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154/442

154ー動機

「まだ全然分からないね。尋問が進まないとね」


 なんだか、物騒だな。

 城も安心できない、て事だ。


「子供を巻き込むのは、許せません」

「ああ、リリ。分かっている。リリもハッキリと解明するまでは、絶対に一人では行動したら駄目だ。必ず、オクソールかリュカと一緒に動きなさい」

「はい、父さま」


「殿下、ご無事で!」


 オクソールとユキと一緒に、部屋に戻ったらニルが駆け寄ってきた。


「ニル、大丈夫。ボクが狙われたんじゃないから」

「そうなのですか? 突然、ユキが消えて驚きました」


 ああ、そっか。ユキを呼んだからか。

ニルはユキと一緒に部屋にいたんだな。


「心配かけちゃったね。ニル、ごめんね」

「いいえ、殿下。ご無事で良かったです。りんごジュースご用意しますか?」

「うん、おねがい。さてオク、ユキがやっつけた奴等の、尋問はどうするの?」

「連行して行ったのが、第1騎士団ですので、既にそちらで始まっていると思います」


 そうなのか。第1騎士団て事はフレイか。

 まあ、詳細が分かるまでどうしようもないよな。待つか。



 結局、お披露目パーティーはディアーナ嬢の件があったので、お開きになった。

 お披露目パーティーに、力を入れていた貴族達は残念だろうが、俺はラッキーだ。

 もう、あんなギラギラした目で見られるのは嫌だしな。



 そうして、数日が過ぎた頃にフレイに呼び出された。


「兄さま、お呼びですか?」

「リリ、またお手柄だったな」


 何のことだ? と思いながら、ソファーに座る。


「兄さま、何ですか?」

「アイスクラー侯爵令嬢の、誘拐未遂事件だよ」

「ああ、お手柄ではありません。体調の悪い人を労るのは普通の事です。それで、詳細は分かりましたか?」

「ま、今日はその報告だ。リリが気にしていると聞いたからな」

 

 フレイ率いる第1騎士団が、実行犯と侍女を取り調べた。

 ぶっちゃけ、実行犯は何も知らなかった。誰だか分からない男に金で雇われたらしい。

 しかし、侍女はかなり核心まで知っていた。

 よっぽど、騎士団が怖かったのか、もう抵抗しても無理だと思ったのか。

 ペラペラ喋ったそうだ。


 黒幕は、レークス・エリニース。

 ディアーナ嬢の父親である、ヒューイ・アイスクラーに敵対する侯爵だ。

 なんでも、貴族専門の豪華な医療院を経営しているそうだ。

 ディアーナ嬢の侍女は、元はエリニース侯爵の前妻の侍女だったらしい。

 15年前に、前妻が亡くなった。その後、後妻の侍女をしていたそうだ。

 その侍女が、エリニース侯爵の指示で、昨年からディアーナ嬢の侍女として、入り込んでいた。

 ディアーナ嬢が盛られた薬は、レピオスが言っていた様に少しの時間、身体の自由を奪うだけで、毒性はなかった。

 実行犯を城に入れたのも、この侍女だった。

 

「兄さま、敵対しているからと言って、どうして令嬢を誘拐までしたのですか?」

「ああ、それだが。子供を失う恐怖を、思い知らせたかったらしい」

「どう言う事ですか?」

「エリニース侯爵は、前妻と子供を同時に亡くしている。正確には、出産が難産で死産だったそうだ。そして奥方も、そのまま亡くなったそうだ」

「それが、どうしてアイスクラー侯爵の令嬢を、誘拐する事に繋がるのでしょう?」

「亡くなった前妻の出産に関わったのが、アイスクラー侯爵が経営する医療院だそうだ」


 この世界、回復薬や治癒魔法があるせいか、現代日本の様に医療が発達していない。

 難産で亡くなる子もいる。

 産まれてきても、新生児特有の高熱で亡くなる子もいる。

 いくら薬湯がよく効いて、回復魔法があっても、人体の何たるかを全く理解していない。

 あんなに優秀なレピオスでさえ、脈拍を測ったり、視診打診でさえ知らない。

 魔法はファンタジーで、素晴らしい力だが、だからと言って万能ではない。


「では、兄さま。逆恨みですか?」

「そうなるかな。エリニース侯爵は、アイスクラー侯爵が経営している医療院の担当医が、何か間違いでもしたと思っているのだろう」

「アイスクラー侯爵は何て言っているのですか?」

「エリニース侯爵の前妻が、医療院にいた事すら知らなかったよ」

「経営はしていても、治療内容まで知らないと言う事ですか?」

「ああ、そうだ」


 まあ、普通だよな。

 実際、侯爵が何か出来るとは思えない。


「それで兄さま、エリニース侯爵は?」

「ああ、捕らえて状況確認中だ」

「ディアーナ嬢は、もう回復したのですか?」

「ああ。翌日には普通に動ける様になったらしい。その後は、アイスクラー侯爵が経営する医療院に任せたらしいがね。

 レピオスが許可したから、大丈夫だろう」

「良かったです。まだ小さいし、女の子だからもし後遺症でもあったら可哀想ですから」

「まあ、リリも同じ歳なんだけどね。

 で、リリ。アイスクラー侯爵がお礼をしたいと言っている」

「いや、ボクはいいです」

「そう言うと思ったんだが、父上が面談の場を作る様にと言っている」

「えぇ〜……」

「まあ、令嬢がもう少し元気になってからだ。それと、あと二人いたろう?」

「二人ですか?」

「ああ。アース・シグフォルスと、レイリオン・ジェフティだ」

「ああ……」

「彼等も一緒に、おやつでも食べる様にと」

「はぁ……」


 正直、めんどくせー……


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