224ールーからのお祝い
「殿下、思いっきり泣いてましたね」
「本当にな」
「レイ、アース。仕方ないだろ? オクとリュカの晴の舞台なんだから。嬉しいんだよ」
そうさ、二人共立派だった。
俺の部屋に戻って着替えていると、正装したアースとレイがやって来たんだ。
「二人共、叙任式出てたの?」
「いえ、僕達は式には出られません。披露パーティーに父と一緒に出ました」
あー、なるほど。だから、俺が泣いたの知ってんのね。
「しかし、リリ殿下の正装初めて見ました。あれ、皆さん正装なんですね」
「そうだよ。騎士の叙任式はいつも全員出席で正装なんだ。だから、将来アースが叙任される時も正装だよ」
「おッ!? 俺!? あー! マジ!?」
「オクソール様もリュカさんも、カッコ良かったですね」
うんうん、レイ、そうだよな!
「失礼致します」
「あ! オクソール様! リュカさん! おめでとうございます!」
リュカとオクソールが着替えて部屋に入ってきた。
「オク、騎士の中で1番なんだね」
「そうだ! 凄いです!!」
アースは、相変わらずオクソールを崇拝している。
俺はさぁ、ちょっと思っちゃったよ。
シェフも騎士だったら叙任出来たのになぁ、てさ。
だってさ、シェフあんなに強いんだぜ? もったいないよ。
「殿下、シェフですか?」
「うん、オクそうなんだ」
「あー! 強いですもんねー!」
「えッ……!?」
アースが目をまん丸にして驚いている。
「アース、知らなかったのかよ。有名だよ? 殿下のシェフは戦うシェフだって。騎士団も敵わない、てね」
「そうなんですか!?」
「そうですよ。私はまだシェフに勝てません」
「えッ!? リュカさんが!? マジッスか!?」
そっか。シェフ有名なんだ。
だって本当にシェフ強いからなぁ。自分でブーストとプロテクトを覚えてから、また一層強くなった。
あんなに強いのに、わざわざ第5皇子のボクのシェフに立候補するなんてさ。もったいないわ。
相変わらず、毎日ワゴンを押して爆走してるけどな!
「殿下、そんな事ありません。シェフは誇りを持って、殿下のシェフをやってますよ」
「オク。そう……」
「お二人も、一緒に辺境伯領に行かれたら、見る機会もあると思いますよ」
「ああ、オク。そうだね」
「失礼致します。アース殿と、レイ殿はこちらに?」
「セティ、いるよ」
「辺境伯領に同行される件で、お父上と一緒にお話があります。別室に来て頂けますか?」
「はい」
「分かりました。では、殿下。また」
「うん。アース、レイ。またね」
俺はヒラヒラと手を振る。
あの二人、辺境伯領について来て大丈夫かよ。親と離れた事、あるよな?
ちょっと……いや、かなり不安だ。
アラウィンに迷惑掛けなきゃいいけど。
「まあ、殿下。今回は何か命がある訳じゃありませんから」
「オク、そうだけどさ。なんか気が休まらないや」
「殿下、同い年ですよ?」
「リュカ、どう言う意味かな? 3等騎士のリュカ・アネイラ君」
「う……殿下、駄目です。まだ慣れませんから」
あら、真っ赤になったよ。
リュカ良かったなー。本当に良かった。
「リュカ、正装似合ってたよ。カッコ良かった」
「だから殿下。止めて下さい!」
「ご両親、お呼びすれば良かったのに」
「いや、マジ止めて下さい!」
「あれ、オクもだね。ご両親は?」
「うちは伯爵家ですから、来てましたよ。呼ばれましたからね」
「そうなんだ」
「ご挨拶したかった!」
「殿下、それは止めて下さい」
「えー、オクまで何で?」
「いやぁ〜、良いもの見たよ」
ポンッとルーが現れた。
久しぶりじゃねーか。もう本当にいないよな。いる方が珍しいもんな。
「いや、リリ。僕はいつもリリを見守っているよ?」
はいはい。そーッスか。
「本当だよ?」
うん。最近はココって時に出てきてくれるから、助かってるさ。有難う。
「うわ、なんかリリが優しい!」
「ルー。で、今日は何?」
「ああ、オクソールとリュカに祝いをね」
「え? ルー様?」
「二人共、騎士の叙任おめでとう。
オクソール。最高位じゃないか」
「有難うございます」
「ルー様、有難うございます!」
「これからも、リリを頼むよ」
「もちろんです」
「はい!」
「それでだな、僕から二人に力を授けよう」
「ルー、そんな事できんの?」
「ああ、精霊魔法て言うんだ」
「「「精霊魔法?」」」
聞いた事ないな。
精霊魔法とは……
今、人間が使ってる魔法は、自分の魔力と空気中の魔素を消費して発現させる魔法だ。
でも、これからルーが二人に授ける精霊魔法は、本人とルーの力も借りて発現させる魔法。それが精霊魔法と言うそうだ。
「何それ! ボクも欲しい!」
「リリ、お前の魔力量で必要ないだろう?」
そうなのか?
「そうなんだよ。でだ、マルチプルガードと、精霊の眼。どっちが良い?」
「ルー様、どんなものなのかが、分かりません」
「リュカ、そうか。マルチプルガードは、シールドの上位みたいなもんだ。あらゆる属性の魔法攻撃、特殊攻撃、物理攻撃を遮断するバリアを張る。
精霊の目は、リリが持ってる鑑定の上位だ。あらゆる物の全ての情報を得る事ができる。
リリの鑑定も、頑張ったら此処までレベルアップするんだがな」
おや、そーなのかよ。じゃあ、頑張るよ。
「リリ、本当にな、頑張って?」
「うん」
「なんか……凄いですね」
「ルー様どちらかですか?」
「オク、そうだよ。どちらか選んで」
マジか!? スゲー! 俺も欲しい!
「だから、リリ。頑張ったら、レベルアップすると言っただろう?」
「マルチプルガード? それは? シールドを頑張るの?」
「そうだ」
「そっか。じゃあ頑張る」
1日シールドを、展開したまま過ごすとかさ。いや、鑑定しながらシールドを展開する。うん、これだな。
「リリ、もう好きにしな。で、どうする?」
「オクソール様、俺はオクソール様が選ばなかった方にしますよ」
「リュカ。いいのか?」
「はい。二人同じのを持つより、いいでしょう?」
「いや、リュカが選んでくれ」
「どうしてですか?」
「畏れ多くて選べん」
ブハッ、オクソールらしいや。