147ー作ったよ
「……ふわぁ〜……」
いつもの様に、俺は昼寝から目が覚めた。
いつもの様に、ニルが言う。
「殿下、お目覚めですか?」
「うん、ニル」
いつもの様に、ベッドからおりてソファーに座る。
「殿下、りんごジュースどうぞ」
「ニル、我も」
「はい。ユキもありますよ」
いつもの様に、ユキとりんごジュースを飲む。
「殿下……また、いつでも来れます」
「うん……グシュ……」
いつもの様には、笑えなかった。
やっぱ、ちょっと寂しい。滞在が長かったからな。
「リリ、起きてるかしら?」
ヤベ、フィオンだ。
「殿下!」
「うんッ、ニル!」
ニルと2人で、慌てて涙を隠す。
「……リリ、ニル」
あ……バレバレか?
フィオンが入ってきて、そぅっと抱き寄せられた。
あれ? いつもの、ガバッとじゃないぞ? どうした? フィオンよ?
「リリ、いつでも来れるわ。それも、リリのお陰よ。私が笑顔で帰れるのも、リリのお陰。リリ、ありがとう。また、一緒に来ましょうね」
「ねえさま……! うぇッ……ヒグッ……」
「姉様が嫁ぐ地を、好きになってくれて嬉しいわ」
「姉さま……! やっぱ嫌です!」
「リリ……!?」
「姉さまと離れるのは、嫌です!」
「リリ……! まだまだ先よ。それまで、沢山一緒にいましょうね」
「姉さま!」
俺はフィオンに抱きついた。
やっぱ、姉なんだよ。
大好きな、大切なねーちゃんだ!
「リリ、起きたかな?」
ポンッとルーが現れた。
「ルーて、本当に空気読まないよね」
「なんだよ! ボクほど空気の読める精霊はいないよ?」
「え、鳥さんじゃなくて?」
「リリ、そのくだりはもういい」
「あらら」
さて、俺は座ってりんごジュースを飲もう。
「フフフ、リリはルー様と本当に仲良しなのね」
「「…………」」
「え? あら? リリ、姉様は何か変な事言ったかしら?」
「フィオン、僕はリリに揶揄われているんだよ?」
「ルー様、それも仲が良いからこそですわ」
「ま、そう言う事にしておいてあげよう」
「ルー様、リリ、お兄様が起きたら部屋に来るようにと、仰っていたわ」
「はい、姉さま。ルー、行こう。魔石買ってきたんだ」
「そうか、じゃあ早速行こう」
フィオンはそれを伝えに来てくれたのか?
何か用事だったんじゃないのか?
さっさと部屋に戻って行ったからいいか。
「兄さま、リリです」
俺とルーとリュカも一緒に、クーファルの部屋にやってきた。
「ルー様、リリ。早速、作ってしまおう」
「はい、兄さま。ルー教えて」
「ああ、買ってきたのを見せてよ」
ソールが魔石と、転送の道具に使うつもりの小箱を持ってきた。
「うん。いいね。リリ、マジックバッグと似た感じだ。この小箱にだな…………」
ふむふむ。ルーに教えてもらった。
早速、やってみよう。俺は魔石を手にした。
「リリ、分かったのか?」
「うん、なんとなく」
「なんとなくで出来るのか?」
「ん〜、多分」
ルーが疑いの目で見てる。
「リリ、本当に分かったのかな?」
「兄さま、大丈夫です」
俺は、魔石を小箱の上にのせて、魔力を込める。
ほんのちょっと魔力を込めただけで、魔石が光りだした。
もう少し魔力を込めると、小箱ごと光りだした。
光が小さくなって消えた。よし、出来上がりだ。
「うん、できた!」
「どれどれ」
ルーが魔石のついた小箱をじっと見る。
「うん、完成だな」
「じゃあ、ルー。城の分も作ってしまうよ。出して」
「リリ……なんで分かったんだ?」
「話をしただけで、盛り上がっていた父さまが、欲しがらないワケないじゃん」
「それもそうだ。じゃあ、頼むよ」
ポイっとルーが、豪華な小箱と光の魔石を出してきた。
「ルー、魔石はこれなの?」
「ああ、変か?」
「そうじゃなくて、これ光属性でしょ? 兄さまや姉さまは使えないの?」
「リリ、魔石を良く見な」
なんだよ。どう見ても、光属性の魔石だろ?
「リリ、よく見てごらん?」
「兄さま」
なんだ? クーファルまで。
言われた通りに、魔石をじっと見る。
そうだ、俺って鑑定できるんだった。
「あ……兄さまこれ!」
「分かったかな?」
「はい。兄さまが言ってた白金ですか?」
「そうだね。しかし、父上は何を考えているのか」
「クーファル、僕も同意見だ」
「兄さま? ルー?」
なんだよ、俺は分からんぞ?
「リリ、とてもとても高価な物なんだよ」
「え……」
「ああ、リリ。そうなんだ」
「多分……父上の事だから、リリが作る魔道具だから! とか思っているんだよ」
は? マジか?
「さすが、クーファルだ。その通りの事を言っていたよ」
マジかよ……。
「ルー、駄目。父さまに返してきて」
「リリ、やっぱそうなるか」
当然だろ!? そんな高価な物を使ってどうすんだよ。
「ほい、じゃあこっちで」
また、ルーがポイッと魔石を出した。
「ルー、何? どう言う事?」
「リリが何も言わずにそれを使ったら、これは出さない約束だったんだ。リリが駄目だと言ったから、こっちだ」
なんだよ、それは!
「あー、リリ。父上は狡いね」
「兄さま、本当ですね。ルー、これはクリスタル?」
「ああ、そうだ。皆が使える様にな」
「分かった」
俺はクリスタルを小箱にのせて、魔力を込めた。
「ああ、リリ。言ってた事だけどね。取り敢えずだけど、なんとかなりそうだよ。
また後でちゃんとした物を作るそうだ。」
「兄さま、そうですか! ありがとうございます」
「後々、その方が便利だろう? リリが言ってた様に万が一の時にもね。対応できるようになったのなら使わないとね」
やったね。クーファルが提案してくれて何とかなりそうだ。