133ー顔合わせ
「終わったな。みな、優秀だったね」
「はい、兄さま。まあ、何人か実力不足の人はいましたけどね」
「殿下、全員採用する訳ではありませんしね」
「うん、そうだね。それに、心構えも話せたしね。
兄さま、アスラ殿、レピオス。誰が良いと思いますか?」
俺は決まってるぜ!
「アスラ殿は?」
「殿下、私ですか? 私はアイシャとレイリが良いと思いますが」
「レピオスは?」
「私も同じです」
「うん、そうだね」
「ですよね」
「では、皆様。決定で宜しいですか?」
ソールが確認する。
「はーい」
クーファルとアスラール、レピオスも頷いた。
皆で夕食を食べた。久しぶりに、気持ちが少しすっきりした。
薬師達は1番被害が大きかった。気になっていたんだ。なんとかなりそうで良かった。
「で、リリ。明日、発表するんだろ?」
「兄さま、それはボクではなくて、アラ殿かアスラ殿の役目です」
「ああ、そうだね」
「父上、お願いできますか?」
「いや、アスラール。これは、最初から関わっていたお前がしなさい」
「父上、しかし……」
「いや、お前がいい。次期辺境伯だからな」
うん。俺もそれがいいと思う。最初から仕切っていたからな。
「はい。分かりました。では、リリアス殿下。その後、皆を集めますか?」
「うん、アスラ殿。顔合わせも兼ねてね。それが、いいと思います」
「父上、やっと落ち着きましたね」
「アルコース、そうだな」
うん。なんだか穏やかだ。
雰囲気が違う様な気がする。
気がするだけだよ。俺は分かんないからね。
「リリアス殿下、お願いします」
いきなり振られちゃったよ。
俺は今、薬師達が集まっている部屋にいる。
合否の発表も済んで、顔合わせだ。
不合格だった者は、もう帰途についている。
アスラールとレピオスが一緒だ。
部屋の隅にはリュカもいる。
そこで、アスラールにいきなり振られた訳だ。
「え、最初はアスラ殿でしょう!?」
「いえ、とんでもない! 殿下、どうぞ!」
アスラール、いい笑顔で言うなよ!
「えぇー……じゃあ、ボクから少しだけ。
あなた方は、これまで不遇な環境を耐えて来られました。
腐らず、道に外れずにここまできた人達です。そんなあなた達には、簡単に揺るがない強さがあると、ボクは信じています。
ボクはそんなあなた達を、誇りに思います。
みんな、帝国の要であるこの領地をお願いします! 以上ですッ!」
「「「「はいっ!!」」」」
うん。みんな良い顔だ。心機一転だな。
「今まで、我慢させて、辛い思いをさせて、申し訳なかった」
アスラールが薬師達に頭を下げた。
薬師達が驚いている。領主の長男が、頭を下げたんだからな。
「もう二度と同じ間違いはしない。皆が働きやすい様、全力で対応していくつもりだ。
これからはこのメンバーで頑張ってほしい。宜しく頼む」
「「「「「はいっ!」」」」」
なんか再出発て感じだな。いいんじゃないか?
「今回の募集で合格した者を紹介する」
アイシャとレイリが、その場で立ち上がった。
「アイシャ・ピオネールと、レイリ・マカオンだ。アイシャは皆も知っているな。
アイシャ、よく戻ってきてくれた。これからアイシャには、皆のまとめ役の薬師長をやってもらう」
アイシャが一礼をした。
「アイシャの補佐、副長にレイリだ」
レイリも同じ様に一礼をした。
「アイシャは治療方針も回復薬も、リリアス殿下が合格点をくださった。皆で切磋琢磨して知識も技術も高めてほしい。
皆はこの領地の要である、領主隊の支えだ。どうか、皆で力を合わせて頑張ってくれ。期待している!」
「「「「「はいッ!!」」」」」
「では、レピオス殿」
レピオスが席を立った。
「はい。私から少しだけ。皆さん、今回のテストは如何でしたか? 難しい問題ではなかったと思います。
皆さんの解答を拝見しました。大事な事は、分かっておられる様で安心致しました。再度、確認して頂く為に少しだけお話致します。
リリアス殿下と私が、常日頃から大切にしている事があります。
それは、無理をしない、させない。病や怪我を完治した後の事を考える。と、言う事です。
普段の生活が、いかに大事かと言う事。そして、最優先はもちろん命です。命以上に優先する事はありません。
今ここにいる皆さんは、分かっていると思いますが、その事をどうか忘れないで下さい。
私も殿下も、期待しております。頑張って下さい」
「「「「「はいっ!」」」」」
はあ、終わった終わった。
これでもう大丈夫だろう。
だが、帰る迄にケイアには会えるのだろうか?
「殿下、終わりましたね」
「リュカ、うん。ホッとしたよ」
「裏で、領主隊が選抜戦をやってますよ。見に行きませんか?」
「そうなの? 行く行く!」
明日、行われる事になった、騎士団vs領主隊の3種競技大会の選抜戦だ。
領主隊は騎士団より多いから選抜戦をやっている。
今日の選抜戦で勝ち残った者が、明日の本戦に出られる。
リュカと2人で邸の裏に出た。
おや、領主隊だけでなく騎士団の姿もあるな。
「あれ? リュカ。騎士団もいるよ?」
「ああ、はい。練習してるんじゃないですか?」
「ふーん。リュカはいいの?」
「俺とオクソール様は、いいんです」
「え、なんで?」
「獣人ですから」
おや、リュカさん。自信満々ですね。
「でもリュカさぁ、腕相撲でも予選敗退だったじゃない?」
「あれは、相手が悪かったんですよ!」
「えー……」
「なんスか?」
「いや、もしかしてリュカって、あんまりなんじゃない?」
「殿下! 何言ってんスか!? 獣人を舐めたらいけません!」
「そう?」
「そうです!」
舐めてないけどね。本当かなぁ? リュカよ。頑張れよ?
「殿下、終わりましたか?」
オクソールが俺に気付いてやって来た。
「うん、オクソール。終わったから見に来たの」
「お疲れ様でした。落ち着きましたか?」
「うん。いい感じになったよ」
「それは、良かったです」
「明日、楽しみにしてるからね」
「はい、負けませんよ」
「はい! 負けません!」
「リュカが言うとなぁ……」
「殿下!」
「クフフッ」
ほら、オクソールが笑ってるぞ。