22ー返事
「お待たせー!」
ガッツリ昼寝もして、夕食が終わった頃にルーが戻ってきた。
「……ケプッ……」
腹一杯でゲップが出てしまったぜ。しかし3歳児はゲップも可愛いねー。
「リリ、お腹いっぱい食べたんだね」
「あい、るーごめんなさい」
悪い悪い。ルーは俺の肩に止まった。
「リリアス殿下、お飲み物はどうされますか?」
ニルが聞いてくる。あの葡萄ジュース美味いけどさぁ。
「殿下、大丈夫ですよ。殿下が口にされる物は全てチェックされてますから」
そうなの? 流石だね。
「じゃあ、ぶどうジュース」
「はい、殿下。オクソール様も如何ですか? 例の葡萄ジュースです」
ニル、その言い方はどうだろう……?
「るーは何も飲まないの?」
「飲む必要はないよ。でも僕も少し貰おうかな」
そう言ってルーがテーブルの上に移る。
「では、私も頂きます」
「はい、どうぞ」
オクソールもテーブルについた。
「ングング。おいしいね〜」
「美味いですね。色も紫ではないのですね」
「うん、美味しい」
るー、そうやって飲むんだ……突いてるみたいだね。
「この葡萄ジュースに、睡眠薬を入れたのですね」
「オク、商人は仲間なのかな?」
「殿下、多分ですが違うでしょう」
「オク、どうして?」
「シェフが購入した商人と、リュカの村に来た商人は別人です。リュカの話からもそう断定できます。シェフが商人に聞いた話だと、この葡萄ジュースを扱っているのはその商人だけだそうです。単純に商人は、奴隷商か貴族に売っただけでしょう。葡萄ジュースは味が濃いです。薬をカモフラージュするのには、持って来いです。まだ街におりましたので、念のため邸まで連れて来て警備兵に保護させております」
「なりゅほど…… て、るー? 呑気にぶどうジュース飲んでないで、とーさまはなんて?」
こいつ、マジ適当だな。
「いや、リリ。ジュースを飲むか聞いたのはリリだよ」
そりゃそうだけどさ。で?
「皇帝から文を預かってきた。オク」
ん? 今ルーは文を何処から出した?
「はい。有難うございます」
「で、リリ。皇帝が、呉々も危ない事はしない様に邸で大人しくしていなさい。だそうだよ」
「……あい」
オクソールは文を見ながら……
「殿下、陛下が既に兵を手配して下さったそうです。明日、夜明け前には到着するので、そのまま奴隷商と獣人を購入していた貴族の邸を取り囲み踏み込むそうです。私は念の為、殿下のお側で待機です」
皇帝、やるじゃねーか。対応が早いな。そうだよ、こう言うヤツは迅速に一網打尽にだ。でないと、トカゲの尻尾切りになってしまう。
「ねえ、オク」
「殿下、何でしょう?」
「その貴族てだりぇ? どんな人?」
「ああ、はい。あの街のある地域を領地に持つ伯爵へと、取り入ろうとしている男爵です。私が調べたところ、領主の伯爵は無関係でした。堅実な領地経営をされておられます。伯爵の息子の一人が奴隷商のある街におり、街の管理を任されております。獣人を購入しようとしていた男爵の令嬢が、その息子に取り入ろうとして色仕掛けで近づいた様です。しかし既に息子は妻帯者で相手にもされなかったそうです。それで伯爵に、賄賂として獣人を贈るつもりだったのではないかと思われます。伯爵は、狩猟が趣味で獣人の使用人を何名か雇っておられるので勘違いでもしたのでしょう。男爵は領地を持っていない様で、伯爵に取り入って領地を任せてもらいたかったのでしょう。馬鹿ですね」
そこまで調べてるのか。この短期間でよく調べたな。
「オク、じゃあその伯爵は今回の事を知ってりゅの?」
「いえ、私が調べの一環で聞き取り致しました」
「そこから漏りぇない?」
「大丈夫です。既に皇家が動いているから、下手に関与すれば共犯者と見なすと脅して……いえ、説得してあります」
あー、脅したんだ。
「リュカには話すの?」
「いえ、全て終わってからになさる方が宜しいかと」
そうか。自分も行くと言い出しかねないしな。しかし、それよりもだ…… マジ、どうしよう……
「オク……大変な事に気付いてしまった。どうしよう」
「何ですか?」
「ボクそんなに朝はやくに起きりゃりぇない…… 」
「ククッ!」
オクソール、また笑った。
「行くおつもりだったのですか? 殿下はお休みなさっていて下さい。起きられましたらご報告しますので」
「そう? おねがいね、オク…… 」
「あぁ、殿下。もうおネムですね」
仕方ないんだよ。3歳児は直ぐに眠くなるんだ。
「ニリュ…… 」
ニルに両手を出して、抱き上げてもらう。3歳児の特権だ。
「はい、殿下。ベッドに行きましょう」
「うん…… オク、起きたりゃ教えてね。おねがい」
「はい、殿下。お休みなさいませ」
「おやすみー」
ルーがバサバサと、手? 羽根? を振っているのが見えた。
俺はニルにベッドまで連れて行ってもらい、即爆睡した。