204ーフレイは天才?
「兄さま……」
「いや、リリ。まさかそんな、な?」
「兄さま…………」
「だってリリ、覚えたいじゃないか!」
「兄さま、アスラ殿と盟友なんでしょう? 直接アスラ殿に、教われば良いじゃないですか?」
「いや、それは悔しい」
「兄さま……あれですか? もしかして、こっそり出来る様になって、自分だって出来るんだよ、て顔をしたい。て事ですか?」
「リリ、お前はもう少し言葉を選ぶ方が良いぞ」
「違いましたか。そうですか。ボクでも良ければ、お教えしようと思ったのですが。そうですか、違いましたか……モグモグ」
「リリ! 出来るのか?」
「はい。ボクもリュカも出来ますよ」
「何!? リュカまで出来るのか!? クーファルは?」
「さあ? クーファル兄さまは、あまり剣術に興味はないのでは?」
「そうか、そうだな。じゃあ、オクソールは?」
「さあ、知りません。でもオクなら直ぐにできそうですね……」
もう、この長男は。時々、妙に子供っぽい事を言い出す。
やはり、あの父の子だ。
「兄さま、やってみますか?」
「リリ、いいのか?」
「はい。ボクで良ければ」
「リリ、お前はやっぱり可愛いな!」
フレイと側近のデューク、リュカと一緒に騎士団の鍛練場に来ている。
「殿下、あれですか。フレイ殿下に昨日の?」
「リュカ、そうだよ。誰が言ったんだろ?」
「殿下、朝の鍛練の時に、昨日できる様になった隊員が自慢してたんですよ。きっと、それでですよ」
「もう、騎士団て子供なの?」
「いや、そんな事ないですよ?」
本当、デュークも大変だわ。
「そうッスね」
「いや、リュカ。わかったの?」
「はい。デューク様も大変だ、とか思ったんでしょう?」
「うわ、リュカ凄い」
「フフフ、何年殿下の側にいると思ってるんですか」
「そっか、何年?」
「殿下、4年ですよ。4年! あ、でも殿下も側近を持たれるんですよね」
「うん。らしいね」
「あれ、レイ様とか?」
「ううん。レイの家には断られたらしいよ」
「え……」
なんだよ、リュカ。その可哀想な子を見る様な目は。
「殿下、もしかして嫌われて……」
「違うよ。然るべき家系の、然るべき教育を受けた者がなるべきだって」
「はあ、よく分かりません」
「リュカ、それよりどう? 戻ったりしてない?」
「何がですか?」
「身体だよ。昨日通したでしょ?」
「ああ、快調ですよ。今朝オクソール様もビックリでした」
「そうなの?」
「はい。絶好調です」
「そう。それは良かったね」
うん、今まで気付かなかったのも、ある意味凄いけどな。
俺はリュカの、こう言う惚けたところが好きだ。和むわ。
「じゃあ、兄さま。やってみますね」
俺は、リュカに剣を借りて、サラッと光属性を付与する。
剣を撫でると、白く光り出した。
「リリ、それは光か?」
「はい。兄さまは、火と雷でしたか?」
「ああ」
俺は昨日、教えてもらった通りの事をフレイに教えた。
「ふむ。出来そうな気がしてきた」
「兄さま、最初はゆっくりでいいです。魔力を指先にまで動かして下さい」
「ああ」
フレイが集中し、指で剣を撫でる。
「えッ!?」
「フレイ殿下!」
「え? 変か?」
なんと、フレイの剣が火属性の赤色なのに、黄色くバチバチと小さな稲妻も纏っていた。
なんだこれは!? こんな事できるのか!? いや、実際に出来てるな。
2属性同時付与なんて、見た事ないぞ。
「兄さま、凄い!!」
「リリ、そうか? 兄様は凄いか!?」
「はい! 驚きました! 2属性同時付与なんて初めて見ました!」
「そうか、そうか! ハハハハハ!」
これ、良いのか? まあ、いいか?
「これは、あれだな! 斬りたくなるな!」
そう言いながら、フレイはリュカを見た。シオンの様に悪い顔で、目をキラランと光らせて。
「なんでですか!? なんで俺ッスか!?」
「いや、リュカ。斬らねーよ! アハハハ!」
「フレイ殿下! 当たり前ですよ!!」
んー、これは凄い興味深いな。後で、シオンに聞いてみよう。
「兄さま、鑑定してもいいですか?」
「ああ、いいぞ!」
そう言いながら、フレイはブンブン剣を振っている。
昨日のリュカと言い、なんか軽いな。
鑑定されるのって、嫌じゃないのか?
まあ、本人がいい、て言ってんだからいいか。遠慮なく……
『鑑定』
おー! そうなのか! フレイ、スゲーじゃん!!
「兄さま、あんまり剣を振ったら斬撃が飛びますよ!」
「あ? ああ、そうか」
フレイは、やっと剣を収めた。
「兄さま、そのまま魔力を、身体の中全体に行き渡せる感じで流して見て下さい」
「おう、分かった」
フレイがまた集中する。
すると、今度はフレイの身体が光り出した。
やっぱりだ! スゲー!
「フレイ殿下! 光ってますよ!」
「え? デューク、光ってるか?」
「はい! なんともありませんか?」
「ああ、今ならなんでも拳で倒せそうだ」
実際、倒せると思うぜ。
自分の身体にブーストすると同時に、火と雷属性を纏っているんだからな。
「兄さま、今兄さまは、身体にブーストをかけた状態です。同時に、火属性と雷属性も纏ってます! 兄さま、無敵ですよ!」
「リリ! そうか!」
これ、でも負担にならないのか? 怖いから、早く止めさせよう。
「兄さま、次は魔力を、身体の外側に膜を作る感じで、流して見て下さい。プロテクトです」
「おう、外側に膜か」
フレイが一瞬集中すると、身体に膜の様にまた火属性の赤に雷属性の黄色い小さな稲妻がまとわりついた。
「お? これでいいのか? なんかバチバチいってるぞ?」
「兄さま、受けて下さい」
俺は、木剣で思い切りフレイに斬り付けた。
――ギュイィィン!!
「うわッ!!」
木剣を弾き飛ばされてしまった。
「おッ!?」
「兄さま凄い! 天才!!」
「アハハハ! そうか! 天才か!」
そろそろ、止めさせよう。
「兄さま、いいですよ。解除して下さい」
「ああ」
「リリアス殿下、何ですかあれは?」
「デューク、ボクにも分かんない。シオンに聞いておくよ」
「はい、お願いします。フレイ殿下、身体はなんともありませんか?」
「デューク、それがな。超気持ちいいぞ!」
え、気持ちいいの? 雷が? 整体とかで電気流す感じ? いや、違いすぎるだろ。
それにしても、ビックリだ!