表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

149/442

149ーお世話になりました

「んん〜…… 」

「殿下、おはようございます」

「ニル、おはよう」

「ご用意して、食堂に参りましょう」

「うん、ニル」


 ユキも、のそっと起きてきた。

 この邸で食べる、最後の朝食だ。

 今日、俺達は転移門を使って城に帰る。

 騎士団もいるので、今日は俺が魔力を流す。

 だから、転移門から帰るのは俺が1番最後だ。


「殿下! おはようございます!」

「シェフ、おはよう!」

「ニルズさんとテティさんから、沢山食料を頂きましたよ」

「それは良かった。こっちの食べ物はお城にはないもんね」

「はい。卵や、チーズ等は定期的に頂こうかと」

「そうなの?」

「ですので殿下、またいつでも来れますよ」

「うん、シェフありがとう」

「リリ、おはよう」

「兄さま、おはようございます!」

「さあ、食事を頂こう。シェフ、頼んだよ」

「はい! お任せ下さい」


 クーファルと一緒に食堂に入ると、既に皆揃っていた。


「クーファル殿下、リリアス殿下、おはようございます」

「お兄様、おはようございます。リリ。おはよう」

「アラ殿、姉さま、おはようございます」

「今朝はリリアス殿下がお好きな、クロックムッシュです」

「シェフ、ありがとう」

「クロックムッシュを、初めて食べたのは最近なのに、もう懐かしい気がしますね」

「ああ、アスラール。本当に」

「こちらの料理人は、皆作れますので」

「シェフ、そうか…… また作ってもらおう」

「ん〜! シェフ、おいしい〜!」

「殿下、有難うございます!」

「本当に食事が豊かになりましたわね」

「ええ、母上。ニルズとテティも頑張ってくれてます」

「アスラール、私の知らない料理が、沢山あるみたいだから作ってもらわないと」

「母上、少しずつですよ?」

「アスラール、分かっているわ」

「クーファル殿下、フィオン様、リリアス殿下。邸の者や、領主隊がご挨拶をしたいと申しておりまして」

「辺境伯、大袈裟にしたくはないのだが」

「殿下、皆感謝をお伝えしたいのです」

「私達は、出来る事をしただけだ。それに、リリのお陰でいつでも行き来できるようになった事だし」

「殿下、お願い致します。お別れを言わせてもらえませんか?」

「フィオン、リリ?」

「お兄様、構いませんわよ」

「…………」

「リリ? 無心で食べてるね。聞いていたかな?」

「……ゴクン。兄さま、ボクもみんなにありがとうを言いたいです」

「じゃあ、辺境伯。少しだけ。またフィオンの事でも来るからね。本当に大袈裟にしたくないんだよ」

「はい、殿下。有難うございます」


 ま、いいじゃん。

 また直ぐに来たりしてな〜。


 食堂を出ると、オクソールとリュカが待っていた。


「クーファル殿下、フィオン様、リリアス殿下、おはようございます」

「オクソール、もう準備は出来ているかな?」

「はい、クーファル殿下。いつでも、出発できます」

「殿下、それより大変な事になってます」

「リュカ、なんだ?」

「お邸の前庭に、領主隊だけでなく領民まで集まってます!」


 邸を出て、前庭に降りる階段に出ると、前庭に領主隊が整列しているのが見えた。

 その後ろには、領民たちがいる。ニルズやテティの顔も見える。

 領主隊隊長のウルが1番前の中央にいた。ウルがこっちに一礼して領主隊や領民達の方を振り返り、一同を見回しておもむろに笛をふいた。


 ーーピピーーー!!


 同時に領主隊が一斉に、右手を胸に持ってくる。帝国の敬礼だ。


 ーーピピッ!!


 ――有難うございましたッ!!!


 打ち合わせでもしたのか?

 領主隊と領民達が、一斉に大きな声で言った。

 ヤベ、泣きそうだ。


「兄さま」

「お兄様」

「ああ…… 」


 クーファルがゆっくりと、階段ギリギリまで前に出る。


「皆、有難う。大変、世話になった。私達は、この地を、この地の民達を誇りに思う。

 良い街だ。この地はまだまだ良くなる。

 初代皇帝と初代辺境伯が守り抜いた地だ。その縁は今も繋がっている。

 この地から帝国全土へ、新しい風を吹かせてくれ。更なる繁栄を!」


 ――おおーーッ!!!!


 空気が震えた。

 クーファル、カッケー!! 俺には真似できねーわ。

 俺がクーファルを尊敬の眼差しで見ていると、領主隊の後ろからニルズの声が聞こえてきた。


「リリ殿下! 待ってるからなー! また来てくれよー!!」


 おいおい、ニルズ。恥ずかしいから、止めてくれ。


「フィオンさまー! 奥様を助けてくれて有難うー!!」


 この声はテティだ。似たもの夫婦だ。


 領民達が口々に叫びだした。


 ――有難うー!

 ――また来てさくださーい!

 ――クーファル殿下、カッコいいー!


 ん? カッコいいて今言う? 確かにクーファルはカッコいいけどさ。


「リリ、手を振ってあげなさい」


 クーファルに言われて、俺は手を振る。

 また、絶対に来よう。

 アスラールと領地を探検しよう。

 ニルズと、海に出よう。

 次は、夫人と沢山遊ぼう。


「さあ、城に帰ろう。父上とリリの母上が待ってる」

「はい、兄さま」



「これで最後だね。」


 俺は辺境伯邸の地下にある、転移門に魔力を通している。

 騎士団30人、フィオンやレピオス、シェフやお付きの者達、騎士団と一緒にケイアも既に転移させた。それも何と、馬や馬車もだ。

 邸の裏に搬入口があるんだ。そこから直接、馬や馬車を入れた。階段にも通れるように取り敢えずだがスロープのようにしてもらった。また、後日ちゃんとした物を作るそうだ。城の方でも同じ事をしてくれている。

 俺が転移門を修理した時に容量を大幅にアップしておいたんだ。それこそ、もしもまたスタンピードが起きても大丈夫なようにな。

 ま、向こうに付いて転移門から捌ける事を考えて、少し時間を空けないといけないけどな。次々と転移させてしまうとつっかえてしまう、て事だ。

 残っているのは、クーファルとソール、オクソールとリュカ、ニルとユキだけだ。


「辺境伯、世話になった。フィオンの事はまた連絡があるだろうから、それを待ってくれるかな」

「はい、クーファル殿下」

「辺境伯、夫人、これからだ。まだまだ、これから本当に幸せにならなければ。

 この領地もまだまだ発展させないとな。期待しているよ」

「はっ! クーファル殿下」

「さあ、リリ帰ろう」

「はい、兄さま」


 クーファル達と転移門の中央に立つ。


「アラ殿、アリンナ様、アスラ殿、アルコース殿。お世話になりました!」


 俺は転移門に魔力を通した。

 転移門が光り、俺達も光に包まれる。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 人は転移門から帰るとして… たくさんあるであろう荷物も転移門??? 何より、馬車や馬はどうしたのでしょうか???
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ