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209/442

209ーボクはまだまだ

「殿下! またこちらでしたか! お昼ですよ!」


 シェフとニルが呼びに来たぜ。

 もう、そんな時間かぁ。


「リリ、食事にしよう」

「クーファル兄さま、もう少しだけ。シェフ! ちょっとこっち来て!」

「あー、リリそうだな」

「はい。シェフも、もしかしたら凄いかも知れません」

 

 そうさ、だってシェフは戦うシェフだからな!


「リリアス殿下、どうされました?」

「あのね、シェフ」


 俺はシェフに説明して、検証を始めた。

 やはり、想像通りシェフも凄かった。


 シェフは、風属性だ。

 剣は、風属性をまとい剣身が伸びている。剣の形がなくなる事はないが、緑色の風の剣になっていた。

 ブーストもプロテクトも、シェフはあっさりと出来てしまった。

 フレイの様に、獣人の様な身体能力とまではいかないが、かなり身体能力が向上した。


「リリアス殿下、これは良いですね」


 シェフは、そう言うとまたブーストを掛けた。


「ちょっと試してみても、いいですか?」

「シェフ、何するの?」

「殿下、鑑定を!」

「レピオス、何? どうしたの?」

「これは……!」

「シオン殿、分かりますか? 殿下、早く鑑定です」

「分かった」


『鑑定』


 おいおい、何なんだ!?

 俺が、驚いてボーッと見ていると、シェフの身体が浮いた。

 アッと言う間にシェフは空中にシュンッと浮かび、空中で大きく宙返りして戻ってきた。


「ハハハハ! これは便利です! これで、ワイバーンも狩りやすくなりますね!」


 いや、笑ってる場合じゃないよ! ワイバーンどころじゃねーよ!

 シェフ、何した? あ、そうか。だから鑑定か。

 俺は再度、シェフに集中して鑑定する。


「殿下、分かりましたか?」

「うん、シオン。シェフは、身体全体はもちろんだけど、自分の足元に風の渦巻きを作ったんだ。小さな竜巻みたいだ。これは、何なんだろう? ブースト? いや、でも自分の身体の外だもんな」

「アイデアですね。シェフは柔軟な考えをお持ちの様です」


 ああ、そうか。ルーが固定観念に拘るなと言っていた。

 シオンは、その事を言っているんだ。


「殿下、シェフの魔力量はどうなってますか?」

「レピオス、殆ど減ってないよ。シェフの魔力操作は完璧だ」


 シェフが、フワリと戻ってきた。


「シェフ、凄いよ! シェフの魔力操作は完璧だ!」

「有難うございます! 日々、殿下の食事を作ってますからね!」


 え? それ関係ある?


「殿下、料理人は皆魔力操作に長けていますよ」

「シェフ、そうなの?」

「はい。料理をする時に微妙な操作をしますからね」

「そうなんだ! 凄いね!」


 よく分からんが。


「殿下! 殿下! 見て下さい!」

「リュカ、どうしたの?」


 と、リュカが呼ぶ方を見ると、今度はニルだ。

 俺の周りチートばっかだよ。もう満腹だよ。


 流石にニルは、身体が光ったり特別な事はなかったが。

 ブーストとプロテクトを同時付与し、水の剣で巻藁をシュンッ! と一瞬で斬っていた。


「ニル……! 超強い!」

「リリアス殿下、これは全く力がいらないので、女の私にはとても楽で助かります。何人でも斬れますよ」


 いや、斬らなくていいから。


「リリ! お前の周りは最強だな!!」

「フレイ兄さま、凄いですね。ボク、何か落ち込みますよ」

「リリ、どうしてだ?」

「だって、みんな凄いじゃないですか。ボクはまだまだです」

「リリ。何、当たり前の事を言っている?」

「え? 兄さま?」


 フレイがしゃがんで、ガシッと肩を組んでくる。力強い。フレイの体温が伝わってくる。


「お前はまだ7歳の子供だ。まだまだで当然だ。つい最近まで、オギャーと泣いていたんだ。そんなお前が、あいつらに勝てなくて当然だろ?」


 あ……なんかフレイ。感動してしまったぞ。


「フレイ兄さま。ありがとうございます!」


 なんか、年相応に扱ってもらって嬉しいぞ。照れるけどな。

 そうだ、俺はこの世界ではまだ7歳だ。まだまだこれからだ!


「兄さま、好きです!」


 俺は、フレイにパフンと抱きついた。まだ身長も全然違う。体格も違う。フレイは大人だ。そうだ、この世界の俺はまだ子供だ。

 フレイにヒョイと、抱き上げられる。


「さあ、皆で食事にしよう! ウォルター、シオン! 午後から俺の執務室に来てくれ! 騎士団の事で相談したい」

「はい、フレイ殿下。畏まりました」


「兄上、リリは私が抱きますよ」

「クーファル、リリは俺が好きだそうだ。残念だったな」

「フレイ兄さま、ボクはクーファル兄さまも好きです」

「ハハハ。兄上、残念でしたね」

「でも、今はフレイ兄さまが良いです」

「アハハハ! そうか! 俺が良いか!」


 後ろから、笑いながらシェフとニルとリュカがついてくる。

 俺は周りの人に、恵まれているよ。

 こうして、身分に関係なく笑える環境も嬉しい。本当、感謝だよ。




「父さま、結局どれだけ必要なんですか?」


 昼食を食べて、ちょっとウトウトしてたら、父に呼び出された。今は父の執務室にいる。


 例の魔石だ。

 王国に行く時に、第2騎士団の皆に防御と状態異常のレジストを付与した魔石を、配った。

 直径5ミリもない位の小さな魔石を幾つか繋げた物だ。小さな魔石一つ一つに物理攻撃無効、魔法攻撃無効、シールド、状態異常無効などの効果を付与してある優れ物だ。


 騎士団の隊員達は、皆自分の認識票を首にかけている。所謂、ドッグタグやIDタグと言われる物だ。俺たち兄弟も皆つけているんだけどな。

 騎士団には、そこにプラスできる様にした魔石だ。

 他の皆は、ネックレス型だ。


 それを、騎士団全員。それに父専属護衛の近衛師団にも持たせたいと言う話だ。


 帝国の騎士団は第4まである。

 今は第1騎士団をフレイ。第2騎士団をクーファルが、それぞれの団長の上についている。

 騎士団のチームカラーもフレイとクーファルの瞳の色になっている。

 例えば、第1騎士団は、フレイの瞳の色と同じスカイブルー。

 第2騎士団はクーファルの瞳の色で深いグリーン、碧色だ。


 他の隊はまだ団長の上に皇子がついていないので、帝国のメインカラーである光属性の色、白だ。

 制服や旗にもチームカラーが使われていて、騎士団の隊員達は色付きの隊に入る事が憧れらしい。


 だからと言って、第3第4の騎士団が弱い訳ではない。

 もちろん、出自が影響する事もない。完璧な実力主義だ。

 ただ、フレイやクーファルが遠出する時や公務の時はそれぞれの隊が出る。どうしても、皇子が付いていない隊はお留守番になってしまう。

 ま、城の警備だな。要するに、第1第2騎士団は、騎士団の中でも花形と言う事だ。


 そして、皇帝と皇后専属の護衛部隊、近衛師団。

 騎士団の制服は、普段はダークグレーに各隊のカラーのラインが入っていて儀礼服がダークグレーではなく白になる。

 近衛師団の制服は、普段が黒にゴールドのラインが入っていて儀礼服が白にゴールドのラインと刺繍が入っている。


 この、近衛師団は俺は全然知らない。

 普段、父の側で護衛をしている事しか知らない。噂によると、影と呼ばれる隊員もいるらしい。

 怖いから、俺は知らない方がいい。



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