしね。リリを突き落とした妹も、改心してるよ。自分を責めてるね。毎日懺悔してるよ」
「そうなの? 責めないで、て言ってあげて?」
「いや、それは無理だし駄目だ。あの妹が自分で乗り越えなきゃならない事だよ」
「そうか……」
「でも、リリ。僕からも、礼を言うよ。有難う」
「なんでよ。あれはボクが嫌だっただけだよ。ねえ、ルー。ケイアは?」
「ああ、まだ専門の施設にいるよ。だいぶ落ち着いたけどね。あれは長く病んでたから、まだまだ時間が掛かるだろうね」
「そうか……欲に溺れなかったら、今頃は幸せだったかも知れないのに」
「初代の話は?」
「聞いた。ボクと同じ世界の同じ国の人だって」
「あんまり、驚いてないのかな?」
「元いた世界の国と似ている事があったんだ。だから、納得できた」
「そうか。この世界にとっては、救世主みたいなもんなんだ」
そりゃあ、だって初代皇帝の功績はとんでもないだろう。
衛生環境にしても、教育体制にしても、この世界では飛び抜けている。
それが、630年経った今でも続いている。
皇族や貴族の意識にしてもそうだ。
何より、魔物を一掃している。救世主以外の何者でもないな。
「そうなんだ。それでまたリリが呼ばれた。縁なんだろうな」
「そっか……」
「リリ、有難うな。小さい頃から辛い思いをさせたな」
「ルー、何言ってんの。確かに小さい頃から色々あったけど。でも、ボクはきっとその為に呼ばれたんでしょ?」
「リリ、背負わせてしまったな」
「ルー、大丈夫だよ。ボクだけじゃない。みんな一緒に背負ってくれてるから」
「そうか。だけどリリ。僕が前に言った事を忘れないで。
何歳でも、辛いものは辛い。嫌なものは嫌なんだ。今のリリの歳相応でいいんだからな」
「うん。ルー、分かったよ。有難う」
そして、俺はいつの間にか寝てしまっていた。
夢を見た。前世の妻と息子達の夢だ。
内容は覚えてないんだが、元気にやっている事だけは覚えていた。懐かしい笑顔だった。
俺も元気だよ。やっと10歳だけどな。
どうか、みんな幸せでいてくれよ。
一緒に歳をとっていきたかったよ。