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167ー爆発現場

「リリ、4年もよくもったよ」

「ルー、でもね……」

「ああ。分かるけどな」


 ルーが俺の肩にとまった。


「リリ、何だい?」

「兄さま、王は自業自得です。でも、今飢えている人達がいるんです。元兵士だった大人でさえ、あれです。

 じゃあ、子供は? 女の人は? お年寄りは? 何の罪もない人達が、飢えて苦しんでる。放っておけないです」

「リリ、本当に何も罪はないのかな?」

「兄さま……?」

「私が王国に乗り込んだのは、4年も前だ。あの捕らえた者達も、言っていただろう? 王が悪いと分かっていたと。

 じゃあ、こうなるまでに何故何もしなかった? 民達は何をしていたんだ?

 いくら王だと言っても、民が団結して何かを起こしていれば、こうはなっていなかったかも知れないだろう?

 第1王子が幽閉されるのを、阻止できたかも知れない。もしかしたら、譲位させられたかも知れない。

 私が王国に乗り込んだ事が、良い機会だったんだ。

 民も考える事、行動する事を放棄したんだよ。それも罪だ。

 帝国の民達は黙ってはいない。

 貴族の邸の前にゴミを捨てたりするだろう? そうやって、考えて意思表示をして行動できるんだ」


 んん〜、そうかも知れないが……

 でも……でもだ!

 今飢えて苦しんでる人を、無視できない。


「ま、とにかく彼等を城に護送だ。父上に相談して、それからだよ」

「じゃ、僕は先に少し報告しておくよ」

「ルー様、お願いします」

「ああ、任せろ」


 そしてルーはまたポンッと消えた。

 んー、なんだかスッキリしない。

 王制てのに、馴染みがないからな。いや帝国だって君主制だった。多種族多民族国家を皇帝である父が治めている。

 上に立つ者に因って違うという事か。



「リリ、それと昨日言っていた鉱山の調査だけどね」

「あ、兄さま。忘れてました!」


 そうだった! 鉱山の調査をしたいんだ!


「兄さま、ボク鉱山に入りたいです!」

「リリ、またそんな事を」

「だって兄さま。ボクが入らないと、見つけられませんよ?」

「あー、そうだなぁ」

「兄さま、鼻と口を塞いで入りましょう」

「そうだなぁ。鉱夫も何人か連れて入りたいね。爆発現場も見たいしね」


 そうして、俺達は翌朝から鉱山内の調査をする事にした。

 クーファルと、ソール、オクソールにリュカ、ユキも参加だ。

 後は、騎士団から数名と、鉱夫が2名。


 先ずは、爆発現場の検証だ。

 ユキの嗅覚が、役に立つだろう。


 鉱山に入ると、そう広くはない坑道が続いている。

 彼方此方に、採掘した跡がある。

 中央に向かって歩いて行くと、少し開けた場所に出た。


「ユキ、ここが爆発現場らしいんだけど、何か分かる?」

「ああ……」


 ユキが、しばらく爆発現場をウロウロして、隅々まで匂っていた。


「リリ、火薬はここだな」


 ユキが指したのは、爆発現場の1番奥だった。


「ああ、だから怪我だけですんだんだ」

「リリ、そうだね。不幸中の幸いか」

「兄さま、そうですね。見回りの人から遠かったから」


 しかし、鉱山には粉塵が常にある。

 ひょっとしたら、大事故になっていたかも知れない。

 なんて馬鹿な事をしたんだ。

 自分達だって、もしも逃げ遅れていたら大怪我をしたかも知れないのに。


「リリ、きっとそこまで深く考えていないだろうよ。全く、呆れるよ」

「はい、兄さま……」


 奥にまだ坑道が続いている。

 そうだ、忘れてた。鑑定しながら進まないとな。


 『鑑定……』


 ほうほう。なるほどなるほど。


「兄さま、奥に行きましょう」

「リリ、危なくないのか?」

「大丈夫です」


 俺は、ユキと奥に進む。


「ユキ、ここもだね?」

「ああ。小さいがな」


 2箇所に爆弾を仕掛けたのか。

 用意周到じゃねーか。ヤル気満々じゃねーか。

 本当に、誘き出す目的だけか?


「リリ、ユキ?」

「兄さま、ここにも小さい爆弾があったみたいです。あ……ユキ。もしかして、ここに仕掛けたのは不発だったのかな?」

「リリ、それは我には分からん。だが、こっちの方が爆発したのは後だな」

「だよね……」


 うん、どう言う事だ?


「兄さま、ここの小さいのは不発だったみたいですね。さっきのが爆発して、誘爆したんでしょう」

「それは、誘き出すにしては大掛かりだな」

「はい。まだ何か隠しているのかも知れませんね。もう一度、鑑定してみる必要があるかも」


 そうだな。俺は先に話を聞いて、思い込んでいたからな。

 で、もう一つ……

 鑑定で、発見した事がある。父が喜ぶと言っていた件だ。

 俺は鑑定しながら、奥へと進む。


「殿下、それ以上奥にはもう何もありません」


 鉱夫の一人が、止めてきた。


「うん。いいんだ」


 気にせず、俺は進む。

 鉱夫が何もないと言っていた坑道から、少しそれたところだ。


「兄さま、少し下がっていて下さい。念の為、シールドをはりますが」

「ああ、リリ。気をつけるんだよ」

「はい、兄さま。大丈夫です」


 皆が下がるのを確認して、俺はシールドをはった。


『アースハンマー』


 ――ドゴッ、ドゴッ、ドゴーン!!


 壁が崩れた。


『鑑定』


 もう少しかな……?


『アースショット』


 ――ドドドド……ッ!!


 ガラガラとまた壁が崩れた。


『鑑定』


 うん、よし!

 シールド解除。


「兄さま、ここです」

「リリ、少し掘っても大丈夫かい? 採取したいんだが」

「はい、兄さま。大丈夫です。この辺りは岩盤が硬くて掘れなかったんじゃないかな? 違う?」


 俺は鉱夫に聞いた。


「はい、殿下。その通りです。掘れなかったので、手付かずになってました」

「今、硬い岩盤を崩したから、掘ってみて」


 俺がそう言うと、二人の鉱夫が掘り出した。


「殿下……! これは……!」

「うん。ミスリル鉱石だね」

「リリ、出たか?」

「はい、兄さま。この奥一帯がそうですね。鉱脈になっています」


 この鉱山には、貴重なミスリル鉱石の鉱脈があった。


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