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217ーフレイの婚約 4

「リリ、残念ながらそうなんだ。いくら皇族の俺たちがそうでないと示しても、権力に溺れる奴はいる。

 貴族は民を守るのが義務だと忘れる奴がいる。だから、セティの調査部隊が暇にならない。

 しかし、両隣の国に比べれば些細な事なんだがな。でも、俺たち皇族はそれで良しとしては駄目だ。

 皇族がそれを許してしまうと、もっと増長する奴が出てくる。それでは国は衰退する。リリはよく分かっているだろうけどな」


 分かってるさ。実際にこの目でそんな国を見てきたからな。


「ここは薬草も沢山あるのですね。薬草の匂いが落ち着きます」

「お姉さん、本当に薬草が好きなんだね」

「ええ、リリアス殿下。いくら研究してもしきれないです」

「こちらには薬師もおりますから、研究設備は整っておりますよ。宜しければ後ほど見学なさいますか?」

「まあ! レピオス様、宜しいのですか? 是非!」


 あー、食いついてきたよ。本当に好きなんだなぁ。


「お姉さんはフレイ兄さまと同級だったの?」

「はい、リリアス殿下。あの頃、フレイ殿下は学園の皆が憧れておりました」

「兄さまが?」

「はい。学業はいつも1番ですし、剣術もお出来になります。それに、誰に対しても気さくに話して下さいます。女子なんて、皆殿下の事を好きだったのではないでしょうか?」


 あらら、まるでアイドルだね。フレイさんよ。イケメンだしね。


「お姉さんも?」

「はい?」

「お姉さんも兄さまに憧れてた? 好きだった?」

「え? あ、あの。それはもちろん」


 お、そうか。良い感じじゃんか。


「私は幼い頃から殿下に色々気に掛けて頂いて。私など、勿体ない事です」

「え? どうして? さっきお姉さんは身分より能力や人柄だと言ってたのに」

「リリアス殿下、そうですが。皇子殿下は別です」

「兄さま、別なんだって」

「リリ、あまり攻めるな。兄様はついて行けない」

「えー……」


 な、レピオス。フレイはヘタレだろ?

 レピオスを見ると、眉尻を下げている。微妙な顔してるよ。


「でも、お側にいたいと思わないですか?」


 おいおいリュカ。いきなり直球で何聞いてんだよ。ビックリしたわ。


「いえ、私は貴族でもなんでもありませんが、リリ殿下にお仕えしたくて願い出ました。お守りしたいと。

 あの時、話を聞いて下さって力になって下さったのがフレイ殿下です。そのフレイ殿下がそんな事、望んでおられるのかと思いました」


 リュカよ。天然も時には役に立つんだね。またビックリしたわ。その通りだ。

 皇子だから別だと線引きされると、寂しいよね。


「そうですね、リュカの言う通りです。お節介な年長者の一つの意見だと思って聞き流して下さい。

 ご自分が、後悔なさらない道を選ばれる事です。

 この歳になると後悔ばかり思い出されます。フレイ殿下も御令嬢もまだお若い。リュカの様に未来を選択できるのです。

 10年後、20年後を想像なさってみて下さい。そしてご自分が後悔されない道を選ばれる事です。

 その道に必要なものが、今の自分にはまだ備わっていないと思われる事があったとしてもです。

 例えばその備わっていないものが知識であれ、人徳であれ、自信であれ、なんであってもこれから先いくらでも努力できるのです。それこそ、身分などではありません」


 おー! さすがレピオスだぜ! 思わず拍手するとこだったよ。


 その後、俺とレピオスの案内で薬草の貯蔵庫や温室、調合室、研究室などを見学して、フレイ達は戻って行った。

 フレイよ。後は自力で頑張るんだぜ。


「レピオス、有難う」

「リリアス殿下、何です?」

「さすが、レピオスだと思った。ボクはレピオスに出会って師事して本当に良かった」

「おや、殿下。有難いお言葉です。しかし、私は殿下方より少し長く生きているだけですよ。

 殿下方が今の私の年齢になられた時は、私の言葉など当たり前の事だと思われますよ」

「そうだとしても。レピオス、今のボクは7歳だ」

「……そうでした。殿下はまだ7歳でしたね」


 フフフとレピオスは笑った。




 その後、フレイとシャルフローラ令嬢の婚約が決まった。

 それから令嬢は、毎日登城して朝から1日中第1皇子の妃として、未来の皇后としての教育を受けている。

 本当は子供の頃から少しずつゆっくりと教育されるものらしいが、フレイと令嬢の婚姻が1年半後と言う異例の日程となった為、毎日詰め込んでいる訳だ。

 しばらく、令嬢の好きな研究も後回しだろう。さぞかし残念に思っている事だろうと思っていたのだが。


「リリアス殿下、お気遣い有難うございます。でも、大丈夫です。今はフレイ殿下のお役に立ちたくて、こうして学ぶ事も楽しいのです」


 などと、当の本人は言っていた。


 なんだよ、結局両想いだったんじゃねーか。心配して損したよ。


 次はクーファルだな。しかし……

 クーファルは次男だから、婚姻したら城を出て行く事になる場合もあると言っていた。俺はそれがとても嫌だ。

 フレイの補佐をしているから、毎日城には来るだろうしいつでも会えるのだが。

 だが、嫌だ。クーファルが城からいなくなるなんて、考えただけでも泣きそうになる。

 ルーは俺が成長したらそんな気持ちも薄れていくと言っていたが、だけど嫌なのは今なんだよ。どうしようもない。



 1年半後、フレイと令嬢の婚姻式典が盛大に催されたが、その様子はまた機会があれば話すよ。機会があればね。


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