210ー魔石とミスリル
「リリアス殿下、結局150近くになってしまいます」
そうか、150か。て、150セットだよな。
「父さま、時間をもらえますか? 騎士団一団位の数だったら、1日でできますが。150になると、流石に時間が欲しいです」
「ああ、リリ。それはもちろんだ。あと、皇后と側妃、テュールとフォルセ、其々の侍女と側近にも持たせたいんだ。それで150だ」
「分かりました。で、魔石は?」
「殿下、私の方でご用意します」
「セティ、あのね。魔石に付与するのはボクがするから、それを形にする人を寄越してほしいんだ」
「殿下、形にですか?」
「うん。認識票につけられる形にとか、ネックレスのトップにする形に加工する人だね。
王国に行く時は時間がなかったから、ニル達侍女の皆が頑張って作ってくれたんだ。でも、今回は数が多いから、職人さんを寄越してくれたら助かる」
「ああ、なるほど。分かりました。手配致しましょう」
「お願い」
「では、殿下が付与別に分けて頂いた魔石を、職人に渡す事に致しましょう」
「うん。それは助かるよ」
うん、それがいい。そしたら、俺は魔石に付与するだけで済むからな。助かるわ。
「それはそうと、リリ。今日は皆で何をしていたんだい?」
「今日ですか? 何をと……あ……」
「うん。教えてくれるかな? 詳しく」
「父さま、フレイ兄さまかクーファル兄さまが、ご相談すると思いますよ?」
「そうだね。でも、父様は今知りたいんだ」
はぁ……ニッコリされたよ。そうかよ、今かよ。
俺は事の詳細を、父に話して聞かせた。
「殿下、それはまた……!」
「セティ、でもね。フレイ兄さまが良い例だけど、騎士団は魔力操作が苦手みたいなんだ。制御となるともっと駄目なんだ」
「まあ、普段は剣ですからね」
「うん。でも、剣の威力が上がって、隊員達の身体能力が上がるなら、するべきでしょう?」
「もちろんです」
「だからね、フレイ兄さまが、ウォルターとシオンに相談している筈だよ」
「フレイが、魔術師団長にか?」
「はい。父さま。良い事でしょう?」
「ああ。今まで、騎士団と魔術師団は妙な確執があったからね。これを機に、交流できると素晴らしいね」
「はい。実際にシオンが、即席でほんの少し騎士団を指導しただけで、出来る者が増えました。
そうなると、他の隊員達も、自分も出来る様になりたいと思っている筈です。
何より、目の前でフレイ兄さまの、超人化の様な変化を見ていますからね」
「そうだね。しかし、どうして急にそんな事をやり出したんだい?」
「えっと……きっかけは……
ああ、シオンです。アスラ殿が、剣に魔法を付与するのに興味を持って」
「なるほど、アスラールか」
「はい。昨日、アスラ殿に見せてもらって……シオンが騎士団に即席で教えて、て感じです」
「リリ、じゃあアスラールも出来るのかな?」
「えっと……昨日、アスラ殿もブーストとプロテクトは出来ていましたが、兄さま達の様な感じではありませんでした。魔術師団に付与してもらう時と、同じ感じです」
「そうか。フレイにクーファル、オクソールにリュカ、シェフとニルか」
「はい。フレイ兄さまは別格です。魔力操作を覚えれば、無敵です」
「そうか、フレイが」
「2属性同時付与なんて、ボクもできません」
「リリが出来ないのか?」
「はい。試した事ないです」
「リリ、出来ないと、試した事がないのとは違うね」
「父さま?」
「まあ、リリはまだ子供だ。ゆっくりでいい」
「……?」
「陛下、これは鉱山の調査も、早く進める方が良いですね」
「ああ、セティ。ミスリルか」
ああ、王国の事があったから、すっかり忘れてた。ミスリルは硬いだけでなく、魔力との相性も良い。魔力が良く馴染むんだ。
「セティ、騎士団と近衛師団の分位なら、余裕であの鉱山にあるよ」
「殿下、あの爆発のあった鉱山にですか?」
「うん。余裕だよ」
「リリ、本当に?」
「はい。父さま。マジ余裕です」
「そうか。セティ、採掘しよう!」
「陛下、では鉱夫を増やしますか?」
「セティ、鉱夫なら土属性の人がいい」
「リリアス殿下、それは何故です?」
「硬いの」
「硬い?」
「うん。ミスリル鉱脈の前にある岩盤が超硬いの」
「それと、土属性とどう関係が?」
「魔法でないと、岩盤を破壊するのは無理なんだ。だから、今まで採掘されていなかったし、発見されていなかった。
でも、前に説明した様に坑道には粉塵があるから、引火の原因になりそうなのは使えない。静電気でも駄目。
鉱石の成分で、水に反応する物があったら引火するから、水も駄目」
「はあ……」
「だからね、岩盤を土属性の魔法で砕くか、土属性の魔力を流して崩すの。風も悪くはないと思うけど、1番安全なのは土」
「なるほど。分かりました」
俺は、マジックバッグからりんごジュースを出して飲む。よく喋ったよ。
「コク……コク」
「ああ、思い出した。リリ、エイルがマジックバッグにする物を探していたよ」
「そうですか。何でもいいのに」
「拘りがあるんだろうさ。父さまにも作っておくれ」
「はい。いつでも作ります……コクン」
俺はりんごジュースをマジックバッグに仕舞った。
「そうだ、リュカ。お前も凄くなったそうだな」
セティが、後ろに控えていたリュカに話しかける。
「セティ様、リリアス殿下のお陰です」
「リリ? 何をしたんだい?」
「父さま。リュカは身体の中で、魔力がうまく循環していなかったのです。胸の下辺りで止まってしまうと言うか、堰き止められると言うか。それを、流しました」
「はぁ? 殿下、全く意味が分かりません!」
「えっと、セティ。とにかく流しました。そしたら、魔力の流れがスムーズになって。良くなりました!」
「はぁ……」
「はい! 良くなりました!」
「リュカ、分かってないだろう?」
「セティ様、なんとなくです」
「でも、リュカがよく転んでいたのは、それが原因だったと思います」
「だそうです!」
「ハハハ! リュカ、お前全然分かってないじゃないか!」
「リュカの、叙任式もそろそろ考えないとね」
リュカの叙任式かぁ……なんか俺、泣いてしまうかも知れん。リュカは護衛や、従者てだけじゃないからな。
俺、感動してしまうかもよ? リュカ。