197ー撃退
今年最後の投稿になります。
読んで頂いて有難う御座います。心から感謝致します!
また、来年もリリ達を宜しくお願いします!
俺とリュカとユキは、大急ぎで父の部屋に向かう。
「リュカ、魔道具で兄さまとオクに、今の状況を話しておいて」
「はい! 殿下……!! 殿下、危ないです!」
――ドサッ!
リュカが、一振りで襲撃者を倒す。
本当に、誰が何を考えているのか。城の中に、襲撃者が大勢入り込んでいる。
まるで、クーデターじゃないか!
「リリ、リュカ、我に乗れ!」
「え? ユキ?」
「殿下、とにかく!」
そう言ってリュカに抱き上げられ、俺はユキの背に乗せられた。リュカは、しっかりと俺に覆いかぶさる様にユキに抱きついている。
次の瞬間、周りが風で見えなくなった。風が止むと、俺達は父の部屋にいた。
「リュカ!」
「はいッ!」
父の部屋に、襲撃者が押し寄せていたんだ。
父が、シールドを張っていた。母とクーファルで、攻撃魔法で撃退していた。
警護についていた騎士団の隊員も父達を守りながら、撃退している。
そこに突然、ユキに乗った俺とリュカが現れた訳だ。
リュカが片っ端から倒していく。俺はそれを、バインドしていく。ユキは、そんな俺に向かってくるヤツらを倒してくれている。
「陛下!」
セティや、ソールが父達を守る。
俺は城全体をサーチする。ここはもう大丈夫だな。
「父さま、母さま、兄さま!」
「リリ、有難う。大丈夫だ」
うん。楽勝だったみたいだな。
「父さま、城中に入り込んでいます」
「そうか。誰か分かるか?」
俺は、倒されて気絶している襲撃者をじっと見る。
「父さま……宰相一派です。宰相の息子と奥方です。襲撃者は、お金と食べ物で雇われています」
「そうか。明日が譲位だから、何かしてくるだろうとは思っていたが」
「父さま、ボクはまだ移動します」
「殿下! 俺も行きます!」
「リュカ、頼んだ!」
「はい! クーファル殿下!」
俺とリュカは、またユキと転移して行った。
「ニル!」
「殿下! ご無事ですか!?」
なんだこの部屋は!? ニルは一体何人撃退したんだ!?
「ニル! 遅くなってごめん! よく持ち堪えてくれた!」
「殿下、大した事ありません!」
両手に短剣を持っているニルがニッコリと笑った。コエー……
「殿下! バインドお願いします!」
「リュカ、分かった」
リュカが気絶している襲撃者達を引きずってまとめてくれる。俺はそれをバインドしていく。ついでに、部屋の外に纏めて出しておこうかな。その方が、片付けやすいよな。
「ニル様、凄いッスね!」
「リュカ、何言ってるの? 素人同然の相手に凄いも何もないでしょう?」
「ニル、そうなの?」
「肩慣らしにもなりませんでした」
ニル、スゲー!!
だって、今いる俺の部屋だったところには、10人以上の襲撃者が転がっているんだぜ?
ニルたった一人で、撃退したんだろう? 凄い! 本当にニルも強いんだ。え? てか、ニル今短剣どこに仕舞った? メイド服のスカートの中はそんなんなってんの!? 俺知らなかったよ。ちょっと引いちゃうよ? 見なかった事にしよう。
「リリ、まだ行くぞ」
「あ? ああ、ユキ」
「殿下! お気をつけて!」
「ニルは、父さまの部屋に行って! みんな集まってる! セティもいるから!」
「はい! 分かりました!」
「ニル! 気をつけてよ!」
そう叫んで、俺とリュカはまたユキと転移した。
こっちも、終わっている様だ。
「あー、殿下。シェフの一人無双だったみたいですね」
「うん。リュカ、そうだね。とりあえず、ボクはバインドしていくよ」
厨房の片隅に、王国の料理人達が震えながら固まって見ている。
怪我は無さそうだ。ここにも、10人ちょいか。
シェフは強いからさ。心配はしてなかったけど。こんなに、圧倒的だったであろう現場を見るとね。
ちょっと俺、引いちゃうよ? さっきから引きまくりだよ。
俺は2〜3人ずつ纏めてバインドして、厨房の外にポイッと出す。
「殿下! ご無事でしたか! お怪我は!?」
「シェフ、有難う。大丈夫だよ。それより、シェフも大丈夫?」
「これしき! 子供を相手にしている様なもんです!」
「え!? そうなの?」
「はい。殆ど素人みたいなものです。帝国の料理人の方が強いですね」
「そうなんだ……」
なんで料理人が強いんだよ。意味分からん。
「……ユキ! リュカ!」
俺は、慌てて叫ぶ。
「はい! 殿下!」
「リリ! リュカ! 捕まれ!!」
「シェフごめん! 後お願い!」
「殿下! お気をつけて!」
そうだよ! そうだよな!
公爵が、まず最初に狙われたんだ! 此処を狙わない筈がないんだ!
ユキが次に転移したのは、そうだ。この王国の王子の所だ。
「ユキ! リュカ!」
「はいッ!」
王子二人は、一緒に耐えていた。
あの体力のない、フラフラの身体で。
何人もの襲撃者を相手に、必死に抵抗して。部屋の隅に追いやられながらも堪えていてくれた。
リュカとユキが、あっと言う間に次々と倒して行く。
俺はそれを、せっせとバインドして部屋の外にポイッと出していく。
「王子殿下、大丈夫ですか?」
「リリアス殿下、今どこから!?」
「ああ、ユキの転移です。お怪我はありませんか?」
「ほんの、かすり傷です。大丈夫です」
王子二人共、ボロボロだな。
理解できないのか? 二人共、キョトンとしている。
『ヒール』
王子二人を白い光が包み、直ぐに消えて行った。
『クリーン』
少しは、綺麗になるだろう。
傷が治り、汚れが消えて不思議そうにしながらも、第1王子は歩み寄りながら聞いてきた。
「殿下、大叔父上は大丈夫ですか?」
「一番最初に襲撃されたんです……ああ、また何人かに襲撃されたみたいだけど、大丈夫。帝国最強の、ボクの護衛が付いてますから」
懲りずにまた、襲撃した様だがオクソールがアッサリと撃退していた。
その時、部屋の隅の陰でドサッと人が倒れる音がした。
「ユキ?」
「ああ、潜んでいた」
潜んでいた。て、ユキさん? 今、何してどうやって倒したの?
俺は、しゃがんで倒れた奴を見てみる。
「ねえ、リュカ。こいつなんだか綺麗な格好してない?」
「殿下、そうッスね。こいつは貴族ですか?」
俺とリュカがじっと見ていると、王子二人も、なんだ? と覗きに来る。
「兄上……!」
「ああ……何と言う事だ」
「お二人共、ご存知なんですか?」
「はい。大叔父上の直ぐ上のご兄弟のご子息です。私達の、従兄弟にあたります」
ま、誰であろうと、とりあえずバインドだ。
『アースバインド』
土が蔓の様に拘束していった。
王子二人はまた驚いている。
「リリ、もう大丈夫だろう。兵士達も拘束していっている。」
「うん。ユキそうだね。リュカ、怪我はない?」
「殿下、ある訳ないです」
そうか。あんなに何人も撃退しているのに、怪我は無しか。