180 閑話ー光の精霊祭
Merry Xmasです。
読んで頂き有難うございます。
クリスマスらしいお話をと思ったのですが、ちょっと暗くなってしまいました。
苦手な方はどうぞスルーして下さい。
たぶんさ、初代皇帝は記念日にしたかったんじゃないかな?
まだ魔物の脅威の残る殺伐とした中で、少しでも何か楽しい事があれば……みたいなさ。
こっちの世界の12月25日。1日中、帝国は精霊祭で賑わう。街中に、白い花が飾られ光の魔石の光で煌めく。
と、言っても毎年雪が積もるので、雪祭りみたいになっているが。
実は飾られている白い花も造花だ。いくらなんでも真冬に花は厳しい。
この日は大聖堂が開放され、城の珍しい食事が無料で振る舞われ、身分に関係なく大人も子供も精霊祭を楽しむ。
そして、前日の24日。この日は子供も少しだけ遅い時間まで起きていられる。
この日は子供が主役だからね。
24日は前夜祭みたいなもんだ。
10歳になって、魔力量と属性を見てもらった子供達が主役のイベントだ。
24日25日は、各街の教会でも同じ事をしている。帝国全土のお祭りだ。
24日の夕暮れ時から、それは始まる。
帝都では大聖堂が開放され、入り口に続く道の両側に光の魔石が等間隔に灯される。
薄っすらと白い雪が積もる中、光が幻想的に煌めく。
その道を、10歳の子供達が皆お揃いの白い衣装に白いマント、白いフワフワの帽子を被って騎士団の隊員と一人ずつ手を繋いで一緒に並んで歩く。騎士団はもう片方の手に光の魔石の灯りを持ち、子供達は白い造花を持って。
この日は騎士達も、儀礼用の白い隊服に、白いマント、白い羽根飾りのついた広いツバの帽子だ。
俺は先頭で、オクソールと手を繋ぐ。
オクソールよ、反則だ。お前、カッコ良すぎるだろ。
俺の後ろは、レイだ。リュカと手を繋いでいる。
細かい事を言うと、オクソールもリュカも騎士団じゃないんだけどな。
レイの後ろは、ディアーナだ。第1騎士団団長と手を繋いでいる。
その後ろがアースだ。第2騎士団団長と手を繋いでいる。
「殿下、そろそろですよ」
「うん。オクソールは毎年出てるの?」
「いいえ。今年が初めてです。実はこのマントと帽子は借り物です」
「そうなの!?」
「はい。1年に1度ですから。リュカもですよ」
そう言われて、俺は後ろのリュカを見る。
「あらら。お帽子がちょっと大きいんだね。リュカはお顔が小さいから」
「殿下、言わないで下さい。ずり落ちて来るんです」
「ぷぷぷ……リリ殿下、笑わせないで下さい。さっきから何度もリュカさんの帽子が落ちかけていて、笑いを堪えるのに必死なんです」
「あらら。レイ災難だね」
「殿下、進みますよ」
オクソールと手を繋ぎ、大聖堂までの僅かな道をゆっくりと進む。
大聖堂の鐘が鳴り響く。
先導する大聖堂の司祭達が、前をゆっくりと進む。
両脇には、白の隊服の騎士団が整列して見守る。
この世界、争い事が絶えない。命の価値が低い。しかし、そんな世界でも無事に10歳になったと、見守る民達や光の神に報告する。
オクソールと手を繋いでゆっくりと進む。後ろにはリュカもいる。
この世界で前世を思い出したのが、3歳の時だ。実の姉に命を狙われ湖に突き落とされた。
あれから、7年。おれはやっと10歳になった。何度も命を狙われた。何度も泣いた。何度も自分の無力さに悔しい思いをした。
だが。この7年間、俺はそれ以上に幸せだった。恵まれていた。頑張って生きてきたよ。
前世のあんな事故なんてなく、平和に日常を過ごして妻と一緒に歳をとり息子達の成長を見ていたかった。
小児科医として、少しでも病気に苦しむ子供達の力になりたかった。
それはもう叶わない。
俺はこの世界で生きていかなければならない。
だからさ、妻よ息子よ。母よ姉よ。こっちの世界から祈らせてくれ。
どうか、皆幸せでいてくれ。生き抜いてくれ。届かないけど、俺はこっちの世界からずっと祈ってるよ。
「殿下……」
「オク……大丈夫。グシュ……」
先導する司祭達が、大聖堂に入って行く。
1番奥の主祭壇の前で、大司教と父である皇帝が待つ。
皇帝に向かって右側に、皇后、第1側妃、俺の母の第2側妃が並ぶ。
左側に、大司教、そして兄弟が順に並んでいる。
その前の信徒席には、帝国の貴族達が見守っている。
今年10歳の子供が、騎士と手を繋ぎゆっくりとその間を進む。
どんな世界になっても、騎士は子供達の手を離さない。騎士は皆を守り続ける。そして、子供はもちろん皆の前には未来しかないんだと言う意味があるらしい。
初代皇帝て、凄いよね。やるよね。尊敬するわ。
そして、子供達は順に皇帝から小さな白い魔石のついたネックレスをもらう。
なんと、これも建国以来630年間続けられてきた。代々の皇族の光属性を持った者が魔石に光属性を付与している。毎年毎年少しずつ、その年の10歳になる帝国中の子供の人数分を作製する。
俺の父、皇帝も1年かけて作っていた。
直ぐに丸投げする父が、これは黙々と何も言わずに作っていた。譲位するまでは、ちゃんと自分で作り続けるそうだ。
皆が皇帝に、ネックレスを貰い無事に終わりだな、と思った時に思わぬサプライズが起こった。
大聖堂の中も外も、キラキラとした光に包まれた。
主祭壇の光の神の像が白い光で包まれた。
『リリ、無事に10歳になってよかった。リリの前の世界だとXmasだったかな? リリへ僕からのプレゼントだ。
リリ、Merry Xmas! これからも、元気で……ゆっくり大人になってよ』
「ルー……有難う」
「殿下、これはルー様なのですか?」
「うん、オク。プレゼントだって」
「リリ!!」
「リリ!」
皇帝と母の第2側妃が駆け寄ってきて父に抱き上げられた。この場でまさか父に抱き上げられるとは思わなかった。
「父さま、母さま」
「あれは、何だ? ルー様かい?」
「はい。ルーです」
「リリが光に溶けてしまうかと思ったわ」
「母さま、ルーがボクにプレゼントだそうです。サプライズですね」
それから兄弟達が皆走り寄ってきた。フィオンがいたらきっと1番に抱き締めてくれただろう。
「リリ!」
「フレイ兄さま」
「リリ」
「クーファル兄さま」
「リリ」
「テュール兄さま」
「リリ! 可愛い!」
「フォルセ兄さま」
「父さま、母さま、兄さま! オク、リュカ! 皆んなみーんな! 大好きです~!!」
「あらあら、リリアス」
「リリアス殿下……グスッ」
皇后様と第1側妃のナリーシア様だ。
「ルー! ありがとう~!」
俺が叫ぶと、また大聖堂にキラキラと光が降り注いだ。
A very Merry Christmas And a happy new year
Let's hope it's a good one
Without any fear