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220ー魔力操作

 俺はレイの手をとった。

 初めてだからな、慎重に、ゆっくりとだ。少しずつ、少しずつ魔力を流していく。レイは目を閉じて集中している。


「殿下……! 凄い!」


 お、レイはもう分かったか。なかなか筋が良い。


「レイ、分かる? 身体の中を流れてるでしょ?」


 レイが、ウンウンと首を縦に振る。

 リュカみたいに、流れが滞っている事もないし良い感じだ。

 俺はレイの中の一点で、少し流れを止めた。


「ここ」

「はい、殿下」

「ここを意識するんだ。いい? 手を離すよ」


 俺はレイの手をそっと離した。


「そこから、魔力を全身に流したり指先に集めたりするんだ。魔法を使う時も、そこにある魔力を意識してイメージする」


「はい、殿下」

「魔力を全身に流したり自分の思うところに集めたりして練習してね。それが、魔力操作だよ。魔力操作が出来ないと、付与は無理だ」

「分かりました!」


 うん、レイは優秀だ。


「殿下、リリ殿下。俺も!」


 アースが両手を出してくる。あー、アースはいいよ。


「アース、お前はさぁ。騎士団の鍛練をあれだけ見学してるのに、何で魔力操作を知らない訳? 見学できる事自体が、特別なんだよ? アースは、魔法がどうこうよりもっとする事があるじゃん」

「え、なんかちょっと責められてる気がする」


 いや、責めてはないさ。

 こいつに今スキルを教えるのは、まだ早い気がする。


 アースは剣術スキルを持っていた。体術もだ。騎士団を目指す者にとっては、とても有効なスキルだ。

 それを教えてしまうと、調子に乗らないか?


『リリ、我もそう思う』


 え? ユキなのか?


『ああ。念話だ。まだアースに教えるのは時期尚早だ』


 だよな〜。ま、魔力の流れだけ教えてやるか。


 俺は、アースの手をとった。

 レイと同じ様に、少しずつ魔力を流す。アースの身体全身に流す。


「おおー! リリ殿下、スゲーな!」

「アース、集中しろよ」

「お、おお」

「ここだ。分かる?」

「うん」

「ここから魔力を全身に流したりする訓練を騎士団はやってるんだ。騎士団は実戦を想定して訓練してる。

 アースはまず、ここに魔力があると意識する。そして、全身に流す練習をすると良いよ」


 そう言って俺はアースの手を離した。


「あー、手を離したら分かんなくなる!」


 なんでだよ!!


「アース、意識しろ。集中して意識するんだ」


 お、レイは分かってるねー。

 じゃ、俺はりんごジュース飲むぜ。


「ニル、りんごジュースちょうだい」

「はい、殿下」


 ニルがりんごジュースを出してくれる。

 ユキさんもりんごジュースを貰おうと寄ってきた。


「ねえ、ニル。アズから連絡あった?」

「定期的にありますよ」


 アズとは、ニルのねーちゃんだ。

 フィオンの侍女をしている。婚姻で、フィオンは辺境伯領に行った。アズも付いていったんだ。


「ボクさ、辺境伯領にゆっくり行きたいんだ」

「はい」

「姉さまの子供に会いたいんだよね」


 フィオンは嫁入りして直ぐに懐妊した。

 フィオンそっくりの、男の子だ。赤ちゃんの時にほんの少し会ったきりだ。

 今は2歳。絶対に可愛いだろ? 可愛いに決まってる。

 アスラールの子供にも会いたいしさぁ。だからさ、会いに行きたいんだよな。


「リリ殿下て、子供好きだよな?」


 アースが言う。そうか? 普通だろ?


「きっとあれだな。ここではリリ殿下が一番小さいから、自分より小さい子が珍しいんだな。うん」


 アース、適当な事を言ってんじゃないよ。お前、ちょっと残念だぜ?


「それはどうか知らないけど。リリ殿下は子供好きですよね?」


 え? レイまでそう思う?


「え? 何で? 普通じゃない? だって小さい子って可愛いじゃん」

「リリ殿下、可愛いけどさ、ウザイ時あるぜ?」

「アース、何で?」

「うちの一番上の兄貴の子供がさ、女の子なんだよ。もう既に令嬢なんだよ。超我儘でさ。かなりウザイ」

「アース、その子何歳?」

「何歳だろ、2歳かな?」

「じゃあ、姉さまの子供と同じだ」

「女の子はさぁ、マセてるぜ。うちは男ばっかだから、甘やかされてるのもあるんだけどな」


 アース、お前いくつだよ。お前もまだ子供なのに、マセてるもないだろう。

 でもなー、会いたいなぁ。

 ニルズとテティにも会いたいしなぁ。

 あの、大らかな領地でゆっくりしたいぜ!


「今は取り立てて急ぎの件もありませんし、陛下かエイル様にご相談されてみては如何ですか?」

「ニル、そう思う?」

「はい、構わないと思いますよ」


 そうか! じゃあまずは母に聞いてみるかなー。


「殿下、辺境伯領ですか?」

「うん。レイ、そうだよ」

「僕も一度は行ってみたいです」

「俺も俺もー!」


 アース、思ってないだろ? 今とりあえずノリで言ったろ?


「とっても良い所だよ。魔物はいるけどね」

「でも殿下。街には入ってこないと」

「うん。防御壁と魔物避けが凄いしっかりしてるからね」

「魔物かー! 狩ってみたいなー!」


 いや、アース。全然無理だよ? 君、何言ってんの?


「アース、もっと鍛練しなよ? マジで、まだまだだよ?」

「殿下、分かってますよ。俺はまだ弱いと分かってます!」

「そう、なら良いや」

「殿下、一度手合わせしませんか?」


 嫌だよ。何でアースとしなきゃいけないんだよ。俺、剣術は好きでやってるんじゃないぞ?


「嫌だよ」

「えぇっ!?」


 いや、何で驚いてんだ? 俺がそこでノリノリになる訳ないだろう? おう! やろーぜッ! なんて絶対に言わないだろ。


「アース、お前は本当にもっと落ち着かないと駄目だよ。ちゃんと見て考えな?」

「レイ、なんだよ。俺が全然見えてなくて、考えてないみたいじゃないか」

「「そうじゃん」」

「え、二人して酷い」


 あれか、アースはリュカに似たとこがあるんだ。憎めない、可愛げがある。

 そう思って、部屋の隅に控えているリュカを見た。

 リュカはコテンと首を傾げた。

 ハハハ、分かってないな。


 そう言えば、リュカの叙任式はどうなった? もう良いんじゃないか? と、俺は思う。

 それも、母に聞いてみよ。


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