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221ーお休みがほしい

 翌日、朝からいつものオクソールの鍛練を受ける。そして俺は毎回半分死ぬ。

 それから昼食べて、ちょっとウトウトして母に会えるかリュカに聞きに行ってもらってる。

 その間、俺はレピオスと医局にいる。



「そうですか。殿下は、転移門に魔力を補充に行かれてますが、ゆっくりは出来ておりませんからね」

「そうなの、レピオス。アスラ殿の子供にも会いたいしさぁ、フィオン姉さまの子供なんてもう2歳だよ。絶対に可愛いよね」

「殿下、鉱山の調査はもう全て終わられたのですか?」

「まだ。一番北の鉱山がまだ少し残ってる」

「ああ、北ですか。行きにくいですね」

「そうなの」

 

 俺が、7歳の時に王国の人間に、鉱山を爆破された。

 その鉱山に、偶然ミスリル鉱脈が見つかってから、全ての鉱山の調査をしている。


 鉱脈の見極めだけでなく、鉱夫達に口と鼻を覆う事や、粉塵爆発の事など色々教えて、環境も調査している。


 この世界、魔法があるからかなぁ。現象を調査して分析する事が遅れている。

 鉱山を調査していると、危ないだろう、て事がよくある。


 まず、灯だ。普通に火を使っている。誘爆するかも知れないのにだ。それ以前に一酸化炭素中毒だって怖い。

 だから、全ての灯を魔石で灯す物に変更した。所謂、魔法のライトだ。光源に火を使わない物に変更したんだ。見回りに使う物も、全てだ。

 もちろん、鉱山内で火を使うのは厳禁だ。


 あと、水もだ。粉塵で埃っぽいからと、平気で水をまくのを止めさせた。

 1日1回、風魔法が使える人が粉塵を風で外に出すと言う作業を追加した。

 これで、危険性はかなり低くなったはずだ。


 さて、何故1番北の鉱山に行きにくいか。

 調査に行けてない鉱山が、あと三つ。

 二つの鉱山は、近々調査に行く予定だ。残る一つ。1番北側にある鉱山。これが、行きにくい。

 何故かと言うと、北の山脈の始まりにある。つまり、山脈に少し入った所にあるからだ。

 その北側に連なる山脈とは比べ物にならない標高だが、それでも山には変わりない。

 その上、崖に囲まれたカール(圏谷)になっている。


 圏谷けんこく、カールとは……

 山地において、氷河の源流部で形成された谷のことで、氷河の侵食作用によって形成された地形の1つである。

 by.wiki先生。


 山地の斜面をスプーンでえぐったような地形だ。

 その底に、山脈側に向かって坑道の入口がある鉱山だ。

 冬は、もちろん。帝都では秋でも、あちらではもう冬。採掘できる期間も短いので、そう採掘量も多くはない。が、帝国の人間が鉱夫として仕事をしていて、帝国が管理しているのだから、行かないと言う選択肢はない。



「でもね、行きたい」

「殿下、あまり危険な事は……」

「レピオス、鉱夫は危険でもいいの?」

「いえ。殿下……」

「ボクが危険だからと行かないで、もし事故が起きたら、ボクは後悔する。自分を責める。それは、絶対に嫌だ」

「殿下……しかし、これから先もずっと殿下が確認して回る訳にも行きません。何か基準を作って、専門に任せられる者をおくべきです」

「そうだね。そうなんだけど……気になるんだ」

「今回の調査は、ミスリル鉱脈の確認も兼ねておりますから、殿下の鑑定が必要でしょう。

 しかし、鉱脈の確認が終われば殿下でなくても可能でしょう?

 国の要所を、全て殿下に負わせる訳にはいきません。クーファル殿下なら、お考えになられていると思いますが」


 そうなんだ。レピオスが言う事は尤もなんだけどな。


「うん。兄さまに相談してみるよ」

「はい。それが宜しいかと」


「殿下、お待たせしました。エイル様がこれから来られる様にと」

「リュカ、有難う。じゃあ、レピオス。行くね。有難う」

「はい、殿下」


 レピオスにはいつも世話になるな。俺が迷っている事でも、レピオスはちゃんと筋道を立てて話してくれる。

 お陰で俺は冷静に判断できるんだ。俺の1番の相談相手かも知れない。師匠だしな。

 レピオスの基本は、絶対に俺に無理をさせない。俺一人に抱え込ませない。

 それが、俺には何よりも有り難い。


 俺は、リュカと母の部屋へ向かう。


「殿下、辺境伯領ですか?」

「うん。姉さまの子供に会いたい」

「そうですね。殿下はまだ10歳なのに、働き過ぎですからね。ゆっくりされても良いと思いますけど」


 え? 俺、働き過ぎか? 自分で意識がなかったな。日本人の働き過ぎ体質が出てしまってるか?

 いやいや、小児科医の頃はもっと働いてたよな?

 いやいやいや、俺は馬鹿か。今俺は10歳の子供だ。


「リュカ、そう?」

「はい。そうです。俺が10歳の頃なんて、寝て食って遊んで食って寝てみたいな」 

「アハハハ! 何だよそれ!」

「いや、殿下。子供てそう言うもんでしょう」

「あー、そう?」

「そうですよ」


 そうか。んー、10歳の子供だもんなぁ。てか、リュカの事も少し気になる事があるんだよな。

 そう思いながら歩いているうちに、母の部屋についた。



「母さま、リリです」

「どうぞ、入りなさい」


 母の声が聞こえて、リュカがドアを開けてくれる。

 リュカは部屋の中で待機だ。


「リリ、どうかしたかしら?」

「母さま、ボクお休みが欲しいです」

「え? リリ、母様は意味が分からないわ?」


 母に、今俺が抱えている仕事を話した。


「まあ、母様は知らなかったわ。子供のリリが、どうしてそんな事をしているのかしら?」


 母のこめかみが、ピクピクしている。

 ヤベ。顔は笑ってるけど、怒ってるよな。話す相手を間違えたか?


「母さま、ボクしか出来ない事もあるので、仕方ないのです。

 でも、ボク少しお休みが欲しいです。フィオン姉さまの子供に会いたいです」

「リリ、そうね……少し待ってくれるかしら?」

「母さま?」

「実はね、リュカの叙任式を考えているのよ。

 それと、リリも10歳になったから側近候補との顔合わせもしなきゃいけないの」


 リュカ、叙任式だってよ!!



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「リュカの叙任式」と「側近候補との顔合わせ」というイベントの順序および扱いの詳細に注目することは、リリによる体制構築の論理や特性を分析的に理解する上で、極めて興味深く、重要な知見が得られる可能性が期待…
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