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216ーフレイの婚約 3

 まあ、悪い印象じゃあないと思うんだ。フレイは良い奴だしイケメンだしな。

 若干、ジャイ○ンなところはあるが。そこは脳筋て事で許そう。

 シャルて愛称で呼んでる位なんだから、いけると思うよ、俺は。



 そうこうしている間に、令嬢を招待した日になった。

 俺はいつも通り、午前中はオクソールにしごかれてフラフラに。午後からレピオスと医局にいた。

 シオンにも師事してからは、週の半分をレピオス、半分をシオンといる。



「ほう。フレイ殿下が」

「そうなんだよ、レピオス。兄さまが案外ヘタレでビックリしたよ」

「ハハハ、ヘタレですか」

「うん。他の事はあんなにイケイケなのにさぁ。今日だってボクに付き合え、て言うんだよ」


 と、レピオスと話しながら薬草をゴリゴリとやっている。


「しかし、その侯爵令嬢。聞き覚えがあるような気がします」


 レピオスが薬草をゴリゴリしながら、思い出そうとしている。


「え? そうなの?」

「はい。確か……昔ですが、フレイ殿下がまだ学園に入られる前だったと思います。1番最初に婚約者を決める時にもお名前を聞きました。

 あの時は、前の婚約者の令嬢の侯爵家がとても積極的で……確か今回の御令嬢の家に辞退する様もっていったとかなんとか」

「え……何それ」

「まあ、噂ですから。不確かな事ですし。まだフレイ殿下も御令嬢も幼かったので。しかし……そうだ。思い出しました」


 レピオスがパンッと手を叩く。が、また直ぐに薬草をゴリゴリ、ゴリゴリ……


「学園の高等部の時に少しだけですが、噂があったそうですよ。

 前の婚約者の侯爵令嬢と婚約はしたものの、やはりフレイ殿下も今回の御令嬢もお互い惹かれあっているのではないかと。

 それで前の婚約者の御令嬢が虐めているとかなんとか。とにかく、あまり良い噂ではなかったので皇后様が様子を見られていたのです。ですので、前の婚約者のご令嬢とはなかなか婚姻にならなかったのですね」

「マジ……!?」


 てか、レピオスなんでそんなに詳しいんだよ? 俺、ビックリだよ。


「殿下、こんな時間があるからですよ」

「こんな時間?」

「はい。今も薬草をすり潰しながら殿下とお話していますでしょう? これが殿下ではなく、手伝いの者や見習いの者だとそんな話題にもなる訳です」

「なるほど〜」


 所謂、井戸端会議だ。


 レピオスの情報によると、フレイが以前婚約していた令嬢の家は最初は問題なかったらしい。

 だが、娘がフレイの婚約者になってから少しずつ変わっていったそうだ。

 まあ、周りも未来の皇后様だと言う目で見るようになる。

 しかし、それに驕る様になり生活も派手になった。そして欲が大きくなり不正に手を染めて、とうとう帝都の民に邸の前にゴミを置かれセティの調査に引っかかってしまったと言う事らしい。


 俺が3歳の時の事件が公になってから、帝都の民達は意思表示をする様になった。

 貴族の邸の前にゴミを置くのはその一つだ。この邸の貴族は何か悪い事をしているぞと、教えてくれているのだ。


 そうして、帝都の民に告発されセティの調査対象となった侯爵家。

 調査の結果、不正が明らかになり、爵位と邸は取り上げられたが領地は残った。

 だが、そんな事になると帝都では生活できなくなる。もちろん、フレイとの婚約も白紙に戻された。

 残った領地も爵位がないので血縁者が引き継ぐ事になり、そっちに引っ込んだ。


「ほう。人の欲は怖いね〜」

「ハハハ、殿下。まるでおじさんの様な言い方ですね」


 まあ、中身はオッサンだからな。


「殿下、レピオス様、シェフから差し入れです。クッキーお持ちしました」

「リュカ、有難う。一緒に食べよう」

「はい!」


 リュカが持ってきたシェフが作ったクッキーを食べながら、俺はりんごジュースを飲む。いやぁ、平和だわ。まったりとノンビリとした時間は幸せだよ。


「リリ、いるか?」


 げッ! 平和な時間を壊すフレイの声だ。なんだよ、今日は令嬢が来てるんじゃないのか?


「フレイ兄さま、何ですか?」

「こんにちは、お邪魔します」


 おや、令嬢じゃないか。やっぱ間がもたないか?


「こんにちは、こんな所にどうしたのですか?」

「いや、シャルに城を案内していたんだ。リリがこっちにいるだろうと話したら、見学したいと言うから」

「兄さま、本当ですか?」


 俺はジトッとフレイを見る。


「リリ、兄様は嘘つかないぞ?」


 ええー、誘導したんじゃないのか?


「まあ、リリアス殿下よろしいじゃないですか。ちょうどお茶をしていた所です。フレイ殿下も御令嬢もご一緒に如何ですか?」


 まあ、レピオス。大人の対応だわ。


「ああ、良いのか? シャルどうだ? リリのシェフのクッキーは美味いぞ」

「まあ! そうなのですか? ご迷惑でなければ是非」


 リュカがフレイと令嬢の席を用意し、レピオスがお茶を入れてくれた。



「まあ! 本当にとても美味しい! こんな美味しいクッキー、初めてです」


 いや、それは大袈裟だわ。しかし、令嬢。お茶会の時より表情が明るいね。


「以前、リリアス殿下に頂いたりんごジュースもとても美味しかったです」

「でしょぉ? りんごジュースは美味しいんです!」

「殿下、りんごジュース大好きですもんね」

「うんリュカ。りんごジュースは大事。超大事」

「ああ、リュカだ。リリの従者兼護衛だ。皇宮医師のレピオスだ」


 フレイがリュカとレピオスを令嬢に紹介した。令嬢はずっとにこやかだ。


「仲がよろしいのですね」

「はい! 殿下が3歳の時におしかけました」

「まあ!」

「リュカその言い方は違うよ」


 ほら、令嬢がちょっとビックリしてるよ?


「でもリリアス殿下、本当ですから。私がリリアス殿下のお側に付きたくて、無理をお願いしたのです」

「ああ、そうだったな。懐かしいな」

「フレイ殿下、まだ4年前ですよ?」

「そうなんだがな。リリはまだ小さかったから」

「そうですね。小さくてお可愛らしくて、そう思うと大きくなられましたね」

「リュカ、ボクは日々成長してんの。まだ大きくなるからね」

「ウフフ」


 ほらみろ、笑われたじゃねーか。


「こうして皆様で和気あいあいとなさっているのは素晴らしいです。私達も見習わないと」

「お姉さん、まさか虐められてるの?」


 初めて会ったお茶会の時の事があるから、ついそう思ってしまう。


「ああ、いえ。そうではありません。帝国は初代皇帝陛下の頃から、身分よりも実力や人柄、人間性と言われてきた筈なのです。確かに身分の差はあるので、仕方のない事もありますが。貴族はやはり差別したがります。低位になる程、差別したがる貴族が増える様に思います」


 そうなのか……? 俺は全然知らんが。


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