表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

139/442

139ー開会

「殿下、おはよう御座います!」


 アスラールと、アルコースだ。


「おはようございます。あれ? アスラ殿。アラ殿はまだ食べてましたよ?」

「ああ、私達はもう食べました。殿下も今日は早いですね」

「うん! だって楽しみだもん!」

「ハハハ、どっちが勝つでしょうね」

「アスラ殿、騎士団は負けません!」

「殿下、領主隊だって負けません!」

「アスラ殿とアルコース殿は出ないですよね?」

「はい、私達は出られません」

「殿下、始まると危ないから、彼方に行きましょう」

「リュカ、分かった」

「殿下、このロープから中に入ったら駄目ですよ」

「うん。リュカ分かってる」

「では、殿下。また後で」

「はい、アスラ殿」


 俺はオクソールとリュカと一緒に、正面の簡易の椅子が並べてあって天幕が張ってある場所に行く。

 よく小学校の運動会で、張ってある感じのパイプ式のテントだ。

 なんか懐かしいなぁ。

 彼方此方から、両方の隊員たちが声を掛けてくれる。嬉しいねー!


 ――殿下! おはよう御座います!

 ――殿下! 勝たせてもらいますよ!

 ――殿下! 騎士団は全種目勝ちます!


「うん! 領主隊も騎士団も、みんな怪我しない様にね! 頑張ってー!」


 ――おおーー!!!!


 隊員達が揃って叫ぶと、雄叫びみたいだ! 圧倒されるよ。


「ねえ、オク。綱引きて3回するんだっけ?」

「はい。16名ずつを2回やって、勝ち残った者で決勝です」

「オクとリュカは別々のチームなの?」

「いえ。勝ちを狙ってますから。リュカと一緒のチームですよ」

「うわ、本当に勝ちにいってる」

「殿下、当然です」

「そうですよ、殿下。今まで騎士団は負け知らずなんですから。ここで負ける訳にいきません」

「オクは良いけど、リュカ頑張ってね」

「殿下、なんですか、それは」

「だってリュカさぁ……」

「あーもういいです! 見てて下さい! 絶対、勝ちます!」


 だってなぁ、リュカは領主隊ではないアラウィンの側近のハイクに、腕相撲で負けてるもんなー。

 と、思い出して邸を振り返ってみる。

 やっぱり、窓から皆んな見てるよ。

 あ、レピオスが夫人に付いていてくれてる。

 手を振っておこう。

 

「殿下、遅くなりました」


 ニルがユキを連れてきてくれた。


「ニル、ちゃんと食べた?」

「はい。食べましたよ。殿下、もう沢山集まってますね」

「そうだね。みんな張り切ってるしね。ユキ、沢山食べた?」

「ああ。美味かった」

「そう。良かった。ここで見るからね。ユキも一緒に見よう」

「リリ、我は出ないのか?」

「うん。ユキが出たら対戦にならないよ」

「本当ですね。楽勝です」

「ねー、ニルも一緒に見れるの?」

「いえ、私はクーファル殿下が来られたら、フィオン様の所に参ります」

「そっか、お願いね」

「はい。大丈夫ですよ」

「そうなの?」

「はい」


 そこへクーファルがやって来たよ。


「リリ、特等席にいるじゃないか」

「兄さま、はい! 真正面です!」

「ハハハ、張り切っているね。ニル、頼んだよ」

「はい、クーファル殿下。ではリリ殿下。私はこれで」

「うん、ニル。ありがとう。お願いね」

「はい、殿下」


 ニルが邸に戻って行った。

 その邸を見上げると、フィオンが窓から見ているのが分かる。


「フィオンねーさまー!!」


 俺は大声で呼びながら、ぶんぶん手を振った。


「プハハッ、リリ。フィオンが困っているよ」


 フィオンが小さく手を振ってくれる。


「でも兄さま。姉さまは手を振り返して下さいましたよ」

「ああ、そうだね。さあ、始まるみたいだよ」



アラウィンが前に出た。


「皆おはよう! 先日、領主隊と騎士団による、森の合同調査が無事に終える事が出来た!

 暫く皆を悩ませていた、原因不明の発熱の原因を解明し、無事に駆除する事ができた。皆、ご苦労であった!

 今日は、恒例の騎士団対我が領主隊の対戦だ!

 領主隊の諸君!

 騎士団の全勝記録を止めるのだ!」


 ――おおーーー!!!!


「騎士団の諸君!

 諸君等の実力を遺憾無く発揮してくれたまえ!」


 ――おおーーー!!!!


 さあ! 始まりだ!


 長い太いロープが用意される。ロープの真ん中に旗がつけられている。

 まず1回目の対戦だ。

 騎士団16名、領主隊16名がロープを挟んで向かい合わせに定位置につく。

 騎士団は団長と副団長がいる。

 審判はアルコースだ。


「Ready……」


 アルコースが旗を上げた。

 隊員達がロープを掴む。

 見物人までシーンとしている。


「go!!」


 アルコースが同時に勢いよく旗を振り下ろし、直ぐに離れる。


 ――せーーのッ! せーのッ! せーのッ!


 騎士団も領主隊も同時にロープを引きだした。


 真ん中につけられた旗が、領主隊の方へ倒れた。

 

「ピピー!!」


 アルコースの笛が鳴り響く。

 1回目の対戦は、領主隊の勝利だ。


「ああ〜! 兄さま、騎士団が負けました!」

「まあ、リリ。これは予選みたいなもんだからね。次はオクソールが出るよ」


 なるほど、次が本命て訳だな。

 ロープが整えられ、隊員達が別の16名と入れ替わる。


「兄さま、オクとリュカです! 1番後ろです!」

「ああ、いつもオクは1番後ろだ」

「そうなのですか?」

「ああ。1番力のある者が、最後尾なんだよ」

「オクとリュカがアンカーだと言ってました!」


 審判のアルコースが真ん中に立つ。


「Ready……」


 アルコースが旗を上げた。

 隊員達がロープを掴む。

 なんか空気がピリピリするぜ。

 たかが綱引きなのにな。

 屈強な隊員達がやると、迫力が違うぜ!


「go!!」


 アルコースが同時に勢いよく旗を振り下ろし、直ぐに離れる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ