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161/442

161ー爆発

 そろそろ空が夕陽に染まりそうな時間、和やかな誕生日会を終えてオクソールとニルとユキと一緒に部屋に戻ろうとしていた。

 ハンバーグもエビフライも美味しかった。その後の、お誕生日ケーキも美味しかった。満足満足。


 おや? ニルが、何かに気付いた。

 そう言えば……城が何か騒がしい? 騒然としているぞ。


「殿下、何か騒ついてますね」

「ニル殿、何かあったみたいです」

「オク、そう?」

「はい。殿下、早く部屋に戻りましょう」

「アース達は大丈夫かな?」

「リュカに、騎士団を連れて向かわせましょう」


 そう話していた矢先だ。リュカが前から走ってきた。


「殿下! オクソール様!」

「リュカ、何があったの?」

「鉱山で、爆発があったようです」

「それは人為的なもの?」

「いえ、俺はまだ詳しくは知りせん。陛下がお呼びです! このまま、陛下の執務室へお願いします!」

「リュカ、分かった。ニル、部屋に戻っていて。ユキ、一緒に行く?」

「ああ、我は行く」

「リュカ、騎士団を何名かつれて、念の為殿下のご友人方を邸まで護衛してくれ。私は殿下につく」

「はい! 分かりました!」


 リュカがあっという間に、騎士団の詰所に向かった。


「殿下、お気をつけ下さい」

「うん、ニル。大丈夫だよ。待ってて」

「はい」

「オク、ユキ行こう」


 俺達は、父の執務室に向かう。

 爆発だなんて、一体何が起こったんだ?


「父さま、リリです」

「入りなさい」


 父の執務室には、フレイ、クーファル、セティ、デューク、ソールと皆揃っていた。

 フレイがユキを見て、側にやってきた。

 ユキのスベスベもふもふには誰も抗えない……では、なく。

 フレイは、ユキが大好きらしい。

 カッコいいと、頻りと触りたがる。


「父上、何があったんですか?」

「ああ、クーファル。セティから説明を」

「はい。帝国には幾つか鉱山があるのはご存知ですね。

 1番城に近い鉱山から先程早馬が到着して、爆発事故があったそうです」

「セティ、被害者は?」

「リリアス殿下、幸い死者はおりません。が、負傷者が多数おります。ですので、リリアス殿下。向かって頂けますか?」

「もちろん、行くけど。レピオスも?」

「はい。医局からレピオス含めて数名同行致します」

「それで、原因は?」

「それが、フレイ殿下。見回りの者が入ってすぐ爆発があった様で、その見回りの者に疑いが掛かっておりますが釈然としません。

 どう考えても爆発する理由がありません。でも、他の者達は休んでいて、鉱山には入っていないのです。攻撃されたとも思えません。不可解なのです」


 なるほど。鉱山の爆発か……何か読んだな、前世でだけど。なんだっけなぁ。


「リリ? 何か分かるのかな?」

「いえ、父さま。何かご本で読んだ気がして……でも、思い出せないのです」

「リリ。状況を整理して、順に考えてみなさい」

「クーファル兄さま。はい」


 状況を整理してか……ちょっと落ち着こう。鉱山、見回り、爆発……見回り……ん?


「セティ、見回りて言う位だから夜なの?」

「はい、リリアス殿下。夜の定刻の見回りです。鉱夫が順に見回ります」

「夜……暗いよね?」

「もちろんです。ですので、見回りの者は皆松明を持って見回ります。」

「……クーファル兄さま。鉱山は粉塵が舞ってますよね?」

「ああ、だから皆布で鼻と口を覆っている」

「兄さま、粉塵に火です」

「……リリ!」

『酸素』

『爆発下限濃度以上の可燃物の粉塵』

『最小着火エネルギー以上の着火源』」


 俺は爆発する条件を並べ上げた。人為的なものでないのなら、これ位かと思うんだ。しかしなぁ……


「リリ、そうか! 粉塵爆発か!?」

「でも、兄さま。それにしては、死者がいません。粉塵爆発なら、その見回りの者は確実に吹き飛ばされている筈です」

「リリ、鉱山だ。狭く曲がって、入り組んだ道しかない」

「運が良かったのですか?」

「かもしれない。それに、ギリギリの酸素濃度だったのかも」


 この世界で、粉塵爆発をこんなに理解しているクーファルは凄いな。


「クーファル、リリ。分かる様に説明してくれないか?」

「全然分からんぞ?」


 うん、フレイ。ユキに夢中でクーファルの話聞いていたか?


「父上、兄上。粉塵爆発と言って、条件が揃うと僅かな着火源でも、大きな爆発が起きるのです。

 鉱山は常に粉塵が舞ってますからね。あり得ない事ではないです。寧ろ、今迄起きなかったのが幸いでした」

「それで、死者が出ていないのが、どうして変なんだ?」

「フレイ兄さま、粉塵爆発が起きた着火源が、その見回りの火だと思われます。それなら、逃げる間もなく爆発するのです。ですから、吹き飛ばされて死亡していても不思議ではないのです」

「なるほど。それはクーファルはどう思うんだ?」

「はい、父上。普通の部屋や、遮る物のない所ならそうなのですが、爆発が起きたのが鉱山です。坑道は真っ直ぐでも、遮るものがない訳でもありません。あちこちに掘った穴があったり、曲がりくねっています。

 それで、運良く助かったのではないかと。爆発の規模にもよります」

「クーファル、リリ。直ぐに向かってくれないか? 原因究明と、負傷者の保護を頼む」

「はい、父さま」

「分かりました。父上」

「セティ、医局に連絡を頼む。今のクーファルとリリの話を、説明しておいてくれ」

「はッ、陛下」


 クーファルとセティと俺は部屋を出る。


「リリ、すぐに用意できるかな?」

「はい、兄さま。どれ位で出発しますか?」

「騎士団は少し時間がかかる。医局もかかるだろう。今日はもう直ぐに陽が暮れるから、明日朝早くに出ようか?」

「分かりました。ボクもレピオスと相談して用意します」

「リリ、また爆発が起こる可能性はあると思うかい?」

「いえ、兄さま。ボクはないと思います」

「そうだな。私もそう思う。じゃあ、リリ。頼んだよ」

「はい、兄さま」


 クーファルは騎士団の詰所の方へ向かって行った。


「殿下」

「うん、オク。レピオスとシェフに会わなきゃ」

「はい」


 俺はそれから、レピオスを連れてシェフに会い、色々相談した。

 しかし、何かスッキリしないんだ。



 そして翌早朝、俺はまだ半分寝ている。


「殿下、大丈夫ですか?」

「うん。リュカ。大丈夫。眠いだけだよ」

「ニル様、ついて来て大丈夫ですか?」

「リュカ、大丈夫よ」

「ニル、お留守番してくれていいのに」

「いえ、殿下。一緒に参ります」

「危ないから気をつけてね。離れていてよ?」

「殿下、それは私より殿下ですよ」


 いや、俺はいいんだよ。

 ニルは嫁入り前なのにさ、怪我でもしたらと思うと心配だよ。

 まあ、とにかく出発だ。

 早く行かないと、怪我して痛い思いをしているだろうから。


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