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152ーディアーナ

「危ないよ。まだ子供だから力がない」

「気合いだよ! 気合い!」

「気合いなんかで魔物を討伐できる訳ないじゃないか」

「レイの言う通りだよ。アースは剣が得意なの?」

「はい。ずっと稽古してます」

「魔法は?」

「魔法はまだまだです。まだ属性と魔力量を見てもらえていないので」

「ああ、そっか。それは10歳だったね。辺境伯領でね、剣に風属性を付与して斬撃を飛ばす人がいたよ」

「ええ! 超カッケー!」

「アハハ、カッコ良かったよ」

「魔法を剣に付与するのですか?」

「レイ、そうだよ」

「それは興味深いですね」


 その時、ふと目の端に捉えた。淡いブルーのふわふわのドレス。

 あれは、確か……衛生局局長の御令嬢でディアーナだっけか?

 一人でどこに行くんだ?

 そう言えば、顔色が良くなかった。


「ちょっとごめん」

「殿下、どうされました?」

「アイスクラー侯爵の御令嬢が、一人で外に出て行かれた」

「それがどうかしましたか?」

「レイ、子供一人で危なくない? それに、挨拶の時に顔色が良くなかったんだ」

「殿下、行ってみますか!?」


 あー、君達はここにいて欲しいんだな。


「城の中ですから、大丈夫でしょう?」

「うん。アース、でも気になるんだ。ボク、ちょっと見てくる。君達はここにいて」

「殿下、そんな訳にいきません」

「そうです。お供します」

「でも、危ないかも知れない」


 そう話しながら、俺達3人は騒がせない様、目立たない様に移動する。

 フロアを出て、バルコニーから下を見ると、木陰に淡いブルーが見える。


「あ、あそこだ。やっぱ気分が悪いのかな?」

「え? どこですか!?」

「アース、馬鹿だな。あそこの木の影に、ブルーのドレスが見えてるだろう?」

「レイ、馬鹿とか言うなよ」


 ついて来ていた二人が、同じ様にバルコニーから下を見ていた。

 

「ボク、行ってくるから、君達は戻って。オクソールを見つけて、話してくれない?」

「分かった!」

「殿下、お気をつけて!」


 そして、二人はフロアに戻って行った。

 俺は急いで、淡いブルーが見えている木陰に向かう。

 外階段を使う方が早いな。

 急いで階段をおりて、庭に出る。

 もう少しだ。見えてきた。

 やっぱり、気分が悪いのか? しゃがみ込んでいる。


「ディアーナ嬢、どうしました? 大丈夫ですか?」


 声を掛けると、真っ青の顔で振り向いた。


「リリアス殿下、どうして? 大丈夫です。どうか、お戻り下さい」

「此処は木で死角になってしまうから、危ないよ。控室はどこ? 一緒に行こう」

「申し訳ありません。家を出る時はなんともなかったのですが。気分が悪くて……外の空気を吸おうと出てきたら、身体が動かなくて」

「え!? 身体が動かないの?」

「はい」


 その時、どこから出てきたのか数人の大人達に囲まれた。

 全部で7人か。他に隠れてないよな?


「そりゃ、動けねーさ。あんたの侍女が薬をもったからな」

「薬? お前達なんなの?」


 俺は、ディアーナ嬢を庇い前に出る。

 この子が狙われてたのか。


「殿下、なりません。大事なお身体です。どうか、お逃げ下さい」


 ディアーナ嬢は、動かない身体で、俺の前に出て庇おうとする。


「何言ってんの。放っておけないよ」

「いいえ、放っておいて下さい! 殿下のお身体には、帝国の命運が掛かっているのです」


 子供なのに。女の子なのに。怖いだろうに。

 震えているじゃないか!


「殿下だと!? 知らん振りしてもらえませんかね? 俺達は、そこのお嬢様に用があるんですよ。なぁに、殺したりはしませんよ。少しだけ、一緒にいて頂くだけです」


 こいつら何言ってんだ。言う通りにする訳ないだろ。

 一人の男が、ディアーナ嬢に手を伸ばした。


『エアーシュート』


 ブオッと空気の塊が、男の身体を押し倒す。


「こいつ……! 皇子には怪我させるな! お嬢さんを連れて行くぞ!」


 クソ、そうはさせるかよ!


『ユキ! おいで!』


 俺が心の中で、ユキを呼ぶ。


 シュンッと、小さい竜巻の様な風が起きて、ユキが現れた。


「ユキ!」

「リリ、呼んだか?」

「ユキ、こいつら捕まえて! 殺したらダメだよ!」

「分かった!」


 ディアーナ穣は、力尽きたのかその場に崩れ落ちた。

 俺は、辛うじて支え抱き寄せた。

 

「なんだ!? どっから来た!」

「ヤベーよ! 豹だろ!?」

「早く、お嬢さんを捕まえろ!」


 ユキが、男達を倒して行く。騎士団や領主隊相手でも、あっと言う間に倒したんだ。こんな奴ら瞬殺だ。

 

「殿下!!」

「オク! レピオスを連れてきてもらって!」

「殿下、これはどう言う事ですか!?」

「アイスクラー侯爵の令嬢が襲われたんだ! 侍女が令嬢に薬を盛ったらしい!」

「分かりました!」 


 オクソールは、一緒に来た騎士達に指示を出していく。


「殿下、参りましょう」


 ユキが倒した男達を、騎士達が拘束している。

 俺はもう一度、辺りを見渡した。

 もう、他にいないよな?

 その時だ。近くの木の上で何かが光った。


『エアーインパクト』


 ――ドサッ!!


 俺が、片手をかざし、風魔法を放つと男が落ちた。

 やっぱりだ。最初から、なんとなく視線を感じてたんだ。

 警戒しといて良かった。


「拘束しろ!」

「はッ!」


 オクの指示で、騎士が拘束に走る。

 ……と、あれれ。例の二人の5歳児、見に来たのか。柱の陰から、ヒョコッと顔だけ出してる。

 近くの一人の騎士に頼む。


「ねえ、あそこの柱の陰に男の子が二人いるんだ。危ないから、ご両親のところまで連れて行ってあげてほしい」

「はッ、殿下。畏まりました!」


 騎士が走って行く。

 これで、大丈夫か。


「オク、控室に行く?」

「いえ、直接レピオス殿のところへ。身体が硬直してきています。殿下はお戻り下さい。」

「何言ってんの? ボクも行くよ!」

「では、殿下。急ぎます。ユキ、殿下を」

「分かった」


 オクが令嬢を抱き上げて走る。その後ろをユキに乗って走る。


「殿下! ご無事ですか!!」

「リュカ! ボクは大丈夫!」

「驚きました!」

「ボクじゃなくて、令嬢が狙われたんだ!」

「御令嬢が!?」

「オク、城にどうやって入ったんだろう?」

「まだ、分かりません。拘束した者を取調べます。あと、侍女も拘束している筈です。

 リュカ、先に行ってレピオス殿に知らせてくれ! 薬で身体が硬直していると!」

「はい! 分かりました!」


 リュカが、あっと言う間に走り去って行った。


「おー、リュカ早い」

「狼ですから」

「そうだった」


 リュカも獣人だって、忘れてたわ。


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