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141ー最終決戦

 領主隊は、両手首に赤の紙風船をつけ、赤の棒。

 騎士団は、両手首に碧の紙風船をつけ、碧の棒。


 前庭にテニスコート位の大きさの長方形が描かれている。

 最初は、左右両側に分かれて、地面にうつ伏せの状態からスタートらしい。


「兄さま、これは何分逃げるんですか?」

「10分だよ。時々10分かからずに、騎士団が勝ってしまう事もあるんだよ」

「えっ! 騎士団凄い!」

「ああ、騎士団は帝国の精鋭達だからね」


 騎士団、スゲーな!

 騎士団も領主隊も、それぞれ気合を入れている。


 ――勝つぞー!

 ――おーー!!


 領主隊だ。

 前世でもやってたよなぁ〜。円陣組んでさぁ。


 ――きしだーん!

 ――おーー!!


 アハハッ! まんまじゃねーか!

 辺境伯邸の前庭に、野太い声が響き渡る。


「みんなー! 頑張ってー!!」


 ――おぉーー!!


 俺も声援を送る。 その場でピョンピョン跳ねながら、両腕をブンブンと大きく振る。



 審判はアスラールだ。

 地面に描かれている、長方形の外から合図をするらしい。

 危ないもんな。


「分かっているだろうが、顔や頭を殴るのは反則だからな!」


 ――おうっ!!!!


「Ready……」


 アスラールが旗を上げた。 

 騎士団も領主隊も、全員うつ伏せだ。


「go‼︎」


 アスラールが同時に勢いよく旗を振り下げた。

 同時に、うつ伏せだった隊員達が一斉にガバッと起きて走り出した。


 パフン! パフン! パフーン!


 これは、隊員達が棒で手首に着けている紙風船を狙って叩いた音だ。

 当たっても痛くないように作ってあるのだろう。ふにゃふにゃらしいよ。

 音がちょっと、おマヌケ。


 しかし……

 これは……

 どっちも、身体能力が半端ない。

 オクとリュカなんて、躱すのが早くて紙風船にかすりもしない。

 あ、シェフもだ。ヒョイ、ヒョイと上手く躱している。


「ブヘェッ!!」


 あ! リュカがズザッと転けた!

 あいつは何でいつも転けてるんだ!?

 周りにいた領主隊の隊員達は、転けたリュカの手首を狙って叩く。

 が、リュカはあっという間に、立ち上がって反撃に出た。

 油断していた領主隊は、慌てて回避するがリュカに紙風船を割られてしまう。

 オクソールとシェフは、涼しい顔をして飄々と避けている。


「兄さま、オクとリュカは勿論ですが、シェフは凄いですね」

「ああ、本当に。何でシェフを希望したのか分からないな。あの様子だと今もしっかり鍛練しているのだろう」


 今、両方の紙風船が残っているのは、オクソール、リュカ、シェフ、そして両隊の隊長、副隊長を含めて数人。

 あー、そっか。彼等は無駄な動きがないんだ。

 若い隊員達は体力も勢いもあるが、動作が大きいので分かりやすい。

 狙いやすいし、当てやすい。


「兄さま、これどうするんですか?」

「リリ、何がだい?」

「こんなの、オクとリュカには、当てられませんよ」

「そうだろう? 凄いよね」


 いや、クーファルそうじゃなくてさ。

 まあ、確信犯だからな。


 ――ピピーー!


 終了の笛がなった。


「手首の紙風船が残っている者だけ立て!

後はしゃがんでくれ!」


 あー……もう一目瞭然だ。

 オクソールとリュカ、シェフはもちろん立っている。

 領主隊で立っている者が隊長のウルを含めて3名。

 騎士団で立っている者が団長、副団長含めて12名。

 アスラールが声高に言う。

 

「この競技、騎士団の勝利!

 よって、今回の決戦は騎士団の勝利!!」


 ――おおーーーッ!!!!


 騎士団の隊員達が全員立ち上がって叫んだ!


「「殿下ー!!」」

 騎士団の隊員とリュカが叫びながら、走って来た。


「おめでとうー!!」

「よくやった!!」


 俺もクーファルも、立ち上がって勝利を讃える!

 観客からも拍手が起こる。


「殿下! 行きましょう!」

「えッ! リュカ⁉︎」


 俺はリュカに手を引かれて、中央に出る。


 ――殿下ー!

 ――やりましたー!

 ――あー! 殿下! 負けましたー!

 ――殿下ー!


 皆、口々に半分叫びながら、やって来る。


「皆! カッコよかったよー! おつかれー!!」


 ――おーーッ!!


 俺はオクソールに高く抱き上げられた。


「殿下、危ないですから」

「キャハハハ! オク、ありがとう! みんな! すごい! すごいよー!!」


 オクソールの肩に乗せられた俺は、隊員達とハイタッチだ!


「にーさまー! にーさまも早くー!!」


 クーファルを呼ぶ。


「ユキー! 兄さま連れてきてー! おいでー!!」


 俺がそう呼ぶと、ユキがクーファルを押しながらやってきた。


「騎士団も領主隊も、よくやった!」


 ――おーー!!!!


 クーファルが、隊員達の輪の中に押し入れられながら、叫ぶ。


「領主隊! この地を守ってくれ! 頼んだぞ!!」


 ――はッ!!!!


 ズザッ! と、領主隊が片手を胸に背を正す。

 前世だと、敬礼みたいなもんだな。


「騎士団! 帝国を頼んだぞ!!」


 ――はッ!!!!


 騎士団も同じだ。カッケーな、おい!


「みんなー! お昼食べるよー!!」


 ――えぇ〜!!


「ブハハハハ! 殿下、このタイミングで昼飯ですか!?」

「リュカ、だってお腹すいた!」


 隊員達や観客から、ドッと笑いがおきた。


「えッ? なんで?」

「リリ、まあリリらしいよ」

「兄さま、お腹すきませんか?」

「すいたね。さあ、皆で食べよう!」


 ――ハハハハ!!


「さあ! 皆さん! 食事ですよ! 沢山食べて下さい!!」


 シェフはもうエプロンをつけてる。

 手には串にさした焼けた肉を持っている。

 今日の昼食は、バーベキューだ!


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― 新着の感想 ―
[一言] 本当にシェフすごい…仕事が出来る男…!!
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