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153/442

153ーまだ分からない

「殿下! ご無事ですか!?」


 レピオスの最初の一言だ。

 いや、俺じゃねーし。


「レピオス、ボクじゃないよ。オクが連れてきた令嬢だよ」

「あぁ、それは失礼しました。リュカ、ちゃんと言ってくださいよ!」

「え!? 俺、言いませんでしたか?」

「誰が? が、なかったですね。リュカが走ってきたら、当然殿下だと思ってしまいます」


 ま、そうだわなー。

 リュカは俺の従者兼護衛だもんな。

 

「レピオス、薬を盛られたらしいんだけど、何かは分からないんだ。挨拶の時から顔色は悪かったけど、身体は何ともなかったみたい。少しずつ動かなくなってきたらしい」

「なるほど。オクソール殿、こちらに寝かせて下さい」


 オクソールが、レピオスの指示に従う。

 レピオスは、令嬢の顔色を見て口元の匂いを嗅ぐ。

 薬によっては、独特の匂いのする物があるからな。


「レピオス、瞳孔はどう? 脈は?」

「殿下、それはどういった……?」

「え……?」


 この世界ではまだないのか?


 俺はレピオスの邪魔をしない様に、令嬢を寝かせたベッドの反対側に回る。

 首の頸動脈を触ってみる。しっかりとした脈が触れている。

 手首の左右差もない。

 眼瞼結膜を見る。大丈夫だ。

 瞳孔は……、よく分からん。

 ペンライトが欲しいな。

 打診は……このドレスだと無理だな。


 その間に、レピオスがスキャンしている。

 そうだ。スキャンがあるから、全部分かるんだ。


「レピオスどう?」

「毒ではありませんね。一時的に身体の動きを奪うだけでしょう。水分をとって頂いて、身体の外に排出しましょう。時間と共に少しずつ動くでしょう」

「レピオス、後遺症は大丈夫?」

「心配ないと思います。念の為、薬湯を飲んで頂きます」

「まだ小さいし、女の子だから……」

「はい、気をつけて見ておきますよ。オクソール様、令嬢のご両親には?」

「騎士が知らせているはずだ」


 うん。オクソールが指示してくれていたからな。


「リュカ、ここに付いていてくれる? また狙われたりする可能性が、ない訳じゃないから。ボクはオクと一度戻るよ」

「はい、分かりました」

「何かあったら、すぐに教えてね」

「はい。殿下も、念の為お気をつけて」

「うん。ありがとう。レピオスじゃあ、お願い」

「はい、畏まりました」


 俺はオクソールとユキと一緒に戻る。


「殿下、どう言う事でしょう?」

「うん。ボクじゃなくて、令嬢が狙われてたね」

「あの令嬢はどちらの?」

「えっとね、衛生管理局局長のアイスクラー侯爵家のご令嬢だ」

「衛生管理局ですか」

「うん。犯人も薬に詳しい人かな?」

「かも知れません。アイスクラー侯爵家と言えば、医療院や薬店も経営してます」

「へえ、手広くやってるんだ。敵は少なくない、て事かな?」

「ですね。ところで殿下」

「なぁに?」

「ユキは、転移できるのですか?」

「え!? 転移? ユキ、そうなの?」


 俺の横を歩いているユキに聞く。


「リリ、今頃何を言っている」


 げっ……気付かなかったぜ。

 そう言えば、さっきも風が収まったらユキがいたよな。

 あれ? 辺境伯領の時もそうか。一瞬で港まで来たよな? ユキ、スゲーな!


「オク、ユキはさすが神獣だね」

「はぁ……殿下、今更ですね」

「まったくだ」


 あれ、呆れられちゃったよ。


「殿下!! ご無事ですか!?」


 あ、セティだ。もしかして、騒ぎになってる? セティに状況を説明した。


「それで、アイスクラー侯爵は?」

「はい、部屋でお待ち頂いております」

「じゃあ、ボク説明するよ。騎士団の話はまだ聞けないのかな?」

「はい。まだ取調べができておりません」

 

 そっか……まだ時間が掛かるかもな。


「そうだ、侍女は?」

「はい。控室におりましたので捕らえております」


 んー、先に父と情報を共有する方がいいか? と、思ってセティを見る。


「はい。先に陛下と話される方が宜しいかと」


 何も言わないのに、分かるのかよ。

 セティ、恐るべし!

 忘れちゃいけない、セティはニルのパパだ。 


 セティに先導されて、オクソールとユキと一緒に父の執務室に来た。


「リリ! 心配したわ!」

「母さま、大丈夫です」

「ユキが守ってくれたの? 有難う!」

「当然だ」


 ユキったら男前だね。母に抱きつかれてるよ。ユキのモフモフは最高だからね。


「で、リリ。どうなっているんだい?」

「はい、父さま」


 俺は経緯を説明した。


「なるほど、リリはよく気付いたね。しかし、近くにいる騎士にどうして言わなかったのかな? 危険なのは、リリも同じだからね」


 まあ、そうなんだが。

 

「はい、父さま。すみません」

「リリ、シグフォルス侯爵とジェフティ侯爵の子息とは仲良くなったのかな?」


 誰だそれ? コテンと首を傾げる。


「殿下、あの時私に、知らせに来て下さったご子息です」

「ああ、アースとレイだ。父さま、あの二人はギラギラしてなかったので、普通に話せました」

「ギラギラ?」

「はい。ボクに取り入ろうと、ギラギラしてない」

「ああ、そう言う事か。彼ら二人も協力してくれたそうだから、改めて招待でもしようか?」


 まあ、どっちでもいいさ。


「あれ? リリは興味ないみたいだね」

「父さま、お任せします。ボクはどっちでも良いです」

「リリ、そんな事を言ってると、お友達ができないわよ?」


 まあ、母の気持ちも分かるが、なんせ中身はおっさんだからな。ぶっちゃけレピオスと話してる方が楽なんだよ。まあ、いっか。


「では、母さま。二人にもお礼を言っておきたいです」

「そうね。そうしましょう」

「父さま、アイスクラー侯爵に説明は?」

「ああ、セティに頼むよ。リリも同席したいのかい?」

「いえ、特には。セティがしっかり説明してくれるなら、それで良いです。

 でも、令嬢は暫くレピオスが付いて治療します」

「殿下、もちろんその事もご説明致します。アイスクラー侯爵は、医療院を経営なさっておられるので、そちらに移動なさりたいかも知れません。令嬢は、動かせる状態ですか?」

「セティ、今日は無理じゃないかな? 意識が戻って、レピオスの許可が出れば良いと思うよ。その時は、ちゃんと症状や治療内容を引き継ぎする様に言って欲しいな」

「はい。畏まりました。では、私はご説明に参りますが、他にはございませんか?」


 俺はないな。

 まだ、何も解明されてないしな。

 それはそうとだな。


「父さま、捕らえた者達は城にはどうやって入ったのでしょう?」


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