表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

200/442

200ー譲位

 結局、公爵は一晩中眠り続けた。

 翌朝、目を覚ますと違う部屋に寝ていたのだから、当然驚いたそうだ。


 その日、王国全土に向けて、前王の悪事を記したお触れが出された。

 まずは、真実の公表だ。

 宰相一派の貴族が捕らえられた事、その黒幕である子息の事も、罪状と処分内容が発表された。


 そして、王は廃位。

 前王弟 フロプト・ガルースト公爵が即位する事が発表された。


 それに伴い、絶たれていた帝国との貿易も再開。関税も3年後に復活される事が決まった。今は民に食料を行き渡せる事を最優先し、関税の即時復活は見送られた。

 急遽セティが手配し、早速帝国の商人達が王国入りする事になった。


 父の望み通り譲位が成立し、両国の不可侵条約も締結された。



「兄さま、早く帰りたいです」

「リリ、そうだね」

「ボクだけユキと転移して帰ったら駄目ですか?」

「リリ、それはないだろう」

「そうですよね」

「帰りはどうするんだい?」

「兄さま、どうとは?」

「また、商人の坊っちゃんになるのかな?」

「はい。もちろんです。来た時とは、違うルートで帰ります」

「なんだかリリ、楽しそうだね」

「ずっと馬車に揺られるよりはマシです」


 俺は、言葉通り王国に来た時とは違うルートで帝国を目指し、道中来た時と同じ様に食料を配り、畑を耕し狩りを教えたりしながら無事に帝国入りした。


 俺の知らない所で、一騒ぎあったらしいが。

 俺が来る時に立ち寄った、宿屋のおっちゃんだ。

 

「おいおい、このお触れにあるリリアス殿下て、まさか坊っちゃんの事なのか!?

 帝国の皇子だったのかよ! なんだよ、そりゃねーよ!」


 まあ、今更バレてももう平気さ。


 王都で出会った、あの胡散臭い商人。あいつ、あいつだよ。ヘリウス・マールンだ。あいつが一肌脱いで、帝国の商人と王国の商人とを引き合わせたらしい。

 そして、ちゃんと約束通り、拾った少年達に教育を施してくれている。

 公爵を支えると公言していたからな。きっと、イキイキとやっている事だろう。




 この後、王国の貴族や王族の間で、密かに言い伝えられる様になった事がある。


 帝国には何があっても手を出すな。

 特に、光の精霊の加護を受け、神獣に守られている皇子には、絶対に手を出すな。

 帝国には、どうやっても敵わない。

 帝国には、返せない程の恩がある。

 必ず末代まで言い伝え、厳守する様にと。





「殿下、集中して下さい」

「むむ……」

「殿下、まだです」

「むむむ……」

「殿下、まだまだです」

「むむむむ……」

「はい、良いでしょう。なかなかお上手になられましたね」

「ふぅ……」


 俺は、シオンに魔力操作を教わっている。相変わらず、シオンはドSだ。日常に戻って平和な毎日だ。


「王国で何かございましたか?」

「シオン、何で?」

「以前と魔力操作の精度が全然違います」

「そう? なんだろ? ああ、あれかな? 向こうの城に滞在している間、常時サーチを展開していたんだ」

「なんですと!? 常時ですか!?」

「うん。だってルーがそうしとけ、て言うからさ」

「殿下、そんな事普通の人間には出来ません」

「え……」

「いくら薄く展開したとしても、半日も持ちませんよ」

「あらら……」



「それで?」

「それで? て?」

「他にまだあるんでしょう?」

「他にかぁ……んー、鑑定したり、バインドしたり、バインドしたり、ポイポイして時々転移、みたいな?」

「なんですか? それは」

「鑑定もまあまあやって、バインドしたらポイッてして転移して、またバインドしてポイポイみたいな?」

「ポイポイ? そんなに、拘束が必要だったのですか?」

「うん。襲撃されたからね。1日中バインドばっかしてるじゃん、て思った」

「なんですと!? 襲撃ですか!?」

「うん。あ、あとアレだ」

「なんです?」

「ルーに教えてもらって、少しだけの魔力でリカバリーした」

「リカバリーですか!?」

「うん。ボクが普通に魔力を込めたら、余計に負担が掛かるから駄目だとルーに言われて。だから、魔力を抑えてほんの少しの魔力でリカバリー。

 でもあれ良く効くよね〜。全力でやったらどうなるんだろ?」

「殿下、今の魔術師団にリカバリーを使える者は数人しかおりません」

「え……」

「しかも、リカバリーの様な上位魔法で魔力量を調整するなど。普通はあり得ません」

「あらら……」



「フゥ……ま、殿下は普通ではありませんからね」

「シオン、ボク転移を覚えたい」

「はぁッ!?」

「え……」

「殿下。そんな魔法、覚えられるなら私が覚えたいです!」

「あらら……」



「アハハハ! いいコンビだね!」


 ポンッと、ルーが現れた。


「ルー久しぶりだね。王国では有難う」


 そして俺は、マジックバッグからりんごジュースを出して飲む。


「コクコクコク……」

「リリ、またりんごジュースかよ」

「うん。でもニルに飲み過ぎちゃ駄目て言われた」

「リリは、りんごジュースを一気飲みするからな」

「うん、だって美味しいんだ」


 マジックバッグに大事に仕舞う。


「アハハハ! 我慢してるじゃないか!」

「うん。だって我慢しないと、貰えなくなるの」

「そうなのか?」

「うん、ニルに隠れて一気飲みしてるのを、リュカにバラされちゃった」

「ブハハハ!」


 小さい白い鳥のルーが、お腹を抱えて笑っている。フハハ、平和が1番だな。


「ルー様、りんごジュースはもういいです。それよりも、何ですか? あの、リカバリーの使い方は!」


 あれ、シオン怒ったのか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ