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165/442

165ー反乱軍

 俺は、捕らえた4人に向かって集中する。


『鑑定……』


 ……ああ、そうか……

 なんなんだよ、あの国は。

 一体何がしたいんだ。


「兄さま、当たりです。ただ、今回は反社会的勢力……いえ、反乱軍と言う方がいいかな」

「あの馬鹿王に、不満を持つ者達と言う事か。何故、帝国の鉱山を爆破する必要がある? 反乱するなら、勝手に自国でやればいい」


 クーファルの言う通りなんだが……

 

「ねえ、まともに食べてないの? みんな、栄養失調になりかけてるじゃない。

 今朝は? ちゃんと食べた?」


 俺が話しかけると、虚な目をしたまま顔を上げてこっちを見た。


「殿下、彼等は襲撃者です。そんな者に、まともに食べさせる必要はありません」


 オクソールが当然の様に言った。

 そうか、それが普通なんだな。


「オク。それは違う。彼等は自国でも、食べられてなかったんだ。それに、どんな理由があっても、食事はさせなきゃダメだ。

 最低限の人権は保障しなきゃ駄目。今すぐ食事を持ってきて」

「殿下……」

「オクソール、構わない。食事をさせなさい」

「はッ、クーファル殿下」


 オクソールが、見張りに伝えに行く。

 この世界、捕らえた者達の人権なんて無いに等しいからな。

 だかな、捕虜にだって人権はあるんだぞ。命はあるんだ。


「ねえ、生活ができないの? 王国は一体どうなってるの?」


 そうだ。この襲撃者達は、4年前に俺を狙った王国の民だった。


 帝国の西側を流れる、リーゼ河。

 隣国のガルースト王国との境界だ。

 リーゼ河には橋が架かっていて、沿岸国境警備隊が配置されている。

 もちろん、検問で入国管理隊も不法入国を監視している。


 ガルースト王国、4年前に王が工作員を送ってきた。俺を殺す為だ。

 それを返り討ちにして、捕らえた。

 そして、捕らえた工作員を王につき出し、帝国に二度と手を出すなと、啖呵を切ってきたのが、クーファルだ。


「兄さま、酷いですね」

「ああ。あの馬鹿王はやはり駄目だな。お前達、事情を聞こうか。なんの事情もなしに、不法入国までして鉱山を爆破する筈がないだろう。

 私は4年前に、お前達の国の王に会っている。工作員を送って、帝国の皇子を暗殺しようとしたんだ。そのペナルティで関税が撤廃されている。

 そして、二度と帝国に手を出すなと、警告したんだがな。あの王は、もう忘れたか?」


 クーファルが煽ると、捕らえた者の一人が反応した。


「違う! 俺たちはあんな王は信じちゃいない!」

「おいっ! 黙れ!」


 これは……王国はもう末期なのか?


「ねえ、事情を話してくれない? ボク達は、悪いようにはしないよ?」


 騎士達が、食事を持って入ってきた。


「殿下、お持ちしました」

「ありがとう。彼等にあげて」

「え? 殿下……」

「構わない。リリアス殿下の仰る通りに」

「はッ、オクソール様」


 騎士達が、4人の前に食事を置いた。


「食べて。足らなかったら、おかわりあるからね。ああ、おにぎりって食べた事ないかな? 手で持って食べるんだよ。スープも飲んで。美味しいよ」


 俺は4人にクリーン魔法を掛けた。

 4人は顔を見合わせて戸惑いながら、おにぎりを手にして食べた。

 一口食べたら、もう止まらない。

 ガッツリ食べ出した。


「本当に、食事が出来てないんだ」

「リリ、どうする?」

「兄さま、ゆっくり食事をさせましょう。後は話を聞くしかないですね」

「ああ。しかし、民をこれ程飢えさせるとは……」

「はい、兄さま」



 しっかり食事を取り、少し落ち着いた様に見える。

 4人の中の、一番年長らしい男が話し出した。


「俺達は……城の警備兵だった」


 警備兵……兵士だったのか。

 それが何故、反乱軍に……しかも城を守っていた警備兵だぞ。


「4年前、帝国の関税が突然撤廃された。そして、帝国の皇女と婚約していた第2王子が、幽閉された。皇女との婚約が無くなったのは、第2王子がリリアス殿下に手を出したからだと発表された。そのせいで、帝国は関税の撤廃を要求してきたのだと」

「なんだと? 第2王子に全て擦りつけたのか」

「そうだ。だが、王が保身の為に嘘の発表をしたのだとすぐに噂が広まった。

 帝国の皇子が乗り込んできた事位は、城にいれば分かる。その時、立ち会った者もいるからな。

 関税が撤廃されてからは、物価も税金も上がって……どんどん物資が不足するようになって、日々の暮らしにも影響が出だした。民は皆、第1王子への譲位を望み出した」

「第1王子は、どんな人なの?」

「気さくに街にも出て来て、俺たちの話にも耳を傾けてくれる。王に進言してくれる唯一の人だった。しかし……」

「何? どうしたの?」

「第1王子まで幽閉されたんだ。リリアス殿下の希望だと噂に聞いた。第1王子が、リリアス殿下のお命を狙ったと」

「馬鹿げているな。お前達は、それを信じたのか?」

「まさか! 信じる訳がない! それで、探ろうとしているのが王にバレて、俺達は兵を辞めさせられたんだ」

「それで何故、帝国に不法入国までして、鉱山を爆破したんだ?」

「不公平だと思ったんだ」

「何? 不公平だと? 帝国の皇子の命を狙っておいてか!」

「兄さま……取り敢えず最後まで話を聞きましょう」

「リリ、自分勝手も過ぎるだろう」

「兄さま、お願いです」

「ああ……分かった。それで?」

「確かめたかったんだ」

「確かめるだと?」

「ああ。本当に帝国は悪くないのか? 本当にリリアス殿下のせいじゃないのか? 確かめたかったんだ」

「で? ボクを見て、どう思ったの? こんなに怪我人を出してまで、する事だったの?」


 4人は頭を下げた。


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― 新着の感想 ―
栄養失調になるくらい食べられていない状態の人にはおにぎりではなく、重湯や水分量の多いお粥の方が良いと思います…
[良い点] リリと仲間達のお話楽しく読ませていただいてます! [気になる点] 帝国から王国への輸出に関してだと思うんですが、関税を撤廃すると、王国の物価は下がり、関税を上げると物価は上がるのでは?
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