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177ー畑

 さて、朝食を食べた町の人達を連れて、畑に……いや、畑だった場所に来ている。

 土に触ってみる。カチカチでパサパサだ。


「えー、聞いて下さーい!」


 俺は声を張る。


「リリ様、リリ様。これに乗って下さい。小さいから」


 むむむ! リュカまた余計な事言ったぞ。ブハハ!

 いつもリュカの一言で、気持ちが和む。ある意味、才能だな。

 リュカが持ってきた箱に、俺はピョンと乗った。


「聞いて下さーい! ちゅうもーく!」


 ガヤガヤしていた人達がやっとこっちを見た。


「えっと、まず自己紹介しまーす! ボク達は、帝国から来た商人です!

 第1王子から要請があって、会うために来ました!」


 ザワザワとしだす。要請なんて、されてないけどな。


「王国では食べ物が不足しているから、何とかしてほしいとお願いされましたー!

 えっと、ボク達は帝国の人間です。だから、皆魔法が使えます。驚かないでね!

 みんなには、これから畑を耕してもらいまーす! 朝たくさん食べたよねー? その分、働いてもらいまーす!」


 その時、一人の男性が声をあげた。


「坊ちゃん、ここいらの畑はもう駄目なんだ。種を撒いてもまともに育たないんだ」

「はいはい。昨夜おっちゃんから聞きましたー。

 あのね、この中で家畜を飼ってる人はいない?」

「うち飼っていたけど、食えなくて手離したんだ」

「ワラは残ってる?」

「ああ、そのまんまあるぞ」

「じゃあ、それ持ってきて」


 俺は、畑の隅に穴を掘る。もちろん魔法でだ。


 おおーー! と声があがる。


「坊ちゃん、スゲーな!」

「おっちゃん、まだまだだよ」


 そこにシェフが生ごみやら何やらを持ってきた。


「おっちゃん、落ち葉を集めてこの穴に入れてもらって」

「おう!」


 おっちゃんの指示で、女性達が落ち葉を集めにバラけて行く。


「さて、やるぞ」

「リリ様、程々で」

「オク、分かってる」


 俺は両手を畑に向けて出す。土魔法で一気に表面の土を耕して行く。


「おー…………!!」


 あれ? おっちゃん固まったか?


「坊ちゃん、穴がいっぱいになりましたよ!」

「シェフ、分かった。混ぜといて」

「はい、分かりました!」


 シェフが魔法でガンガン混ぜる。


「ニル、少しだけ水を足しておいて」

「はい、リリ様」


 シェフが混ぜている横から、ニルが水魔法で水を出す。


「もう、言葉が出ねーよ」

「おっちゃん、これも帝国だと普通の事なんだ」

「そうか……」

「でもね、やってる事は魔法じゃなくても出来る事なんだよ。今はただ、早くしたいから魔法を使ってるだけ。

 おっちゃん、考える事を止めたら駄目なんだ。

 なんで、作物が育たないか? なんで? どうして? て、考えて調べて試行錯誤しなきゃ、進歩はないんだ。

 今、ボク達がやっている事は、ボク達よりずっとずっと昔に生きていた人達が、考え出した事なんだ」

「魔法が使えない俺達にも出来るのか?」

「当たり前じゃない! 時間は掛かるけどね。毎日少しずつ、畑を耕して栄養分を混ぜて土を甦らせるんだ」


 俺は、穴に移動する。


「よく聞いて! この穴にね、落ち葉や生ごみを入れて、毎日かき混ぜてほしいんだ。今は時間がないから、魔法でやっちゃうけど」


 そう言って、俺は穴に手をかざす。少し発酵させたいんだ。だから、少し様子を見ながら魔力を流していく。


「うん、こんなもんかな。シェフどう?」

「はい、いい感じですね」

「みんな、この状態を覚えておいて。落ち葉と少しの生ごみとほんの少しの水分で、時間を掛けたらこうなるから。

 そうだな、本当は半年から9ヶ月位かかるかな? 毎日、混ぜてね。」

「坊ちゃん、分かったがこれをどうするんだ?」

「これはね、土のご飯なの。これからみんなで、これを畑に撒いて土と混ぜてもらいます」

「よし! やっと俺達の出番だな! 任せとけ!」


 町の男達が、手に農具を持って畑に出ていく。朝しっかり食べたから、みんな元気だな!

 

「シェフ、沢山持ってきた?」

「ええ、なんせ今回私は、マジックバッグ2個ですからね。」

「アハハハ、そうだったね」

「で……んん。坊ちゃんどうします?」


 シェフも今、殿下て言いかけたな。


「とりあえず、ジャガイモとさつまいも。あと豆類だね。麦は後で植えれる様に、置いて行こう」

「了解です」


 シェフは耕している男達に、畝を作る様指示を出して行く。


「ニル、ジャガイモとさつまいもを植えてもらってから、水をやってほしい」

「はい、分かりました」


 どんどん畝を作っていく。その後から、ジャガイモとサツマイモを植えていく。

 そして、最後はニルの水やりだ。


「坊ちゃん、藁はどうするんだ?」


 ああ、忘れてたぜ。


「芽が出て少し大きくなったら、藁をひいてほしいんだ」


 こんな感じ……と、説明する。


「分かった。しかし……帝国は何もかも進んでいるんだな」

「おっちゃん、違うよ」

「坊ちゃん?」

「王国が退化したんだ。元々、王国は恵まれた豊かな土地だった。だから、考えて試行錯誤する必要がなかったんだ。

 でも、帝国は違った。魔物に荒らされた痩せた土地しかなかった。だから、考えたんだ。努力したんだ。

 今のこの国の王は、努力をしない。奪う事しか考えない。それじゃあ、駄目だ」

「そうか……」

「だから、おっちゃん。考えなきゃ駄目だよ。今も、この状況をどうするか。考えるんだよ。

 何も出来ないじゃないんだ。何もしていないんだ」

「坊ちゃん……有難う!」


 畑は任せても大丈夫かな。

 じゃあ、俺は次だ。


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