表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

146/442

146ーありがとう!

 無事に買い物を済ませて、クーファルと手を繋いで街を歩く。

 なんか、やたらと見られてる? 視線を感じるぞ?


「兄さま、見られてますか?」

「ああ、そうだね」

「殿下、皆クーファル殿下とリリアス殿下だと、分かっているのですよ」

「アルコース殿、そうなの? なんで!?」

「アハハ。リリは来る時に、辺境伯の馬に一緒に乗っていただろう? その後も何度も馬で通っているからね」

「兄さま、何度も通りましたか?」

「ああ、通っているよ」

「殿下、リリアス殿下は殆ど寝ていらしたので」

「ああ、オクソール、そうか。リリは覚えてないか」

 なんだと!? 俺は寝ている姿を、街の人達に見られていたのか!?


「兄さま! 恥ずかしいです!」

「アハハ、リリ。もう遅いよ」


 マジかよー! 俺、寝ながら涎垂らしてなかったか!?


「リリアス殿下、大丈夫です」

「オク、大丈夫じゃないよー」

「大丈夫です。可愛らしいと評判でしたから」


 マジかよ……最悪じゃん。

 

「ねえ」


 急に服の袖を引っ張られた。


 なんだ?

 少し驚きながら、振り返る。

 そこには俺より小さい女の子が居た。


「なぁに? どうしたの?」

「リリ殿下?」

「うん。そうだよ」

「これ、うちのばぁばがリリ殿下にって」


 小さい女の子が差し出してきたのは、小さなピンクの花だ。


「え? ボク?」

「うん。守ってくれて、美味しいものを見つけてくれてありがとう。て、言ってた」

「お利口さんだね。ありがとう。よく覚えたね」

「うん。ばぁばに何回も言わされたから」


 アハハハ、何回も言わされたんだ。


「ばぁばはどこにいるの?」

「あそこ」


 女の子が指差す方を見ると、お花を売っているお婆さんがいた。


「一緒にばぁばのとこに行こうか」

「うん」


 俺が女の子と、手をつないで一緒に近付いて行くと、お婆さんがお辞儀をした。


「ばぁば、リリ殿下が来たよ!」

「こんにちは。お花をありがとう!」

「リリ殿下、こちらこそ有難うございます」

「こんにちは、リリに花をくれたの?」

「まあまあ! クーファル殿下まで!」

「有難う。売り物じゃないのかい? リリが貰ってもいいの?」

「はい! こんな花で申し訳ないですが、宜しければどうぞ」

「有難う。リリ、良かったね」

「はい、兄さま。お婆さん、ありがとう!」


 俺はニッコリしながら礼を言う。


「まあまあまあ! なんてお可愛らしい!」

「あ、ありがとう……?」

「クフッ」


 リュカだ。こいつはいつも吹き出してる!


 ――クーファル殿下! リリ殿下! ありがとうー!

 ――有難うございます!

 ――また、いらしてください!


 お婆さんと話した事がきっかけになってしまったのか、彼方此方から声がかかる。

 もしかして、皆、遠慮してくれてたのか?


「兄さま、どうしましょう?」

「アハハ、困ったね」

「困りました」


 どーすっかなー……


「兄さま、抱っこしてください」

「どうした?」


 クーファルに抱き上げてもらう。

 俺は、もらった花を持った手を上げた。


「ボクの方こそ、ありがとうー! 楽しかったよー! また、来るからよろしくねー!!」


 大声で言ってやったぜ。言い切ってやったぜ。めちゃくちゃ恥ずかしいけどな!


 ワァーー! と、声が上がった。

 ――殿下ー!

 ――まってるぜー!

 ――ありがとうー!


 クーファルに抱っこしてもらいながら、馬車に戻る。


「ククククッ。リリ、兄さまは驚いたよ!」

「兄さま、だって……」

「まあ、仕方ないね」

「はい」

「兄さま。今度来る時は、変装してこなきゃッ!」

「アハハハ! それは良い考えだ!」

「いや、殿下。バレバレですって」

「リュカ、うるさい」


 もう、リュカは一言多いんだよ。



 邸に帰ると、ニルズとテティが待っていた。

「よう! リリ殿下! もう、帰るんだってな!」

「うん! おっちゃん! 明日、帰るよ!」


 俺は走って行って、ニルズに飛びついた。


「アハハハ! どーした!? やっぱ帰るのは嬉しいか!?」


 ニルズはそのまま抱き上げてくれる。


「おっちゃん、ボクはまだ5歳だよ? そりゃ、母さまが恋しいよ」

「あー、そうだよな」

「でもね、おっちゃん。今度は、母さまと一緒に来るからね! 母さまも、おっちゃんに会いたいって言ってた!」

「そうかそうか! そうだな! 今度は一緒に来るといい! 色々案内してやるよ!」

「うん! おっちゃん! ありがとう!」

「もう、あんたは言葉使いを気をつけて、て言ってるのに!」

「テティ、いいんだ! おっちゃんと、テティはそのままがいい!」

「リリアス殿下……!」

「おっちゃん、テティ! ありがとう!!

 2人に出会えて、本当によかった!」

「殿下!! 本当にまた来てくださいね! 待ってますからね!」


 あらら、テティ泣いちゃったよ。


「テティ、泣かないでー! おっちゃん、どーすんの!?」


 て、おい! ニルズもかよ!?

 いい歳したオッサンが泣くんじゃねーよ!


「リリ殿下! 寂しくなるよー! 俺達の子供は、もうでっかくなっちまったからな。殿下は孫みたいなもんなんだよ。

 楽しかったぜ! また、一緒に海に出ような!」

「うん! おっちゃん!」

「殿下、シェフに干した魚や昆布とか、色々渡しておきました。お城でも、食べてくださいね」

「テティ、ありがとう。お手紙書くね」

「まあ! 殿下、待ってますね」

「うん! テティ、ありがとう!」


 俺はニルズに抱っこされながら、2人の首に手を回して抱き寄せた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ