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203/437

203ー久しぶり

 途中でシオンと別れて、俺とリュカはアスラールと一緒にアラウィンに会いにきた。


「殿下! ご無沙汰しております!」

「アラ殿、お久しぶりです」


 と、言っても俺は、定期的に転移門に魔力を補充に行ってるから、アラウィンとは定期的に会っている。

 会ってはいるが、いつも時間がなくてすぐに帰って来ている。

 また、ゆっくり行きたいなぁ。今度は、母さまも一緒に!


「アスラ殿に赤ちゃんが産まれたとか。おめでとうございます!」

「殿下、有難うございます! 是非、会ってやって下さい。可愛いですよー!」


 あら、あの屈強なアラウィンが! フニャフニャの笑顔だぜ。


「殿下、もう猫可愛がりで。しっかりおじいちゃんになってますよ」

「そうなんだ。可愛いんだね」

「殿下、やりませんよ?」

「いや、アスラ殿。ボク何も言ってないし」

「アハハ、冗談です」

「お名前は何て言うのですか?」

「アンシャーリです」

「辺境伯家は皆『ア』から始まるんですね。何かあるんですか?」

「実は……」


 アスラールの表情が変わった。重大な秘密でもあるのか?


「はい」

「何もないんです。全くの偶然です。アハハハ」

「なんだー。ビックリしたー!」

「ここまで皆『ア』から始まると、どうせなら揃えようか? て、だけです。

 でも、実は。アンシャールと言う、お一人の神様のお名前を頂こうと思っていたのですが、殿下の『リ』を頂いて、アンシャーリにしました」

「えー! どうしよう!」

「すみません、事後報告で」

「そんなー、ボクやっぱりもらおうっかなぁ」

「殿下!」

「冗談でーす。ボクもまだ7歳ですから」


「しかし、早いものですね」

「アラ殿?」

「殿下と、初めてお会いしたのは5歳の時でしたね」

「はい」

「あの頃、私は何も知らずに……」

「アラ殿、今は幸せですか?」

「はい。こんな幸せがあるとは、想像もつきませんでした」

「では、良いのではないですか?」

「殿下……」

「アラ殿は、忘れてしまわれた訳ではないのですから。

 ボクも3歳の時の事は、覚えてます。悲しくて、辛くて、寂しくて。もう二度と、城から外には出ないと……出てはいけないと、思っていました。

 でも、5歳の時に父さまに出されました。あの時は、急で驚きましたが。

 出された先が、アラ殿のところで良かった。アラ殿だから、父さまはボクを出したのだと思います。父さまはフワフワしてますが、考えていたのかなと思います。アラ殿のご家族は、良い家族です。姉さまを、宜しくお願いしますね」

「殿下。有難うございます。私の方こそ、ご縁を頂けて有り難く思っております。

 私も、あの時殿下に来て頂いて良かったと、感謝しております。殿下、また一緒に釣りでもしましょう」

「はい! 是非!」

「ニルズが、殿下はいつ来られるのかと、もううるさくて」

「アスラ殿。有難うございます!」


「あら、リリ来ていたのね」

「姉さま。姉さまを宜しくお願いしますと、言っていたところです」

「リリ。私はリリの姉さまには変わりないですからね」

「はい。姉さま」

「リリ、シェフが探していたわよ?」

「あ、じゃあ夕食の時間ですね。行きましょう」


 その日の夕食は、アラウィン、アスラール、アルコースも一緒だった。

 大勢で、食べるのは楽しい。嬉しい。いつもより美味しい。


 実は俺は、未だに一人で食事をするのが嫌いだ。誰にも言ってないが。

 多分、ニルやシェフにはバレていると思う。

 それでも、どうしようもなくて一人の時がタマにある。

 そんな時は、必ずシェフが側にいてくれるが、いつもより食べる量が減る。

 まだ3歳の時の事を引きずっているつもりはないし、引きずってもいないと思う。

 それでも、食事を一人で食べるのは嫌だ。




「ふわぁ〜……」

「殿下、おはようございます」

「ニル、おはよう」

「殿下、朝からフレイ殿下がお待ちですよ」

「え? 何?」

「食堂で待っておられるそうです。あ、でも急がなくていいと仰ってました。ゆっくり朝食を食べているからと」

「そう。じゃあ、行こう」


 顔を洗って、お着替えして食堂に向かう。

 ユキはもう厨房だ。


「兄さま、おはようございます」

「ああ、リリ。おはよう。急がせてしまったか?」

「いえ、大丈夫です。兄さま、どうかしましたか?」

「リリ、昨日面白い事をしていたらしいじゃないか」

「面白い事ですか?」


 シェフが朝食を出してくれる。

 今朝は、ベーコンエッグだ。とりあえず、りんごジュースを少し飲む。


 シェフのベーコンエッグは大好きだ。

 ベーコンの焼き加減と、卵がトロトロの半熟で好き。

 シェフの料理は、全部好きだけどね。

 ベーコンエッグを口に入れる。


「ん〜、美味しい〜。シェフ、絶妙!」

「殿下、有難うございます!」

「リリ……?」

「あ、兄さま。すみません。ボク、面白い事は特にしていないと思います……モグモグ」

「リリ、魔法を教わっているのは、誰だ?」

「ああ、シオンです」

「そうだ。そのシオンとアスラと、何かしていただろう?」

「あー、あ?」


 フレイと、アスラールは学園の同級生で、二人は自称盟友だそうだ。


「あれですか? アスラ殿に教えてもらっていた……」

「そう、それだ。急に騎士団で、剣に付与出来るようになった者達がいて驚いた」

「ああ、シオンが即席で先生になったんです」

「らしいな」


 なんだ、全部知ってるじゃないか。


「そこでだ、リリ」

「はい」

「正式に騎士団を指導してもらえないか?」

「兄さま、シオンもそう言ってました。師団長に提案してみると」

「そうか!」

「はい」

「じゃあ、リリ。早速今日の……」

「兄さま、今日からは無理です」

「リリ!」

「だって、兄さま。向こうにも都合がありますよ?」

「ああ、そうなんだが。だからな、リリ。聞いてみてくれないか?」

「兄さま……もしかして、ご自分が覚えたいからですか?」

「…………」


 あー、出たよ。フレイのジャ◯アン病が。


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― 新着の感想 ―
[一言] 「アンシャーリです。」ってさぁ 赤毛でそばかすがある設定になるのかな?
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