142ーバーベキュー
朝、シェフと相談して料理人達に伝えておいたバーベキューだ。
もう前庭は競技場から、バーベキュー場に変わっている。
料理人達が、肉と野菜を串に刺して、どんどん焼いていく。
クリームシチューも大きな鍋ごと並べてある。
あとは、トマト味の魚介のスープパスタだ。
料理人達が、パスタの麺を朝から作ってくれていた。
おにぎりもズラッと並べてあって、その横にはパエリアだ。
「さあ! 皆、どんどん食べてくれ! たくさん用意してあるからな! 遠慮はいらないぞ!」
アスラールが観客達に呼びかける。
小さい子供がワーッと肉に集まる。
「ワイン開けるぞー!!」
アルコースが叫ぶと、大人達がワイン樽に群がる。
「兄さま、お祭りですね!」
「ああ! どこでも最後はこうだ!」
「兄さま! 楽しいです! 平和です! 良かった!」
「ああ、リリ。良かった!」
クーファルに頭をクシャクシャッと撫でられた。
「殿下、シェフにもらいに行きましょう!」
「うん! オク、行こう! ユキ、行くよ!」
「リリ、我は肉がいいぞ!」
「殿下! ユキ! 行きますよ!」
「リュカ! 待って!」
オクソールに抱き上げられたまま、人混みを移動する。
「リリ殿下!」
「あ! おっちゃん!」
ニルズだ。俺の2番目の心の友だ。1番はもちろんレピオスだ!
「おっちゃん来てたの!?」
「ああ! そりゃあ見にくるさ!」
「クーファル殿下、リリアス殿下!」
「テティ! 2人共来てるの全然気づかなかったよ!」
「俺達は酒飲みながら、ワイワイと見てたさ! それにしても、オクソールさん! スゲーな! 飛び抜けてたよ!」
ニルズはまた、オクソールの肩をバシバシ叩いている。無敵だぜ。
「ハハハ、有難う御座います」
「ニルズさん! 俺は!?」
「なんだよ、リュカ! お前、盛大に転けてたじゃねーか!」
「キャハハハ! リュカ転けてたねー!
ブヘェッ! て転けてた!」
「殿下もニルズさんも酷いッスよー!」
「ハハハ! 確かにリュカ、転けてたな!」
「クーファル殿下まで!」
たくさん、応援した!
たくさん、食べた!
たくさん、笑った!
俺、前世でもこんなに楽しかった事はないかも知れない。
最近、5歳児にかなり引っ張られてるが、それも良いかも知れない。
腹一杯たべて、笑って、平和が一番だ!
「エヘヘ」
「寝られましたね」
「ああ、はしゃいでいたからな」
「クーファル殿下、私はこのままリリアス殿下を、部屋にお連れします」
「ああ、オクソール頼んだよ」
「いい顔して、寝てるじゃねーか」
「本当に。可愛らしい殿下ですね」
「では、皆さんはゆっくりして下さい」
オクソールが、寝てしまった俺を抱っこして、邸に歩いて行った。
リュカが、後を付いて行く。
「ニルズ、テティ。リリが喜んでいたよ。世話になったね、有難う」
「クーファル殿下、とんでもないです!
世話になったのは、こっちの方だ!」
「そうです。クーファル殿下。勿体ないお言葉です」
「またリリが来た時には、相手をしてやってくれるかい?」
「もちろんです! 殿下、もう帰られるのですか?」
「ああ、テティ。森の調査も終わったし、転移門も修復したからね。」
「転移門ッスか。俺らが若い頃に使えなくなったと聞いてますが?」
「そうね。たしかスタンピードの時ですよね?」
「ああ。リリが修復したんだ。」
「リリ殿下がですかい!?」
「まだお小さいのに……!」
「これからは、いつでも来る事ができる。
リリがまた来たら宜しく頼むよ。」
「殿下、もちろんですよ!」
「はい! いつでもお越しください。リリアス殿下なら大歓迎です」
「ニルズ、テティ、有難う」
「……んん〜……」
「殿下、お目覚めですか?」
「うん、ニル。またオクかな?」
「はい。今日もオクソール様が」
オクソールよ。毎日本当に有難う。
ベッドから、のそのそと下りてソファーに座る。
大きいままのユキが付いてきて、俺の足元に腹ばいになる。
「殿下、りんごジュースをどうぞ。ユキも」
「ニル、ありがとう」
「ああ、すまない」
「……ふぅ……」
「殿下、疲れましたか?」
「ううん。なんかね。終わったなぁ、て思って」
「終わりましたね」
「うん。後は帰るだけだね。」
「はい。殿下。長かったですね」
「うん」
「殿下?」
「あぁ、なんでもないよ」
「リリ、また来ればよい」
「ユキ、そうだね」
「リリ、明日1日は騎士団が準備をする。明後日、帰ろうか」
「はい、兄さま」
俺達は、夕食を食べている。
ここでの夕食も明日で終わりだ。
「クーファル殿下、フィオン様、リリアス殿下。本当に有難うございました」
「辺境伯、役に立てた様で良かったよ」
「クーファル殿下。領地を、我が家族を、救って頂きました。感謝しております」
「父上、寂しくなりますね」
「アスラール、本当だな」
「はい兄上、寂しくなります」
「アラ殿、アスラ殿、アルコース殿。また、いつでも来れます。それに、定期的に魔力の補充にも来ます。」
「リリアス殿下。そうですね。いつでも、お越しください!」
「アスラ殿、ありがとうございます!」
「殿下方、この後少し宜しいでしょうか?」
「辺境伯、ああ。分かった。結論が出たのだな?」
「はい、クーファル殿下」
ん?何だ? 何だ?
俺達は食事を終えて、応接室に来ている。
「失礼致します」
夫人が、レピオスに付き添われて入ってきた。
足取りもしっかりしてきた。
もう安心だろう。
「夫人、元気になられましたね!」
「ええ、リリアス殿下。有難うございます」
「レピオスどうかな?」
「はい、殿下。もう、薬湯も必要ないでしょう。後は時が癒してくれるでしょう」
「良かった」
本当に良かった。あのドレスの下の血溜まりを見た時はゾッとしたが。
「ご報告がございます」
「辺境伯、聞こうか」
なんだ? 一体なんだろう?
もう問題は満腹だぞ?