191ー似てる?
丸投げされた俺は、夕食後の眠気に耐えながら、シェフとメニューを考えた。
まず、一人ずつ渡したい。何故なら、食べる前にクリーンをしたいからだ。
とにかく、衛生環境が悪い。悪すぎる。いや、いっその事、広範囲にクリーンするか? うん、そうしよう。面倒だ。
そして、消化が良くて、腹持ちも良くて、栄養もあって……
「殿下、アレですね」
「そうだね」
「まあ、アレを中心に色々作りますよ」
「そう? お願いできる?」
「はい。お任せ下さい」
「城の料理人達は、どうしてるの?」
「まだ、遠巻きに見ているだけですね」
「そう。辺境伯領の時とは全然違うね」
「そうですね。まあ、帝国の料理人てだけでも、壁がありますからね。それに彼等は、自分達が1番だと思ってますから」
「そうなの?」
「はい。プライドだそうですよ」
「そんなプライドなんて、いらないね」
「まったくです。料理人なら、知らない料理には、興味を持って当たり前なんですけどね。殿下、驚きますよ? 城の厨房には香辛料がないんですよ」
「え、そうなの!? じゃあ、味付けはどうすんの?」
「塩味オンリーです」
「し……し……信じらんないッ!!」
「でしょう? なのに、学ぼうとしないんです。理解できませんね」
はぁ!? 何がプライドだよ! 馬鹿じゃねーの!?
「シェフ、大丈夫? ボク、料理人に言おうか?」
「いえ、殿下。上の人に言われないと出来ないなら、しなくて良いです」
「シェフ、厳しいね……」
「殿下、私達は教えに来たのではありません。何もこちらから言って、無理矢理してもらう必要はありません」
「まあ、そうだけどさ」
「私なら、新しい料理を覚える機会なんて、逃しませんけどね」
「ああ、そうだね。料理人として、何を最優先するかだね」
「はい。そうです。しかしまあ、今回はニル様や侍女の人達にも、手伝ってもらいます」
「うん。それが良いよ」
さて、俺はもう限界だ。
「シェフ、ごめんね。ボクもう眠いや」
「ああ、殿下。遅くまで申し訳ありません。有難うございました」
「ううん、大丈夫。じゃあ、明日ね。焦らなくていいからね」
「はい。分かりました」
さてさて、部屋に戻って寝よう。
睡魔に耐えながら、フラフラ歩く。
「殿下、大丈夫ですか? もう、眠いでしょう?」
「うん、オク。限界……」
「殿下、抱っこしましょう」
「ええー、もう7歳だから……」
「意味が分かりませんが?」
「だからね、7歳だから重いよ?」
「大丈夫です。失礼します」
そう言って、オクソールに抱っこされて、俺は秒で寝落ちした。
「……んん〜」
「殿下、おはようございます」
「ニル……あれ? 途中から記憶がないや」
「はい、昨夜は久しぶりにオクソール様が」
「ああ……そうだった」
「殿下、お着替えして下さい。お食事に」
「うん。分かった」
俺は顔を洗って、着替える。
さあ、食堂に行って朝食だ。
「ねえ、ニル」
「はい、何でしょう?」
ニルと一緒に食堂に向かっている。ユキはもう厨房に行った。
「ニルも、シェフを手伝うんでしょう?」
「はい。この後手伝います。ですので、お食事の後はオクソール様か、リュカが来るまでお待ち下さい」
「うん、分かった」
食堂に入ると、もうクーファルがいた。その後、父と母が来て皆で朝食を食べた。
食事の後、用意ができ次第炊き出しに向かう。クーファルも参加する。もちろん騎士団もだ。そこで思わぬ問題が勃発……
「いいえ、譲りません!」
「母さま……」
母が自分も、炊き出しに参加すると言ってきかないんだ。
「でも、母さま。帝国とは違いますから」
「リリ、分かっているわよ?」
「母さま、汚いですよ? 臭いですよ?」
「リリ……そんなになの?」
「はい、ですから母さま」
頼むよ、母よ。
「いいえ、譲りません!」
「母さま〜!」
「リリ、諦めなさい」
「父さま、父さまも母さまを止めて下さい」
「リリ。エイルはね、こうなったら言う事なんか、聞いてくれないよ」
「はぁ〜……母さま、じゃあボクとオクの側から、絶対に離れないと約束して下さい」
「分かったわ、リリ。約束します」
ハァ〜……母は頑固だ。思ったよりお転婆さんだった。
「リリそっくりだね」
「兄さま、何がですか?」
「エイル様とリリは、そっくりだ」
「あら、クーファル殿下。殿下も皇后様と、そっくりですわよ?」
「え? そうですか?」
「ええ。ご兄弟の中で、1番似てらっしゃるんじゃないかしら?」
「あー……そうですか」
「え? 兄さま。嫌なのですか?」
「いや、リリ。兄様はあんなにか?」
「え? あんなにとは? 皇后さまは、とてもお優しいですよ?」
「リリ……リリはまだ分かっていないね」
「父さま、そうですか?」
「ああ。セティでさえ敵わないからね」
「え……」
マジか!? 皇后て、そんな感じなのか!? もしかしてラスボスか!?
クーファル、そっくりじゃねーか。
まあ、それはさておき。
俺も、何か手伝えないかなぁ。
「失礼致します」
「セティ、どうした?」
「はい、陛下。お食事が終わられましたら、王子殿下お二人が皆様と面会したいと仰ってます」
「分かった。応接室で待って頂くように。すぐ行く」
「承知しました」
なんだ? 夕食を一緒にするんじゃなかったのか?
ま、俺は関係ないさー。
「……モグモグモグ」
「リリ、関係あるよ?」
「……ん……」
「今、セティが皆様と言っていただろう?」
マジかよ……