218ー10歳
いつも読んで頂き有難うございます!
このお話から4章突入です。
楽しんで頂けたら幸いです!
「では、順に魔力量と属性を拝見致します。名前を呼ばれた方は、中にお入り下さい」
俺たちは10歳になった。
魔力量と属性を見てもらえるんだ。
俺も、父と母と一緒に大聖堂に来ている。もちろん、護衛のオクソールとリュカも一緒だ。父と母の護衛に近衛師団も数名付いている。
城のすぐ近くにある、帝国の大聖堂。当然、光の神を祀っている。
ここで、大司教に魔力量を見てもらう。
毎年春に行われる。学園の初等教育が始まる前に、皆自分の魔力量と属性を知っておく訳だ。
戴冠式にも使われる、帝国唯一の大聖堂だ。
フィオンの婚姻式もここだった。
白い大理石の様な、鉱石で作られていて、建物中央奥に主祭壇がありその前に数百もの信徒席が並んでいる。
南西隅に鐘楼が配置されていて、フィオンの婚姻式の時はこの鐘が鳴り響いた。
窓を飾るステンドグラスは、帝国建国当時の最先端の技術で作られ、630年も前に作られた物とは思えない精巧な作りだ。
主祭壇は天井がドーム型になっていて、天井のステンドグラスから入る陽光が、光の神の像を照らしている。
光の神。まあ、像だが。
前世でよくある、なんとかの神の彫刻みたいな感じ。
ラノベや漫画で有りがちな、教会が権力を握ろうとしているなんて事はなく。平和な大聖堂だ。
それも、光属性を皇族から出しているかららしい。
今は特に、俺が光の精霊ルーの加護を受けている。そして、光の神の信徒である神獣ユキに守護されている。
だから安泰らしい。と、言うか、手が出せないのだろう。
で、今日は俺も父と母、オクソールとリュカと一緒に大聖堂に来ている訳だ。
今更感もあるけどな。ま、儀式みたいなもんだ。
「では、リリアス殿下。中へどうぞ」
「はい」
「リリ、父さま達は入れないからね。ここで、待っているよ」
「はい。父さま」
呼ばれて、主祭壇の奥両脇にある小部屋の一つに案内される。
部屋の中には、奥に光の神を祀る小さな祭壇が設けられていて、その前に大司教様が居られた。
「これはリリアス殿下。無事に10歳になられましたね。おめでとうございます」
「有難うございます」
「リリアス殿下を拝見できるのを、楽しみにしておりました」
「それは、光栄です」
「では、殿下。そちらにお座り下さい」
「はい。宜しくお願いします」
俺が、用意されていた椅子に座ると、大司教は俺に向けて手をかざした。
その大司教を俺は鑑定してみた。だってな、どうやって魔力量や属性を見るのか知りたかったんだよ。
結果だな……なんだこれ。鑑定の下位じゃねーか?
それじゃあ、俺の魔力量は測定できねーよ。
だって、俺が持っている上位の鑑定でさえ分からないんだからな。
何か、特別なものでもあるのかと期待したのに。肩透かしだ。
「これは…… 底が見えません」
「はい」
「殿下は全属性ですか。ご自分の魔力量を把握されておりますか?」
「いえ、ボクも底が見えません」
「殿下、もしやスキルをお持ちで?」
「はい」
「では、殿下は私よりも理解されているのですね」
「そうだと思います」
「そうでしたか。わざわざお越し頂いたのに、はっきりと確認できずに申し訳ありません」
「いえ、お気になさらないで下さい」
「お心遣い有難うございます。では、殿下。こちらの祭壇に祈りを捧げて下さい。 無事に10歳まで成長したと、光の神へご報告と感謝を」
「はい」
俺は席を立ち、祭壇の前で跪いた。
目の前が真っ白になり、一瞬で周りの様子が変わった。真っ白の空間だった。
「え……? 何これ?」
「リリアス、よく来たね」
目の前に、ピッカピカの男性が立っていた。いや、少し足が浮いている。
真っ白な長い布を身体に巻きつけた様な衣装で、金糸を織り込んだ豪華なマントを羽織っている。
髪は床に着くかと言う程長い金糸の様なストレートの長い髪。
瞳は金色で、肌は透ける様に白い。
所謂、後光が差しているのか? 眩しいぜ。どこかの神話に出てきそうな感じだ。
「え……? あの……ボク、死んだ?」
「いや、死んでいない。リリアスの意識をこちらに引っ張って来た。無事に10歳になったか。良かった」
いや、意味が分からん。
どうなってんだ? て言うか、さっき見た像とよく似ている。
「私は光の神だ。君をこの世界に連れて来たのは、私だ」
「え!?」
「君を連れてこなかったら、リリアスは死んでいた」
「湖の?」
「ああ。姉二人を助けてくれた。礼を言う」
「いえ、ボクは助ける事が出来たのですか?」
「ああ。今は二人共謙虚に仕えている」
「そうなんだ。良かった」
「あの事故は偶然だった。湖が繋がって、上手く君の魂をこの世界に連れてこれた。時間を遡ってリリアスとして産まれたんだ。君は湖に落ちた事で思い出してしまったが、思い出すのが早過ぎた。
君を連れてきた事で、この世界は救われた。しかし、君には辛い思いをさせた」
「いえ…… 」
「できれば、この世界も好きになってくれると、嬉しい」
「好きですよ。前の世界に比べると理不尽な事も多いけど。良い家族や、周りの人に恵まれています」
「そうか。ルーやユキは役に立っているか?」
「ルーや、ユキと出会ったのは、神様が遣わせてくれたんですか?」
「いや、偶然……違うな、必然だ」
「そうですか」
「想像以上に君の光属性は強い。引き寄せたのかも知れない。私達神は、そこまでは関与しない」
「そうなんだ」
「ああ。私は君を連れてきただけだ。リリアスからは、この国の初代皇帝とよく似たものを感じる」
「初代と?」
「ああ。一つだけ教えてあげよう。初代皇帝も、リリアスと同じ世界から来た人間だった」
「えッ!? 転生者て事ですか!?」
「転生とは少し違う。しかし、同じ世界の同じ国の人間だ」
そう言われれば、納得できる事が沢山ある。なんだ、そうなのか。
いや、スゲー事実を聞いたんだが、何故かそんなに驚いてないんだよ、俺。
「ああ、そろそろ時間切れだ。リリアスと会えて良かった。元気で成長してほしい」
「はい。もうお会い出来ないのですか?」
「ああ、次はいつか分からない。国に加護を授けてはいるが、あまり関与はしない。だが、ルーがいるだろう?」
「はい。分かりました」
「この世界に連れて来たのは私だが、その後の選択はリリアス自身がした事だ。リリアス、君はこの世界の沢山の人間を救ってくれた。有難う。これからも前を、未来を見て成長してほしい」
また、目の前が真っ白になり、次の瞬間俺は祭壇の前にいた。
「殿下、さあお立ち下さい」
「……はい」
「次は20歳です。また元気なお姿をお見せ下さい。光の神の御加護を」
「有難うございました」
俺は部屋を出た。
案内してくれた人が待っていてくれて、父と母の元に戻る。
「リリ、どうだった?」
「あ…… いえ」
「リリ?」
「父さま、はっきりとは分かりませんでした。底が見えないと」
「やはりそうか」
「はい」
「陛下、リリ。では、帰りましょう」
「はい、母さま」
何だか……まだ信じられない。
俺、光の神に会っちゃったよ。
リリの魂はいつからなのか。ハッキリとしていなかったので、加筆しました。
リリの中身は生まれた時からリリです。55歳のおじさんです。
ただ、前世の記憶を思い出したのが3歳の湖での事件です。
それからハッキリと前世からの意識があります。
と、言う設定です。