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157ー迷惑なフレイ

「ニル、ボクどうしたらいいの?」

「殿下、お部屋で待機です」

「そう。で、今日は侯爵が来られるの?」

「はい、侯爵様はご挨拶だけです。後は、ご令嬢と、あとお二人来られます」

「ああ、あの時の子息だね」

「はい。昼食をご一緒に」

「分かった」



「リリ! ちょうど良かった!!」


 正面から、フレイと側近のデュークが走ってきた。


「えっ!? 兄さま!?」


 俺はあっと言う間に、フレイに抱き抱えられた。


「行くぞ!!」


 フレイとデュークが走り出す。


「フレイ殿下! どちらに!!」

「殿下!」


 オクソールとニルが慌てて声をかけるが、フレイはお構いなしだ。


「オクソール! ニル! 悪い! 少しだけリリを借りる!!」


 ええーーー!!


「兄さま! ボクは今日は予定が!」

「ああ、分かってる! 少しだけだ!」


 どこに行くんだよー!

 マジ、なんなんだよー!

 俺、兄弟に拉致されたよー!


 そして、連れて行かれたのが、騎士団の鍛練場だった。

 第1騎士団と、第2騎士団が何かもめている。


「兄さま、これどうしたのですか?」


 俺はフレイに、抱き上げられたまま聞いてみた。


「リリ、お前だよ」

「ボクですか? ボク何もしてないですよ?」

「リリ、第2騎士団がリリに、魔石を貰ったと自慢したんだよ」

「あ…… 」

「ほら、リリ。やってしまっているだろ?」

「でも、あれは魔物討伐があったので」

「そうなんだけどな」

「でも、兄さま。あれは即席なんです。たまたま、辺境伯領で小さな魔石が取れたので。思いつきなんです。なんなら練習も兼ねてると言うか……」


 辺境伯領の海岸で魔石が流れ着いているのを見つけた。

 直径数ミリ〜2センチ位の小さな魔石だ。それを俺は、物理も魔法攻撃にも対応出来る結界を付与した。

 魔物討伐の予定があったからな。お守りだ。


「でもな、リリ。騎士団に必要だと思わないか?」

「兄さま、それは兄さまが父さまに交渉して下さい。魔石があれば、ボクはいくらでも作りますよ」

「そうか! リリ、約束だぞ!」

「はい、兄さま」

「よし」


 フレイが騎士団に向かった。


「整列!!」


 第1騎士団の団長が、号令をかけた。

 第1第2騎士団全員が、一斉にフレイに向かって背を正した。

 既に騎士団全員知った顔だ。


「皆、聞いてくれ! 魔石の件だが、リリが作ると約束してくれた!」


 フレイがそう言ったとたんに、第1騎士団の皆が歓声を上げた。


「え? そんなに欲しかったの?」

「そりゃ、防御に特化していますからね。まあ、それだけではない様ですが」

「デューク、なぁに?」

「第2騎士団の自慢ですね。リリ殿下に頂いたんだ、いいだろう。みたいな」


 なんだよ、それ。子供じゃん!?


「殿下、思っておられる事は、よく分かります」

「デューク、分かってくれる?」

「はい。とても。私も同じ事を思いましたから」

「リリ、その魔石は誰が持ってるんだ?」

「兄さま、知らないですよ。ソールに聞いてみて下さい」

「分かった。父上の近衛の分も頼めるか!」

「はい。いいですよ」

「じゃあ、頼んだ」

「はい、兄さま」


 騎士団長が号令をかけた。


「全員! リリアス殿下に礼!!」 


 ズザッ! と音がして、騎士団が右手を胸に持っていく。

 まあ、この帝国風の敬礼だ。


「リリアス殿下! 有難う御座います!!」


 ――有難う御座います!!!!


 俺は顔を引き攣らせながらヒラヒラと手を振った。


「兄さま、ボク戻らないと」


 オクソールが追いかけてきて、ずっと控えて見ていた。


「ああ。オクソール、悪かったな」

「フレイ殿下。リリアス殿下をお連れする必要はなかったのでは?」

「まあ、いいだろ。皆、リリの顔を見ないと気が済まないんだよ」


 人騒がせな。絶対にフレイの思い付きだろう? ちょうど前から俺が歩いてきたからだよ、きっと。


「殿下、戻りましょう」

「うん。オク、きっとニルが心配してるよ」


 オクソールと一緒に戻ると、やっぱりニルは心配していた。

 それに、もう侯爵が来られているそうなので、面談する部屋に向かう。

 俺がオクソールと一緒に部屋に入ると、父とセティ、レピオスが。

 アイスクラー侯爵の横にディアーナ嬢がいた。


「申し訳ありません。遅くなりました」

「リリ、どうした?」

「はい、父さま。フレイ兄さまにつかまってました」

「ああ、騎士団の魔石がどうとか言っていたね」

「はい。そうなんです」

「後でフレイに聞いておくよ。リリ」

「はい。お願いします。侯爵、ディアーナ嬢。お元気そうで良かったです」


 俺が声をかけると、侯爵と令嬢は席を立ちお辞儀をした。


「殿下、娘を助けて頂いて、誠に有難う御座います」

「リリアス殿下、有難う御座いました」

「いえ、ボクは大した事は何も。ディアーナ嬢、お顔色も良いですね。良かったです。レピオス、問題はない?」

「はい、後遺症もなくお元気ですよ」

「良かった」

「父様達は、お話があるから。リリ、別の部屋に子息達が来ているから、令嬢と一緒にそっちに移動してくれるかい?」

「はい、父さま」


 侍従に案内されて、俺はオクソールと令嬢と一緒に別の部屋に向かう。

 子息達とは、あの時にオクソールに連絡してくれた、アース・シグフォルスとレイリオン・ジェフティだ。

 二人が待っている部屋に向かいながら、令嬢と話す。


「もう、身体に違和感等ありませんか?」

「はい。全然大丈夫です。殿下、あの時は本当に有難うございました」

「ボクはたいして何もしてないよ。やっつけたのも、ユキだしね。これから会う二人が、オクソールに伝えてくれたから早く対処できたんだ」

「でも、私の方がお守りしなければいけないのに。私が殿下に守られてしまいました」

「え? そんな。ボクを守るなんて思わなくていいよ」 

「そんな訳にはまいりません。殿下は大切なお方ですから」

「ハハハ、ありがとう。でも、ボクは君より強いからね。大丈夫だよ」

「はい。殿下。魔法を使われてましたね。驚きました」

「え、そう?」

「はい。殿下は光属性だけだと思っておりましたから」

「ああ、ボクは全属性なんだよ」

「まあ! 全属性ですか?」

「うん。らしいよ」

「お強い筈ですね。ウフフ」


 お、初めて笑ったよ。

 5歳らしくて、可愛いね。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 文面が優しいからさくさく読む事が出来るので凄く面白いです。
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