183ー合流
「リリ! 無事で良かったわ!」
「母さま! 母さまもご無事で。疲れてませんか?」
「大丈夫よ。リリ、本当に心配したわ」
城の一室に通されると、母がソワソワしながら待っていてくれた。
もちろん、父やクーファルもいる。
「リリ、色々やっていた様じゃないか」
「兄さま、兄さまだって」
「おや、私はリリ程じゃないさ」
「やっぱり、クーファル兄さまは頼りになります!」
「リリ、父様を無視しないでくれないか?」
「ご無事で良かったです」
「リリ、冷たいね」
出たよ。いくつになっても、少年の心の父だよ。
「父さま、道中見られましたか? 民の様子を」
「ああ。酷いものだった」
「はい、父さま。驚きました」
「想像以上だった」
「父さま、あの商人もです。」
「商人?」
「陛下、ヘリウス・マールンの事です。リリアス殿下が啖呵をお切りになって。それはもう、ご立派でした」
「ソール、やめて」
「へえ、リリが」
「兄さま、会われましたか?」
「いや、私達は会っていない」
「兄さま、あの爆弾を用意した商人です」
「何……?」
「お力になりましょう、と言っていました」
「ククク……何か勘違いしているのかな? 目に物を見せてやろうではないか」
「クーファル殿下。ユキが大きくなって、背に前足を置いて押し倒したのです」
「ソール、それは見たかった」
「はい、もうスッキリしました」
「アハハハ、ソールも嫌いだったの?」
「リリアス殿下、あれは胡散臭いでしょう?」
「うん、かなりね」
「しかし殿下、彼が商人や兵士、民の第1王子派をまとめているのですよ」
「ソール、じゃあ、貴族は誰がまとめているの?」
「フロプト・ガルースト公爵、前王弟です」
「公爵で前王弟……その人に気に入られたいんじゃないの?」
「その、商人がかい?」
「はい、兄さま」
「リリアス殿下、私もそう思います。元々、ガルースト公爵家の出入り商人だった様です」
「ふーん……」
「リリ?」
「兄さま。なんか、商人のマールンが胡散臭かったので、そのガルースト公爵も信用できないと言うか」
「あー、そうだね。しかし、王族がついているのに、王子は幽閉されたんだね」
「クーファル殿下、公爵は後見人ではなかったそうです」
「今の王の叔父なのにか?」
「はい、クーファル殿下。しかし王子ですし、後見人と言うのも。変な話です。
帝国では、皇子殿下に後見人など必要ありませんので」
しかし、ソールはどこまで調べてるんだ? スゲーな。セティも顔負けだ。
「リリアス殿下、これくらいまだまだですよ」
「え? ソール、まだもっと調べてある、て事?」
「当然です。やるなら、徹底的にやりませんと」
コエーよ! ソールが1番怖い!
今、ソールの目が光ったよね。キラン! て、光ったぞ!
「リリアス殿下、私は怖くありませんよ?」
「う、うん」
ひょえぇ〜!! 俺、ソールには反抗しない様にしよう。
「さて、クーファル、リリアス。これからだけどね」
「はい、父上」
「リリアスや私達の食事は、シェフが作った物しか食べないと伝えてある」
「はい、父さま」
「殿下、お茶や、菓子もニル達侍女かシェフが出した物以外は、口になさいません様に」
「うん。ソール、大丈夫。ボク自分のりんごジュース持ち歩いているから」
「クフッ……」
あ、リュカが笑って、オクに叩かれてる。こう言うの、安心するわ。日常て感じでさ。
「ああ、りんごジュースね」
「はい、兄さま」
「リリはマジックバッグを、持ち歩いているのか?」
「はい、兄さま。見ますか?」
「どれ?」
「これです」
俺は上着をめくって、ベルトにつけた小さいポーチの様な飾りを見せる。
クーファルだけでなく、父や母も珍しげに見ている。
「こんなに、小さいのか?」
「はい、兄さま。めちゃ便利ですよ」
「どれだけ入るんだ?」
「ん〜……兄さま、分かりません」
「リリ、分からない?」
「はい、まだいっぱいに、なった事がないので」
「今は何が入っているんだ?」
「えっと……りんごジュースいっぱいと、バーガーいっぱいと、おにぎりいっぱいと……あ、クッキーもあります。あと毒消しとか薬湯一式入ってます」
「リリ、食べ物中心なんだね」
「はい、兄さま。ニルとシェフとレピオスが、入れてくれました」
「ああ、なるほど。クフフ」
「リリ、母様も欲しいわ」
「いいですよ。すぐに作れますから」
マジックバッグくらい、いつでも作るよ。もう慣れっこだからな。
「リリ、そうなのか?」
「はい、父さま。なんでも大丈夫ですが、ただ材質は丈夫な物にして下さい。これ、飾りに見えますが、実は魔物の皮で出来ています」
「え、リリ。見えないね」
「兄さま、そうでしょう? ニルが見つけてきてくれました」
「まあ、リリ。凄いわ。母さまも、何か探すから作ってくれるかしら?」
「はい、母さま」
「リリ、いつの間にそんな物を作っていたんだ?」
「父さま、辺境伯領に行く時です」
「ああ、あの時は色々作っていたね」
「はい。マジックバッグは沢山作ったので、慣れっこです」
「リリ、今回の魔道具も素晴らしいよ」
「え、兄さま。どれですか?」
「離れた所でも会話できる、ピアス型のだよ」
「ああ、あれはでも即席で作ったので、まだまだです」
「そうなのか?」
「はい。みんなの防御の方を優先したので、まだまだ改良します」
「ああ、ネックレスだね。騎士団が喜んでいたよ」
「また、帰ったら第1騎士団に言われます」
「何を?」
「第2騎士団ばかりズルいと」
「それは仕方ないさ」
「兄さま、そうなんですけど。でも、帰ったら皆んなの分も作ります」
「そうなのか?」
「はい。騎士団には必要な物だと思いますから」
「リリのお陰で、騎士団は無敵だよ」
「そんな事ないです。帝国の騎士団は、元々みんなちゃんと強いです」
「ああ。努力の賜物だ」
「陛下、殿下方、夕食の準備が出来ました」
セティだ。セティも無事で元気そうでよかった。
「じゃあ、リリ行こう」
「はい、兄さま」
俺達は、食事を取りに別の部屋に移動する。
城の中なのに、姿が見えない誰かから、見られている。視線をビンビン感じるぜ。
ウザイ。超ウザイ。さっさと出てきたら、返り討ちにしてやるのに。