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191/442

191ー似てる?

 丸投げされた俺は、夕食後の眠気に耐えながら、シェフとメニューを考えた。

 まず、一人ずつ渡したい。何故なら、食べる前にクリーンをしたいからだ。

 とにかく、衛生環境が悪い。悪すぎる。いや、いっその事、広範囲にクリーンするか? うん、そうしよう。面倒だ。

 そして、消化が良くて、腹持ちも良くて、栄養もあって……


「殿下、アレですね」

「そうだね」

「まあ、アレを中心に色々作りますよ」

「そう? お願いできる?」

「はい。お任せ下さい」

「城の料理人達は、どうしてるの?」

「まだ、遠巻きに見ているだけですね」

「そう。辺境伯領の時とは全然違うね」

「そうですね。まあ、帝国の料理人てだけでも、壁がありますからね。それに彼等は、自分達が1番だと思ってますから」

「そうなの?」

「はい。プライドだそうですよ」

「そんなプライドなんて、いらないね」

「まったくです。料理人なら、知らない料理には、興味を持って当たり前なんですけどね。殿下、驚きますよ? 城の厨房には香辛料がないんですよ」

「え、そうなの!? じゃあ、味付けはどうすんの?」

「塩味オンリーです」

「し……し……信じらんないッ!!」

「でしょう? なのに、学ぼうとしないんです。理解できませんね」


 はぁ!? 何がプライドだよ! 馬鹿じゃねーの!?


「シェフ、大丈夫? ボク、料理人に言おうか?」

「いえ、殿下。上の人に言われないと出来ないなら、しなくて良いです」

「シェフ、厳しいね……」

「殿下、私達は教えに来たのではありません。何もこちらから言って、無理矢理してもらう必要はありません」

「まあ、そうだけどさ」

「私なら、新しい料理を覚える機会なんて、逃しませんけどね」

「ああ、そうだね。料理人として、何を最優先するかだね」

「はい。そうです。しかしまあ、今回はニル様や侍女の人達にも、手伝ってもらいます」

「うん。それが良いよ」


 さて、俺はもう限界だ。


「シェフ、ごめんね。ボクもう眠いや」

「ああ、殿下。遅くまで申し訳ありません。有難うございました」

「ううん、大丈夫。じゃあ、明日ね。焦らなくていいからね」

「はい。分かりました」


 さてさて、部屋に戻って寝よう。



 睡魔に耐えながら、フラフラ歩く。


「殿下、大丈夫ですか? もう、眠いでしょう?」

「うん、オク。限界……」

「殿下、抱っこしましょう」

「ええー、もう7歳だから……」

「意味が分かりませんが?」

「だからね、7歳だから重いよ?」

「大丈夫です。失礼します」


 そう言って、オクソールに抱っこされて、俺は秒で寝落ちした。



「……んん〜」

「殿下、おはようございます」

「ニル……あれ? 途中から記憶がないや」

「はい、昨夜は久しぶりにオクソール様が」

「ああ……そうだった」

「殿下、お着替えして下さい。お食事に」

「うん。分かった」


 俺は顔を洗って、着替える。

 さあ、食堂に行って朝食だ。


「ねえ、ニル」

「はい、何でしょう?」


 ニルと一緒に食堂に向かっている。ユキはもう厨房に行った。


「ニルも、シェフを手伝うんでしょう?」

「はい。この後手伝います。ですので、お食事の後はオクソール様か、リュカが来るまでお待ち下さい」

「うん、分かった」


 食堂に入ると、もうクーファルがいた。その後、父と母が来て皆で朝食を食べた。

 食事の後、用意ができ次第炊き出しに向かう。クーファルも参加する。もちろん騎士団もだ。そこで思わぬ問題が勃発……



「いいえ、譲りません!」

「母さま……」


 母が自分も、炊き出しに参加すると言ってきかないんだ。


「でも、母さま。帝国とは違いますから」

「リリ、分かっているわよ?」

「母さま、汚いですよ? 臭いですよ?」

「リリ……そんなになの?」

「はい、ですから母さま」


 頼むよ、母よ。


「いいえ、譲りません!」

「母さま〜!」

「リリ、諦めなさい」

「父さま、父さまも母さまを止めて下さい」

「リリ。エイルはね、こうなったら言う事なんか、聞いてくれないよ」

「はぁ〜……母さま、じゃあボクとオクの側から、絶対に離れないと約束して下さい」

「分かったわ、リリ。約束します」


 ハァ〜……母は頑固だ。思ったよりお転婆さんだった。


「リリそっくりだね」

「兄さま、何がですか?」

「エイル様とリリは、そっくりだ」

「あら、クーファル殿下。殿下も皇后様と、そっくりですわよ?」

「え? そうですか?」

「ええ。ご兄弟の中で、1番似てらっしゃるんじゃないかしら?」

「あー……そうですか」

「え? 兄さま。嫌なのですか?」

「いや、リリ。兄様はあんなにか?」

「え? あんなにとは? 皇后さまは、とてもお優しいですよ?」

「リリ……リリはまだ分かっていないね」

「父さま、そうですか?」

「ああ。セティでさえ敵わないからね」

「え……」


 マジか!? 皇后て、そんな感じなのか!? もしかしてラスボスか!?

 クーファル、そっくりじゃねーか。


 まあ、それはさておき。

 俺も、何か手伝えないかなぁ。


「失礼致します」

「セティ、どうした?」

「はい、陛下。お食事が終わられましたら、王子殿下お二人が皆様と面会したいと仰ってます」

「分かった。応接室で待って頂くように。すぐ行く」

「承知しました」


 なんだ? 夕食を一緒にするんじゃなかったのか?

 ま、俺は関係ないさー。


「……モグモグモグ」

「リリ、関係あるよ?」

「……ん……」

「今、セティが皆様と言っていただろう?」


 マジかよ……


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― 新着の感想 ―
[一言] リリのお母様かなりパワフルですね! 侯爵令嬢なのに…意外と肝が座ってる感じ。 面白いですね。 そしてシェフの料理哲学、素晴らしい…気持ちはわかる…! うまい料理は再現したい、たらふく自力で食…
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