168ーミスリル
「殿下! 凄いです! ここら辺全部です!」
「ああ、少し貰えるかな?」
「はい! 殿下どうぞ。」
鉱夫がクーファルに、手にのる位の塊を持って来た。
「リリ、間違いないね。素晴らしい」
「兄さま、他の鉱山も鑑定してみる必要があるかも知れませんね」
「そうなのか?」
「はい。ここは鉱脈の南端だと思います。まだ北に続いている筈です」
「それは凄いな」
「ここからとれる分で、騎士団の武器位は余裕ですよ」
俺がそう言うと、一緒に来ていた騎士団員から声があがった。
「で、殿下!」
「ん? リュカ何?」
「それって、騎士団の武器がミスリル製になるって事ですか!?」
「まだ、分かんないよ? それ位の量は余裕である、て話だよ。」
――おおー!!
と、騎士団員は期待の声を上げる。
「まあ、父上に報告してからだ。しかし、フレイ兄上が、黙ってないだろうね」
「本当ですね。フレイ兄さまならゴリ押ししそうです」
そんな話をしている間にも、鉱夫達は掘っている。
「この先もあるんだけど、多分硬いんだよ。みんなの中に、地属性魔法を使える人はいるかな?」
「はい、もちろんです。何人もいます」
「火はもちろんだけど、水も使わないでね。水に反応して爆発する事もあるからね。だから、使うとしたら風か土なんだ。
最初だけ、何度か繰り返さないと崩れないけど、硬い岩盤が崩れたら後は普通に掘れるでしょ?」
「はい、殿下!」
「殿下! これ!」
「ん? なぁに?」
「この鉱山の地図です」
掘っていた鉱夫の一人が、ポッケから地図を取り出して見せた。
「どこを坑道が通っているか、書かれています! 殿下、鉱脈のある場所に印をつけてもらえませんか?」
「うん。分かった」
なるほどね、そうしたら探さなくても分かるよな。こんな地図があるんだな。
俺は鑑定しながら、地図に書き込んでいった。
「リリ、奥はほとんどそうなんだね」
クーファルが印をつけた地図を覗きながら、言った。
そうなんだ。鉱夫が硬いからと言って、掘っていなかった奥にミスリルがある。
「はい、兄さま。硬くて掘ってなかった様ですから」
「ここだけでも、かなりの量だ」
「殿下、輸出も視野に入れませんと」
「ああ、ソール。まぁでも、帝国内で使ってからだね」
まあ、そんな事は父やクーファルにお任せだ。
「兄さま、出ましょう」
「ああ、リリ。お前達も、一度外に出よう」
まだ掘っている鉱夫達に、声を掛ける。
「うん、みんなお昼食べなきゃ」
「ブフフッ!」
「リュカ、何?」
「殿下、すみません。でも、殿下の基準は食事なんですね」
「当たり前じゃない! 食べないと動けないし、頭も動かない。リュカも一緒に食べるよ」
坑道から出てきて、シェフのいる中央へ向かう。
「殿下、お昼ですよ! 皆さんも、一緒に食べて下さい!」
「シェフ、ありがとう! お腹すいちゃった!」
そうだよ、ちゃんとしっかり食べなきゃな!
捕らえた人達は、食べてんのかな? 食べたらまた鑑定してみよう。
「オク、リュカ。捕らえた人達にも食事出してる?」
「はい、殿下が昨日言われてからは、ちゃんと食事は出してますよ」
「そう、良かった」
「リリ、また鑑定するのかい?」
「はい、兄さま。食べたらします。何か引っかかりますよね?」
「ああ、そうだな」
とにかく、食べよう。
考えるのにも糖分は必要だ。
食べ進めながら、俺は考える。
まず……爆発の現場を見て良かった。見てなかったら、気付けなかっただろう。
わざわざ2個も爆弾を仕掛けてるんだ。まだ何か隠しているだろう。多分な。
やはり、鑑定し直しだな。
その時、ポンッとルーが現れた。
「だからな、リリ。使わないから精度が上がらないんだ」
「うん、ルー」
「なんでもいいから、鑑定する事だ。サーチは、だいぶ慣れたな」
「んー、そうかな?」
「リリ、ここに来てから常時サーチしたままにしているだろ?」
「うん。何があるか分かんないから」
「そんな感じで、鑑定もなんでもいいから、使っていくんだな」
「分かった」
「まだリリの鑑定は、MAXじゃあないからな」
「そっか……」
「いいか、しっかり見るんだぞ。リリが、引っ掛かる事を見ようとすれば、見えてくるからな」
「うん。分かったよ」
ポンッとルーが消えた。
きっとルーは分かってるんだ。
いつも、そうだった。でも、答えを教えてはくれない。
俺が導き出すまでヒントをくれて、黙って待ってる感じだ。
必要以上には、手を出さない。
ああ、そうか。王国に対してもそうなんだ。
必要以上に手出しをしてはいけない。
王国の事を、他国の俺たちが手出しし過ぎては駄目なんだ。
んー、難しい。
「ごちそうさまでした! 兄さま、見に行ってきます!」
「リリ、待ちなさい。私も行くから」
「はい、兄さま」
クーファルとソール、オクソールとリュカも一緒に、捕らえた者達の仮設テントへ向かう。
見張りをしている騎士団の隊員が、開けてくれる。
「お昼は食べたかな?」
俺は、捕らえた男達に話しかけた。
「はい、頂きました」
クーファルをチラッと見る。話を続けていてほしいと言う合図だ。
その間に、俺は鑑定する。
「今、現場を見て来たんだけどね、爆弾を2箇所も仕掛けたんだな?」
クーファルが話をする。
『鑑定』
見逃してないか? 何を隠しているんだ?
じっくり……ゆっくり……
俺は鑑定する。
捕虜の一人が、話し出した。
「最初に仕掛けた小さいのが、不発だったんだ。だから……」