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140/442

140ー確信犯

 ――ピピーー!


 アルコースの笛が鳴り響く。

 なんと、あっという間だった。

 最後尾から、オクソールとリュカが2〜3回ロープを引いただけで、勝敗が決まってしまった。


「兄さま、これオクとリュカは反則になりませんか?」

「ハハハ、若干そうかも知れないね」


 いや、マジで。若干じゃねーよ。

 こんなの、力の差がありすぎるじゃないか。


 さて、決勝戦だ。

 騎士団は、オクソールとリュカがいる。

 領主隊は、隊長のウルや副団長がいる。


「Ready……」


 アルコースが旗を上げた。

 隊員達がロープを掴む。

 最終決戦だ!

 どっちも頑張れ!


「go!!」


 アルコースが、同時に勢いよく旗を振り下げ、直ぐに離れる。


 ――せーーのッ! せーのッ! せーのッ!


 騎士団も領主隊も同時に、皆ロープを脇にしっかり挟んで引きだした。

 おー! 今度は領主隊も踏ん張っている。


 ――せーーのッ! せーのッ! せーのッ!


 しかし、最初は耐えているだけだった、最後尾のオクソールとリュカが引き始めると、しっかりと踏ん張っていた筈の領主隊が、ズルズルと引きずられ始めて……


 ――ピピーー!


「騎士団の勝利!!」


 ――おぉーー!!


 そりゃそうだよ。

 獣人が2人もいるんだぜ。

 やっぱ反則だよ。


「兄さま、次からはオクとリュカは、出場させたら駄目ですね」

「リリ、何を言ってるんだい? 勝つためには手段を選んではいけないよ?」

「ええー!」


 クーファル、確信犯だったか!?



 騎士団と領主隊から2名ずつ、籠を背負った隊員達が出てきた。

 あ、シェフだ! 籠を背負って出てきた。


「シェフー!! 頑張ってーー!!」


 俺は大声で、応援する!

 シェフが手を上げて応えてくれた。


 両手に一つずつ、ふわふわの球を持った隊員達が31名ずつ出てきた。

 領主隊が赤、騎士団が第2騎士団の色の碧色だ。

 籠を背負った隊員だけ立っていて、後の隊員はしゃがんでいる。


「兄さま、しゃがんでスタートなんですか?」

「ああ。球を入れる者は必ず片膝をついて、しゃがんでスタートだ」


 へぇ〜。そんなルールなんだ。


「兄さま、何分入れられるのですか?」

「3分だ。昔は5分だったらしいんだがね。5分だと、騎士団は皆入れてしまうんだよ。それで最近は3分に短縮したんだ」

「みんな入れちゃうんですか!?」

「そうだよ」


 騎士団スゲー! 想像できねーぞ。


 今度は審判のアスラールが前に出てきた。

 片手に旗を持っている。


「片膝をつけているかー!?」


 ――おぉー!!


「Ready……」


 アスラールが旗を上げた。

 隊員達が、じっと目当ての籠を見る。


「go!!」


 アスラールが同時に勢いよく旗を振り下げ、直ぐに走ってコートから離れる。


 籠を背負った隊員達が、逃げまくる。

 その籠を目掛けて、球を投げる隊員達。


「うわ、痛そう!」

「ハハハ、リリ当たっても痛くないよ」

「兄さま、そうですか?」

「ああ、砂を綿で包んで入れてあるからね」

「そうなんだ」


 シェフが逃げまくっている。

 逃げながら、飛んでくる球をヒョイヒョイと身をひるがえして避けている。


「シェフ、凄い!!」

「アハハハ! 本当に! リリのシェフは凄いね!」


 シェフ、楽しんでる? 遊んでる?

 ヒョイと、片足上げたり、ヒョイと両手を広げたり。

 ヨッ! ホッ! ハッ! と、かけ声までかけている。

 全然、余裕じゃねーか! あれは対戦相手はムカつくぜ!?


 ――ピピーー!


「殿下、数えますか?」


 アルコースが誘いに来てくれた。


「うんッ! 数える!!」


 俺は、アルコースに抱き上げられて、中央へ行く。


 ――リリアス殿下だ!

 ――あー! 殿下!

 ――殿下、かーわいーい!


 見学の領民達から声があがる。恥ずかしいからやめてほしい。


「殿下、真ん中で数えて下さい。俺は騎士団の球を、兄は領主隊の球を1個ずつ上に投げます。どちらかが、無くなったら終わりです」

「うん! アルコース殿、分かった!」

「殿下、殿下! これに乗って下さい! 殿下、小さいから!」


 リュカが台を持って走ってきて、また余計な事を言った。


「もう! リュカ! また!」

「ほら、始めて下さい!」


 アスラールとアルコースが籠を持ってスタンバッている。

 俺はピョンと台に乗った。


「いきまーす!

 いーち!

 にー!

 さーん!

 …………!」


 俺が数えるのに合わせて、球が上に投げられる。


「……

 ごじゅう!

 ごじゅういち!」


 ここで、領主隊の球が無くなった。


「殿下、騎士団が無くなるまで数えましょう」


 アスラールが教えてくれる。


「ごじゅうにー!

 ごじゅうさーん!

 ごじゅうよーん!

 ごじゅうごー!

 ごじゅうろーく!

 ごじゅうなーな!

 ごじゅうはーち!

 ここで騎士団の球も無くなった。


「58対51で、騎士団の勝ちー!!」


 俺が大きな声で告げる!


 ――おおーーー!!!!


 えっ!? 凄くない!?

 それぞれ62個あったんだぜ。

 62個中58個入れるなんて、俺は聞いた事ないぜ!?

 まあ、小学校の玉入れしか知らんがね。

 領主隊だって、充分スゲーよ。


「殿下、有難うございました。次は危ないので、戻りましょう」


 アスラールがそう言って、抱き上げてくれる


「リリ、かわいかったよ」

「兄さま、やめてください。ボクも参加したいです」

「もっと大きくなったらね」

「兄さまは参加しないのですか?」

「ああ、私はしないよ。フレイ兄上はいつも参加するみたいだよ」

「そうなんですか!? あー、でもフレイ兄さまは、ムキになってやってそうです」

「アハハハ。リリ、その通りだね」


 騎士団とオクソール、リュカ、シェフ。

 領主隊から33名の選抜隊。

 両手に赤と碧の紙風船をつけて、剣の代わりのフヨンフヨンの棒を持って出てきた。


 ――領主隊頑張れー!

 ――最後だぞー!

 ――勝てよー!


 領民達が声援を送る。

 さあ、最終決戦だ!


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