201ーリリとルーとシオンの会話
「ああ、リリが説明したまんまだよ」
俺は椅子に座って2人の話を聞いている。
「ルー様、魔力量を調整するなど」
「シオン、どうして?」
「はい?」
「だって、シオン達も普通にやっているだろ?」
「ルー様、普通にやってますか?」
「ああ。例えばだな、全力で上位魔法放つのと、ちょっと火が欲しいと生活魔法を使うのとでは違うだろ? それと、同じだよ」
「ルー様、それとこれとは違いませんか?」
「なんでだよ、一緒だよ?」
「リカバリーの様な上位魔法を使う時には、全力でいかないと発動しません」
「それはあれだ。単純に魔力量の違いさ」
「あ……なるほど」
「それにね、シオン達はこんな上位魔法を使える訳ない、て気持ちがあるんだよ」
「確かに……」
「でも、リリにはそれがない。だってリリは、何が上位魔法なのか分かってないからね!」
「え……殿下?」
「うん」
「殿下、分かってないのですか?」
「うん。知らない」
「なんですとッ!?」
なんだよ、知らねーもんよ。床についていない足をプラプラさせる。ちょっと拗ねちゃうぜ?
「アハハハ、シオン分かった?」
「はい。我々の知識による先入観が、邪魔をしているんですね?」
「そうだね。出来なくてもいいんだよ。出来ると信じて何度も挑戦しないと、可能性はないと言う事だよ」
「なるほど!」
「そうして挑戦しているうちにね、魔力量が増えて使える様になるんだ」
「ルー様! 目から鱗です!」
「そうだろ?」
なんかシオン、うるさいね。盛り上がってるとこ、申し訳ないんだけどさ。
「あのね、ボク転移を覚えたいんだ」
「殿下、覚えましょう!」
「シオン……大丈夫?」
「何事も、挑戦です!」
「いや、リリの場合は出来るんだけどね」
「え……」
「はい?」
「だからさ、シオンも言っていたろ? リリの魔力量は桁違いだって」
「はい」
「だからね、リリに使えない魔法なんてないんだよ」
「あらら……」
「あららじゃねーよ。だから、リリには勉強が必要なんだよ」
「あー、そう言う事ですか」
「そうだ。シオン、頼むよ」
「はい。お任せ下さい!」
それからシオンは超スパルタだった。
「はい、殿下。次です。覚えましたね?」
「えー、シオン待って」
「まだ光属性の下位ですからね。サクッといきましょう」
「ええー」
お陰で俺は、光属性魔法の下位は直ぐに全てマスターした。
だが、まだまだ中位、上位とある。
シオンが魔法のテキストをくれた。
「このテキストには、現在確認されている全ての魔法が記されています。殿下には一番必要な物かと」
「おー! シオン、有難う!」
「殿下は、将来学園に通われますよね?」
「うん、きっとね」
「その後、アカデミーには進まれますか?」
「んー、分かんないけど。進みたいと思っているよ」
「どの、アカデミーに?」
「それがね、医療アカデミーがないんだよね。だから、進むとしたら魔術アカデミーだね」
「はい。約束ですよ。間違っても、騎士アカデミー等には進まないで下さいね」
「どうして?」
「勿体ないですから」
「何が?」
「殿下の魔力量がです」
「なるほどー。あ、でもねシオン。剣に魔法を付与して、斬撃を飛ばす人がいるんだ」
「剣にですか?」
「うん」
「なんですとッ!!」
「斬撃を飛ばすまでしなくても、騎士の中には剣に魔法を付与している人が結構いるんだよ」
「そうなのですか?」
「うん。でもねシオン。騎士の人達は自己流でそれこそ試行錯誤して、剣に付与する事を覚えるんだ。
だから、魔術師団と協力できたら、もっと簡単に大勢の騎士達が出来る様になるんじゃないかな?」
「なるほど。付与する為の過程を、カリキュラムにすれば良いのですね」
「そうそう」
「それは一度団長と相談してみましょう」
「うん! シオンお願いね」
魔術師団でそれを考えて指導してくれれば、全然違うと思うんだよね。それにさ、これがキッカケで騎士団と魔術師団の確執もなくなったらいいよね。
「で、殿下は見られたのですか?」
「何を?」
「その斬撃ですよ」
「うん、見たよ。教えてもらった」
5歳の時にな。
「教えて? では、殿下も出来るのですか?」
「できない」
「殿下、どうして?」
「忘れたから」
「殿下ー!」
「エヘヘ」
悪いね、そんなのとっくに忘れちまったさ。
「どなたですか?」
「シオン、何が?」
「その斬撃を飛ばす方です」
「ああ、辺境伯のご子息だよ」
「はあ〜、やはり必要なのでしょうね?」
「うん、そう。必要なんだ」
対ワイバーンとかにさ。あいつら飛んでるから届かないじゃん?
「是非、お会いしたいですねー」
「そう? じゃあ、シオン。会いに行く?」
「え……?」
「その辺境伯のご子息に、会いに行く?」
「殿下、どれだけ遠いと」
「いや、直ぐに会えるよ?」
「え……」
「今、フィオン姉さまと、辺境伯次男の婚姻で来てるからね」
「なんですとッ!!」
「シオン、行く?」
「はい! 殿下、是非ご紹介下さい!」
と、言う事でシオンを連れてアスラールに会いに来た。
「アスラどのー!!」
「殿下!」
俺はアスラールに飛びついた。
アスラールが抱き上げてくれる。俺はもう7歳なのに軽々と抱き上げられちまったよ。
「殿下!! お久しぶりです! 大きくなられましたね!!」
「アスラ殿は、お変わりないですね!」
「殿下、私は子供ができました!」
「え! そうなの!?」
「はい! まだ産まれたばかりですが、可愛いですよ」
「えー! おめでとう! 会いたい!」
「ええ、是非会ってやって下さい!」
「どっちですか? 男の子? 女の子?」
「女の子です。もう超可愛いですよ?」
「えー!! アスラ殿のお顔が崩れてるー!」
「あの……殿下」
おぉっと、シオンを放ったらかしだったぜ。アスラに下ろしてもらう。ちゃんと紹介しなきゃな。
「シオン、ごめん。アスラ殿、紹介します。ボクの魔法の師匠で、シオンです」
「お初にお目にかかります。魔術師団副師団長を拝命しております、シオン・マグルスと申します。お見知りおき下さい」
「これはご丁寧に。辺境伯嫡男の、アスラール・サウエルと申します。宜しくお願いします」