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162/442

162ー違和感

 鉱山と言っても、複数ある。

 今回行く鉱山は1番帝都に近い。

 3歳の時に宿泊していた、湖近くの別邸まで1日。そこで宿泊して、翌朝また早くに出発して丸1日。現場の鉱山に到着だ。

 爆発が起きたのは4日前だ。まだ燻っているのか? 長いな……所々から煙が出ている。

 

「兄さま」


 馬車を降りて俺はクーファルの所まで走る。


「ああ、リリ来たか」

「兄さま、もう鉱山の中には誰もいないですよね?」

「ああ。全員避難している。念の為、消火するか?」

「兄さま、水は駄目ですよ。余計に爆発しますよ」


 場所は鉱山だ。水と鉱物の何かが反応して、また爆発を誘発しないとも限らない。


「じゃあ、どうする?」

「このまま、自然鎮火を待ちましょう。それとも見回って、火が出そうな所に乾燥した砂か塩をまきますか?

 いや、でも……兄さま、ここでは何が採掘できるのですか?」

「ここは、層になっていてね。鉱石、金鉱石、銀鉱石、石炭が採れるんだ。

 皆、離れた安全な所に避難しているから、負傷者の治療を優先しようか」

「そうですね。しっかり鎮火が確認できないと、中に入るのも危険ですからね。

 兄さま、ボクはレピオス達と治療をしていきます」

「ああ、頼むよ。私は状況確認だね」

「はい。お願いします」


 そうして、俺はレピオスを探す。


「殿下、また爆発する可能性があるのですか?」

「オク、ないと思うんだけど…… 」


 俺はまだ燻っている鉱山を見る。


「殿下?」

「なんかね、不自然と言うか……違和感と言うか……何かが引っかかってスッキリしないんだけど、それが分からないんだ」

「殿下、また順を追って考えられては?」

「うん。そうだね。とにかく落ち着かなくちゃ。優先するのは、人の命だ」

「はい、殿下」


 オクソールと一緒にレピオスを探していると、救護所の様になっている建物を見つけた。

 入って行くと、やはりレピオスがいた。


「殿下、酷いですが重症者はいない様です」

「え? そうなの?」

「はい。最初の爆発で驚いて外に出て、見張りをしていた者と、見回りの者を助け出そうとしたそうです。

 その時に二度目の小さい爆発が起こったそうで、その爆発や火事に巻き込まれた様です。殿下、順にヒールをお願いします」

「レピオス、ヒールで充分な程度の怪我て事?」

「そうですが。殿下、どうされました?」 

「おかしい。粉塵爆発で、こんなに被害が少ないのは聞いた事がない」

「殿下、どう言う……?」

「とにかく、ヒールするよ」


 俺は、両手を広げた。


『エリアヒール』


 部屋中に白い光が満ちた。

 

「レピオス、怪我人はここだけ?」

「殿下、隣の部屋もです」

「分かった」


 俺は隣の部屋でも、エリアヒールをかけた。


「殿下、本当に凄いです。身体はなんともないですか?」

「うん、レピオス。なんともないよ。大して魔力は使ってないから、大丈夫」

「有難うございます」


 ふと、まわりを見ると、医師達が驚いた顔をして俺を見ている。


「ねえ、レピオス。もしかして、みんなびっくりしてる?」

「ああ、皆は殿下が、魔法を使われるのを見るのは初めてですから。私は慣れてますが」


 レピオスはそう言ってニッコリした。えー……なんか腑に落ちない。


「レピオス、後は?」

「後は、薬湯を作ります」

「体力だね」

「そうです」

「じゃあ、シェフにも協力してもらわなきゃ」


 次はシェフを探すぞ。

 まあ、隊の中央位にいるんじゃないか?

 ほら、いたいた。


「シェフ、ちょっといいかな?」

「はい、殿下。どうされました?」

「食料は沢山持って来てるよね?」

「はい、マジックバッグに入れて沢山持ってきましたよ」 

「あのね、怪我した人達に体力つけたいんだ」

「では、ミルク粥にチーズ入れますか?」

「いいね、美味しそう」

「ああ、殿下もミルク粥お好きでしたね」

「うん、好き」

「では、消化が良くて滋養のあるもので、メニューを考えます」

「うん。お願い」


 さてと……

 また俺は鉱山を見た。


「殿下、まだ引っ掛かりますか?」

「うん。オク。より強くなったね」

「それはどうしてですか?」

「本当に怪我が軽症すぎる。これって、本当に粉塵爆発かなぁ? それにセティが言ってた見回りの人が犯人とかじゃないよね」


 俺はじっと鉱山を見ながら考える。


「リリ」

「ユキ、どうしたの?」


 俺の直ぐそばにいたユキが何かに反応したらしい。


「火薬の匂いが微かに残っている」

「え!? ユキ、本当?」

「ああ。人間には分からないだろうが」

「あー。それじゃあ、人為的か。それなら納得できる」


 クーファルを探そう。


「殿下?」

「兄さまはどこかな? ユキ、念の為に周りを警戒しておいて」

「ああ、分かった」

「えっと……サーチだっけ……」


 俺は周りに魔力を薄く広げながら、クーファルを探す。


「そっか……そうなんだ」

「殿下?」

「ユキ、まだだよ」

「ああ」

「殿下、あちらにクーファル殿下が」

「ああ、本当だ」


 とりあえず俺はクーファルの所に急ぐ。しかし、何を考えているんだか。


「兄さま」

「リリ、どうだった?」

「はい、軽症者ばかりでした」

「そうなのかい? それはやはりおかしいね」

「はい、兄さまは?」

「ああ、見回りの者に話を聞いたんだ。怪我しているから、リリ頼めるかな?」

「はい、もちろんです」


 俺はクーファルに案内されて、ついて行く。


「リリ」

「うん、ユキ。分かってる。オク、いつでも剣を抜ける様にね」

「はッ、殿下」

「殿下!」

「リュカ、どうしたの?」


 ニルの側にいたリュカが慌ててやってきた。ニルが気づいたのか、それともリュカか?


「殿下、あの鉱山の周りに…… 」

「ああ、分かってる。リュカも剣を抜ける様に警戒しておいて」

「はいッ」

「リュカ、馬車の周りに騎士団はいる?」

「もちろんです」

「そう。良かった。ニルが残っているからね」

「ちょっと外れよう」

「はッ」

「兄さま、ボク少し向こうに行きます」

「え? リリ?」

「大丈夫です。兄さまは、そのまま騎士団のいる所にいて下さい」

「リリ……分かったよ。気をつけるんだよ」

「はい、兄さま。大丈夫です」


 クーファルはそれだけて察してくれる。

 俺は態と、騎士団がいない方へ歩いて行った。


「ユキ、そろそろだよ」

「ああ」


 そうして岩陰に差し掛かった時だ。

 右から一人。

 正面から二人。

 左から一人。

 一斉に襲いかかってきた。


 ーーザンッ!

 ーーガキン!

 ーードサッ! ドサッ!


 一瞬だった。

 きっと襲って来た方は、何が起こったのか分かってないだろう。


「おー、リュカ強くなったねー!」

「殿下……そう言われて、あまり嬉しくないのは何故でしょう?」

「アハハ」


 オクと、リュカが左右の一人ずつ。

 ユキが正面の二人をあっという間に押さえ込んだ。


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