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213/437

213ーゆっくりでいい

「では、陛下」

「アラ、アルコース。フィオンを頼んだ」


 フィオンが辺境伯領へ行く日が来た。

 俺たちは、城の地下の転移門にいる。


 フィオン、辺境伯アラウィン、夫人、長男のアスラール、次男のアルコースそして、側近と侍従侍女、護衛の者達。総勢25名。

 今日は、俺が転移門に魔力を流す。


「リリアス殿下、またお越し下さい。領地の皆がお待ちしています」

「アスラ殿、有難うございます。今度は母さまと一緒に行きます」

「ええ、その時は宜しくお願いしますね」

「あら、私もご一緒したいわ。リリアス、駄目かしら?」

「皇后様! 是非! ご一緒しましょう!」

「俺も行くぞ!」

「フレイ兄さま。兄さまもですか?」

「おい、リリ。母上と反応が違い過ぎるだろ」

「エヘヘ」

「リリ、有難う」

「フィオン姉さま」

「リリがいてくれて、私は幸せだったわ。貴方が生まれた時の事を、昨日の事の様に覚えているわ。楽しかったわ。有難う」

「姉さま……」


 俺はギュッとフィオンに抱きついた。


「リリ、私はずっとリリの姉さまよ。領地で一緒にお出かけしましょう」

「はい! 姉さま! お元気で!」


「さあ、キリがない。リリ」

「はい、父さま」


 先に護衛達と、侍従侍女を転移させた。

 次は辺境伯家族と、フィオンだ。


「姉さま、お幸せに!」

「リリ、有難う! 危険な事はしないで! 身体に気をつけるのよ!」


 俺は魔力を転移門に流した。

 転移門が白く光り、フィオンと辺境伯達が光に包まれる。

 そして、光が消えると皆の姿が消えていた。


「……ゔっ……グシュ、ゔッ」

「リリ、頑張ったわね」


 母が俺をフワッと抱きしめてくれる。


「か、母さま……ゔぇ〜! 姉さまがー……!」

「あらあら……リリアス。私の娘フィオンを、そんなに好きでいてくれて有難う」

「皇后様……ボクの方が……ボクの方が、姉さまから沢山好きをもらいました。沢山守って下さいました……ゔぅ」


 皇后まで、俺の背を撫でてくれる。

 申し訳ないぜ。


「リリ、おいで。」

「父さま……ゔっ、ヒック。ゔゔ……」

 俺は母の腕の中から、父の方へ歩く。トボトボと、ゆっくりと。


「さあ、リリ。涙を拭きなさい。いつまでも、泣いていてはいけない」

「はい、父さま」


 父に抱き上げられた。


「さあ、皆。戻ろう」





「あー、リリ殿下。また魔石かよ」

「アース、仕方ないだろう? 150作らなきゃいけないんだ」


 150と言っても、魔石150個じゃないからな。150セットだからな。


 俺の部屋にアースとレイが来ている。

 フィオンの婚姻から、1週間経った。

 まあ、俺は相変わらずだよ。

 まだちょっと寂しいけどな。

 魔石に付与、騎士団の魔力操作、それにレイとアースが度々来てくれるお陰でなんとか気が紛れて、少しずつ落ち着いてきた。


 アースは、ユキと一緒にソファーでクッキーを食べている。

 レイは、俺の側で魔石に付与する流れをガン見している。


「リリ殿下、一体どうなっているのですか? 魔力切れにはならないのですか?」

「うん。ボクはならない」

「何故?」

「ん? 魔力量が多いから」

「リリ殿下、僕達はまだ10歳になってないです」

「うん。7歳だね」

「殿下、何歳から魔法を?」

「3歳」

「さ……3歳!?」

「ニル、あとどれ位?」

「あと、30ずつ位です」

「そう」

「殿下、僕に教えてもらえませんか?」

「レイ、何を?」

「魔法です。魔力量を増やしたくて、殿下に教えてもらった様に毎日やってますが。本当に増えているんでしょうか?」

「レイ、どうしてそんなに覚えたいの?」

「アースは騎士団を目指してます。毎日鍛練しています。ボクはアースの様に身体を動かすのは苦手です。

 でも、僕だって少しは大事な者を守れる様になりたいです」

「大事なもの?」

「はい」

「それは何か聞いてもいい?」

「家族や、友達や、リリ殿下です」

「……レイ」


 俺は、ニルを見る。どうしよう? と。


「レイ様、まだレイ様は7歳です。そう焦る事はありませんよ」

「ニルさん。でも同じ歳のリリ殿下はやっている」


 んー……俺は狙われていたからなぁ……


「レイ、ご家族と相談した?」

「いえ」

「じゃあ、一度相談してみて。ボクは、魔法を使うのは早い方が良いと思っている。

 でもね、人間て大きな力を手にしたら、変わってしまう人もいるんだ。レイがそうだと言うのじゃないよ。

 でも、国が10歳と決めているんだ。

 ボクは、色々あったから……自分の身を守らなきゃならなかった。レイはそうじゃないでしょ? ま、家族と相談してみてよ」

「リリ殿下……分かりました」


 レイ、納得できない、て顔してるな。でも、俺の一存では決めれないよ。




「リリ、元気ないんだって?」


 ポンッとルーが現れた。

 今は夕食も終わって、もう俺はベッドの中だ。


「ん……ルーか。久しぶりだね」


 横になったままルーに向かって手を伸ばすと、ルーは俺の手にとまってきた。


「あら、リリ。もうおネムか」

「うん、大丈夫」

「リリ、お前急ぐなよ」

「え、ルー。何?」

「急いで大人にならなくても良いんだからな」

「ルー……」

「リリは下手に能力があるし、立場上大人より色々責任が付き纏う事もあるだろう。だがな、急ぐなよ」

「ルー。なんかさ、ボク変じゃない?」

「変なのか?」

「うん。独りぼっちとか、離れるとかに敏感すぎる気がする」

「あー、そうだね」

「うん……」

「仕方ないと思うよ?」

「何で?」

「リリは覚えてないけど、小さい頃から……それこそ、赤ちゃんの頃から狙われてきたから。だから、リリは人の命にも敏感なんだ」

「そうか……」

「大人になるにつれ、薄くなるよ」

「そう?」

「そうだよ。だからな、急ぐ事ないよ。ゆっくりでいい。少しずつ大人になりな」

「そうか……」

「ああ。辛いとか、寂しいとか、悲しいとかは歳には関係ないからね。今のリリの気持ちを誤魔化すな」

「そうか……分かった」


 歳には関係ないか。

 正直、フィオンが嫁に行って、城からいなくなる事がこんなに寂しいとは思わなかった。

 いる時はそう気にしなかったのにな。面倒な時だってあったのに。


 前世の家族を思い出す。皆、元気でやってるかな?

 俺はまだこの世界では7歳だ。

 ルーが言う様に、焦らずゆっくり大人になろう。

 未来はまだまだ分からない。


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リリが泣くともらい泣きする自分がいる…
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