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160ーお誕生日

 俺達は皆で俺の部屋に戻ってきた。

 ニルが待ち構えている。


「殿下、早くお着替えなさいませんと。ディアーナ様がいらっしゃいますよ」

「うん、ニル。分かった。二人共、ちょっと待っててね」


 俺は部屋の奥に行く。衣装部屋みたいなもんだ。


 居間の様な応接セットのある部屋が、入ってすぐにあって、続きで奥に衣装部屋と寝室がある。

 着替えといっても、鍛練していたから着替えるだけで、特別な物を着る訳じゃない。

 本当はシャワーでもしたい気分だが、時間がないのでクリーン魔法で我慢だ。


「ユキ、相変わらずカッコいいな」

「なんだ、また来たのか?」


 大きいままのユキにも、二人は慣れっこだ。ユキも二人には慣れている。


「お待たせ。ユキも行く?」

「ああ、もちろんだ」

「殿下、今日はお天気も良いですから、庭園にしました」

「うん、ニルありがとう。ディアは庭園を見るのが好きだから、喜ぶよ」


 俺達は庭園に向かう。


「リリ殿下、リュカさんも獣人だろ?」

「うん、アースそうだよ」

「なんの獣人なんだ?」

「狼だよ」

「狼ですか、珍しいですね」

「うん。レイはよく知ってるね。希少種だからって狙われてたんだ」

「スゲー」

「アース、でもリュカはボケボケだよ」

「え?」

「リュカはよく転けるしなぁ。あ、でも耳と尻尾を出して、剣を構えている時はカッコいいかな」

「耳と尻尾を出してるのを、見たんですか?」

「うん、レイ。辺境伯領で魔物討伐の時にね。あの時は、ユキに向かってたんだっけ」

「そうだったな。あの時、リリに会わなかったら我は死んでいただろうな」

「今はボクの護衛だもんね、ユキ」

「ああ、リリは我が守る」

「ユキ、ありがとう!」


 バフっとユキに抱きつく。

 あー、このスベスベしたもふもふ感はたまらんぜ!


「こちらにご用意しました。ディアーナ様が来られるまで、お待ち下さい」

「「はい」」

「ニル、ありがとう。りんごジュース先にちょうだい」

「はい、殿下。お二人はどうされますか?」

「じゃあ、僕も同じで」

「僕も、お願いします」

「はい、畏まりました」


 しばらく3人で、ウダウダしていたら、今日の主役の登場だ。


「あら、お待たせしてしまいましたか?」

「ううん、二人はまた鍛練を見に来ていたんだ」

「さ、ディア座って」

「アース、有難う」

「じゃ、まずは…… 」


 俺達は3人で目配せして、せーので言う。


「「「お誕生日おめでとう!」」」

「まあ! 有難うございます! 嬉しいです。有難う御座います!」

「リリ殿下から」

「え、レイ。ボク後がいい」

「じゃ、俺が先に。ディアおめでとう」


 綺麗にリボンでラッピングされた、小さな箱を渡した。


「アース、ありがとう。開けてもいいかしら」

「ああ、もちろん」


 ディアーナが、丁寧にリボンをはずし、ラッピングを開けた。

 綺麗な花模様が彫刻された、蓋がついた小さな陶器だ。


「まあ、綺麗」


 ディアーナが蓋を開けると、可愛い音がした。

 オルゴールだ。この世界では、まだ珍しい。


「アース、ありがとう! 嬉しいわ。よく手に入ったわね」

「うん。俺、去年は滑ったからさ。今年は絶対に良い物と思って色々探したんだ。

 ディア、お誕生日おめでとう」

「アース、ありがとう」


 おやおや、アースさん。いい雰囲気じゃないですか?


「リリ殿下、目がオッサンになってる」


 げッ、レイに突っ込まれたぜ。


「じゃあ、次は僕だね。ディアおめでとう」

「レイ、ありがとう。レイは開けなくても分かるわ」

「そう? でも開けて」

「ええ」


 ディアーナがまた丁寧に、ラッピングを開けていく。


「ああ、やっぱり! レイ、嬉しいわ!」

「ディアが読みたいと言っていたからね」

 

 丁寧に装丁された、本だ。

 きっとディアーナが、読みたい物語か何かだろう。


「ボク、渡し辛くなってきちゃった」

「殿下、だから1番先にと言ったのに」

「レイ、そうなの?」

「さあ、殿下」

「うん。ガッカリしないでね。ディア、おめでとう」


 俺は長細い箱を渡した。一応、ラッピングしてリボンもかけている。


「殿下、ありがとうございます。開けても良いですか?」

「うん。」


 またディアーナが丁寧に、ラッピングを開ける。

 小さな長細い箱を開けると、ネックレスが入っている。


「まあ、綺麗」

「ディアの瞳の色の魔石を使ったんだ。ディアを守ってくれるから、ずっとつけていて」

「守る……防御魔法の付与ですか?」

「うん。防御もだけど、状態異常もレジストしてくれる。レジストしたらピカッて光るから、分かるよ」


 ディアの瞳の色と同じ紫の花の形に小さな魔石を繋げて作ったトップの飾り。

 1個1個は数ミリの小さな魔石だけど、その小さな魔石1個ずつに防御やらレジストやらを付与した。大抵の事なら、なんとかなる。

 2年前に、ディアーナは狙われているからな。用心するに越した事はない。


「殿下、ありがとうございます。大切にします」


 そう言って、ディアーナはネックレスをつけた。

 うん。華美にならなくて良い感じだ。


「目立たない様に、控えめにしたんだ」

「ディア、似合ってるよ」

「レイ、ありがとう。殿下、アース、レイ。本当にありがとう。嬉しいわ。大切にしますね」


 男3人、ほっこりしちゃったよ。


「さあ、お昼食べよう。ボク、お腹すいちゃった。シェフ、お願い!」


 待機していたシェフに声を掛ける。


「はい! 殿下!」

「やっぱ、殿下は鈍いな」

「アース、まったくだ」

「え?アース、レイ、何?」

「いや、なんでもないよ」

「さあ、皆様。沢山食べてください。今日は、ハンバーグとエビフライにしました!」


 おー! お子様ランチの定番だぜ。

 55歳のオッサンが、お子様ランチとはこれ如何に……


「スゲー。俺、食べた事ない!」

「え? アース、そう?」

「うちのシェフが言ってたけど、お城の料理を僕達が食べれる様になるには、時間がかかるって言ってた」

「アース、そうね。レシピを公表してもらって、料理人が勉強してからですもの」

「シェフ、そうなの?」


 だって、今日のメニューなんて何年も前から定番じゃん?


「私は殿下付きですから。その辺の事は分かりません」


 そっか。まさか父やセティが出し惜しみしてたりしないよな?

 やってそうだから、ちょっと怖い。


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