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166ー王国の問題

「申し訳ない!」


 4人が俺に、頭を下げた。


「話を聞いていると、あなたがリリアス殿下だと」

「うん。そうだよ。ボクがリリだ」


 リュカ、ここでは笑うなよ。と、意味を込めてリュカを睨むと、コクコクと頷いていた。ブハハ、こんなリュカは可愛い。

 俺が笑いそうだ。


「爆破した事は、もしかしたらリリアス殿下を、誘き出せるかもと思ったんだ。リリアス殿下は、回復魔法を使うと聞いていたから、怪我人を出せばと。

 昨夜、様子を見ていると子供が一人、騎士に守られていた。この守られている子供が、リリアス殿下だと思ったんだ。

 俺達が食べられない原因かも知れないと思ったら、カッとして……俺たち王国の民は皆飢えている。王や貴族達は、贅沢をしているのに。そう思うと……!」

「それは、帝国には全く関係のない事だ。お前達の国の王が、馬鹿なだけだろうが! リリアスは無関係どころか、被害者だ!

 帝国が怒って当然だろう!」


 クーファルが怒っている。

 当然だ。王国がやらかした事だからな。


「分かっている! 爆破までした俺達に、食事を出してくれて、人権とまで言ってくれた。そんな皇子が、悪い訳がない! 今は……今は分かっている! だから……! 本当に申し訳ない事をした!」


 男達はまた頭を下げた。


「兄さま……どうします?」

「まあ、当然、王国に送り返すね」

「そうですよね……あ……、ユキ!」


 シュンッとユキが現れた。


「リリ! 奴ら来たぞ!」

「うん!」

「リリ、どうした?」

「兄さま、彼等のお仲間が、来ました。ユキ、騎士団に加勢して。殺したら駄目だよ」

「分かった」


 またユキが、シュンと消えた。

 4人が驚いて、固まっている。


「あれは、昨日俺たちが倒された……豹……?」

「うん、そうだよ。カッコいいでしょ? 神獣なんだよ。人間が敵うはずないんだ」

「神獣……! 本当にいるのか……!」

「ユキヒョウの神獣だ。リリアスを守護している」


 クーファルの言葉に、4人は口を開けたまま驚いている。王国は魔法でさえ使える者は限られているという。しかも、生活魔法程度だと。ましてや神獣なんて夢物語の世界なんだろうな。


 暫くして、4人の男が騎士達に連行されてきた。


「リリ、もういないだろう」

「そうだね、ユキありがとう」

「ああ」


 俺はユキの首に抱きつき、少しだけモフる。


 合計8人か。よく不法入国しようと思ったよ。元兵士だから出来たのか?

 それにしても……


「ねえ、君達も食べてないでしょ? まず、食事だね。」


 リュカが騎士達に伝えに出てくれた。

 それと、クリーン魔法をかけた。

 何日、風呂に入ってないんだ? 皆小汚い。ちょっと匂うし。


「リリ、王国に風呂の習慣はないんだよ」

「えッ!? 兄さま、本当ですか!?」

「ああ、魔力を持たないから、湯を用意するのも大変なんだ。王国は未だに、井戸に頼っているからね。

 しかもクリーン魔法を使える者も殆どいない」

「ええー……!?」

「王国で魔法を使えるのは、ほんの一部の人間だけだからね。使えると言っても、生活魔法程度だ」

「あぁ……そうでした」


 俺、さっきそう思っていたとこじゃん。しかし、魔法がないならそれにかわる何かが発達していそうなものなんだが。

 ほら、前世も魔法はなかったが、かわりに科学が発達したようにさ。

 騎士達が、食事を持ってきてくれた。


「それを食べて、少し皆で話し合いなさい。お前達王国の問題だ。帝国は一切関係ない。もちろん、リリアスもだ。食事をして、少し落ち着くといい。リリ、行こうか」

「はい、兄さま」


 俺達は一旦仮設テントを出た。



「本当に王国は馬鹿ばかりだな!」

「兄さま……」

「いい迷惑だ」


 本当にそうだな。とばっちりだ。

 王国の現王はもう駄目だな。


「でも、兄さま。どうします? 彼等を送り返しても、解決にはなりませんよ?」

「リリ、帝国ではないからね。王国の事に、口を出す訳にはいかない。他国に内政干渉をしてはいけない」


 それはそうなんだけどさ。


「また、兄さまが王国に向かう事になるのですか?」

「ああ、多分そうだろうな」


 そうか……

 せめて、第1王子を助けられたらなぁ。


「兄さま、第1王子と話せませんか?」

「リリ、それは無理だろう」

「第1王子を解放したら、食料を提供するとか、支援するとかなんとか言って。

 あ、それより兄さま。王国の街中に、食料をうっかり落としたりしませんか?」

「うっかり落とす!? アハハハ、リリは本当に突拍子もない事を考えるね」


 無理かぁ……だよなぁ、他国の事だからなぁ。


「第1王子を、此処に連れて来るとか……」

「リリ、駄目だよ。手を出し過ぎては駄目だ」

「兄さま……」


 だってなぁ、沢山の人達が飢えてるんだよ。

 大人であれだぜ? 子供はどうしてるんだ? 赤ちゃんは? お年寄りは?

 餓死者が出たりしてないのか?

 そんなの、放っておけないだろう!


「リリ、とにかく一度父上に相談だ」

「はい……」


 その時だ。ポンッとルーが現れた。


「リリ、鑑定したんだな」

「うん、ルー」

「ルー様、ご存知だったのですか?」

「まあ、少しはね。だが、僕も王国にはノータッチだからね。まさか王が嘘の発表をしていたとは、思わなかったよ」

「あー、そうだった。王は嘘ついてたんだ」

「リリ、何故か分かるかな?」

「え? ルー、何が?」

「王が嘘を発表したり、嘘をついてまで、自分の息子の王子を幽閉した理由だよ」

「えー、保身?」

「そうだな」

「リリ、それだけかな?」

「兄さま、我が身可愛さ。贅沢。権威。ですか?」

「そうだね。民は王や貴族が贅沢する為にいるのじゃないんだ。逆だ。民の為に、王や貴族がいるんだ。それを履き違えてはいけない。

 確かに王や貴族は民より贅沢だろう。しかし、それには責任が伴うんだ。

 民を飢えさせてはならない。

 民を守らなければならない。

 民の日常を守り続けていかなければ、貴族じゃない。王でもない」

「それだ」

「ルー、何?」

「この帝国が、栄える理由だよ」

「理由?」

「ああ。帝国は初代皇帝から、今クーファルが言った考えが受け継がれていて、実際にそう動いている。それが、光の神の加護に繋がるんだ。

 王国の様に、王や貴族がなってない国に加護はない。ましてや、自分の欲の為に隣国の皇子を暗殺しようとしたんだ。今の王が、王でいる限りは衰退して行くだろうね。

 民は国そのものだからね。民がいなくなれば国ではなくなる。当然の事だ」


 もう王国はそこまできているのか? 崖っぷちもいいとこじゃねーか。


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