表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

192/442

192ー二人の王子

 食事を終えて、皆で王子二人が待つ応接室に向かう。

 まあ、俺は大人しくしておこう。

 セティの案内で、部屋に入って行く。父が入ると、待っていた王子二人が立ち上がった。


「ああ、楽にしなさい。そう堅苦しくならないでほしい」

「陛下、お初にお目に掛かります。第1王子の、ウェールズ・ガルーストです。

 此度は、大変ご迷惑をお掛けし、また多大なご支援を有難う御座います。早くご挨拶したかったのですが、何年も幽閉されていた影響で体調が思わしくなく遅くなりました。お許し下さい」

 

 王国第1王子の、ウェールズ・ガルースト。

 緩いウェーブのシルバーブロンドの長い髪を一つに結んでいる。

 蒼緑の瞳が、まだ少し気怠そうだ。

 兄のフレイと同じ歳らしい。フレイとは全然体格が違う。やはり、幽閉されていた影響か、若しくは食べる物が無かったのか。いや、両方か。見るからに痩せている。着ている服のサイズがあっていない。


「お初にお目に掛かります。第2王子の、ルゼルフ・ガルーストです。

 陛下、殿下方には感謝しか御座いません。有難う御座います」


 王国第2王子の、ルゼルフ・ガルースト。

 フィオンの元婚約者だ。肩下位まである、真っ直ぐなアッシュブロンドの髪を、後ろで無造作に結んでいる。これは、短髪だったのが伸びてカットできていない感じだ。

 この王子も、深緑の瞳がまだ気怠げだ。クーファルより、1歳下らしい。やはり、痩せている。まともに食べていなかったんだろうなぁ。

 

 王国の王は、自分の息子達に対してさえこの仕打ちなのか。自分はあのお腹なのに。気の毒になってしまう。


「お初にお目に掛かります。第2側妃のエイル・ド・アーサヘイムです。リリアスの母です」


 母が綺麗なカーテシーをする。

 ちょっと待てよ? 母と第1王子と、そんなに歳が変わらないじゃないか。ビックリだ。


「帝国第2皇子の、クーファル・ド・アーサヘイムです。私は王国に来るのは二度目ですが、ウェールズ殿下にお会いするのは初めてですね。ルゼルフ殿下は、4年前にお目に掛かりましたか」

「クーファル殿下、此度もまた情けない事になりまして、お恥ずかしいです」

「ルゼルフ殿下、間に合って良かったです」

「有難う御座います」


 あー、俺の自己紹介の番だ。


「お初にお目に掛かります。第5皇子の、リリアス・ド・アーサヘイムです。

 まだお身体が、辛いのではありませんか? ご無理なさらないで下さい」


 第1王子のウェールズが、微笑む。


「噂に聞いていた以上に、お可愛らしいご聡明な皇子殿下だ。お気遣い頂き有難うございます。そして、リリアス殿下。お小さい殿下を、我が父は2度もお命を狙いました。誠に申し訳ございません」

「申し訳ございません」


 王子二人が、深く頭を下げた。


「その事は、許せる事ではない。其方達の父に、償ってもらう事になる」

「はい、当然でございます」

「はい。兄と必死で止めたのですが、幽閉されてしまい。何もできず、申し訳ありません」


 王子二人、思っていた以上に普通じゃないか? どうなんだ? 俺は分からないから、黙っておこう。


「父上、座って頂きましょう。まだお辛そうです」

「ああ。座りなさい」


 さて、何の話かな?


「陛下、殿下方、突然面会をお願いして失礼致しました」

「ああ、ウェールズ王子、堅苦しいのはやめよう。非公開の場でもあるし、普通に話してもらえるか?」

「陛下、有難う御座います」


 父の、少しの気遣いだな。うん。さっさと話そうぜ。


「実は、この後皆様で、炊き出しをして頂けると聞きました。私達も、お供させて頂けませんか?」

「クーファル……」

「父上、私ですか?」

「ああ。炊き出しに実際に行くのは、お前達だ」


 父よ、クーファルに委ねたな。


「父上……では、私の考えを申し上げます。まだ、無理ではありませんか? 止めておかれる方が、宜しいかと」

「クーファル殿下。しかし、私達はこの国の王子です。父の悪政のせいで、民達が苦しんでいただろう事は想像できます。ですので、実際にこの目で見たいのです。

 本当でしたら、私達が炊き出しをしなければならないのです。しかし、お恥ずかしながら、それだけの食料がありません。せめて、お手伝いだけでも。お願い致します」


 まぁ、気持ちは分からなくはない。だがな……


「リリ」


 え? 俺か? 俺なのか?


「リリはレピオスの弟子だろう? 見れるだろう?」


 ああ、そうだった。忘れてたよ。

 俺はじっと二人の王子を見る。


「兄さま、駄目です」

「やはりそうか」


 どんだけ食べてなかったんだ?

 自分の子供に、どうしてこんな仕打ちが出来るんだ? あの王は、狂っていたのか? あー、鑑定しておけば良かった。


「残念ですが、リリアスが駄目と判断したなら、お連れする事はできません」

「クーファル殿下。どうしてですか? 何故、リリアス殿下の判断なのですか?」

「リリ、お二人はどんな状態なのかな?」

「はい。兄さま。お二人共、栄養失調状態です。それに、幽閉されている間、身体を動かす事も出来なかったのでしょう。筋力がかなり衰えてます。ずっと立っていたり、外出したりはまだまだ駄目です」

「お分かりですか? リリアスは状態を見れるのです。そして、皇宮医師に師事しております。リリアスが駄目だと判断したのなら、駄目です」


 二人の王子が、ポカンとしている。

 小さいけどね。7歳だけどね。君達よりは知識があるんだよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ