130ー掴みはOK
「ねえ、レピオス」
「はい、殿下」
俺とレピオスは、面接する部屋に移動中だ。
「最初に一度皆の前で、ボクがポーション作るよ」
「殿下、ポーションをですか?」
「うん。皆上手に作っているけど、多分、魔力操作がイマイチなんだ」
「イマイチと申しますと?」
「ボクはね、レピオスに1対1で教えてもらったから。ポーションならこれだけ、ハイポーションならもう少し、万能薬ならもっと、て分かっている。
でも、皆なんとなくで魔力を通しているんじゃないかな?」
「殿下、そう思われたのですか?」
「うん。バラつきがあり過ぎた」
「そうですか。普通は、師と思える者に教わるのですが」
「うん。レピオスはボクの師匠だからね」
「また殿下、それはやめて下さい」
「まあ、いいけど。だからね、一度皆の前でポーションから万能薬まで作るよ。
そう時間はかからないから、いいでしょ?」
「それはとても良い事だと、私は思います。では、クーファル殿下とアスラール殿にお話してから、私は薬草を準備致しましょう」
「うん。レピオスお願い」
そうして、俺は受けに来た皆のまえで実際にポーションを作る事にした。
「では、皆さん。前から順に座って下さい」
ソールが手伝ってくれている。助かるねー。有難う。
「宜しいですか? では、皆さん。ご存知ない方もおられるでしょうから、ご紹介致します。
1番奥から、クーファル第2皇子殿下、リリアス第5皇子殿下、アスラール様、レピオス皇宮医師です」
部屋の中に通されて、座っていた者たちに緊張が見える。
「これから、お一人ずつ面接致します。その前に、リリアス第5皇子殿下が実際にポーションを作成して下さいます」
緊張でか、室内はシーンとしていたのに、騒めき始めた。
子供の俺がポーションを作るのが、珍しいか?
「お静かに。宜しいですか? では殿下、お願い致します」
「皆さん、今日はお疲れ様でした。ボクはリリアスです。皆さんの作ったポーションを拝見しました。
少し、魔力操作に迷いがある様な印象を受けたので、実際にこういう物だと確認してもらう為にこの場を設けました」
また、ザワザワとしだす。
「子供に出来る訳がない……」
「え? 皇子殿下が?」
など、声が聞こえてくる。
「今、子供と言ったのは誰だ?」
あー、ほら。クーファルが反応しちゃったよ。
クーファルの一言で、シーンとした。
「よいか。リリアスは皇子だ。不敬罪になりたくなかったら分をわきまえる事だ」
「兄さま、ありがとうございます」
クーファル、すまないよ。
「じゃあ、まずポーションから……」
俺は込める魔力量を説明しながら、ポーションを作った。ハイポーションも。サクッとな。
「じゃあ、最後。万能薬です」
また騒めきだした。
「万能薬なんて……」
「嘘だろ……」
また、クーファルが口を出そうとした時だ。
「静かにしてちょうだい! 殿下、私もう少し前で拝見させて頂いても、宜しいでしょうか?」
見ていた者の中から1人が手を上げて言った。
「構わないよ。見たい人は前に出てもいいよ」
「有難うございます! では、遠慮なく!」
その女性は1番前の席を通り越して、俺の目の前でしゃがんだ。
「えー……そこ?」
「はい、殿下! しっかり見たいので! 万能薬を作るところを見られる機会なんてありませんから!」
「君、名前は?」
「はい! 私はアイシャ・ピオネールと申します」
さっきアスラールから聞いていた人だ。
ストレートの金髪に茶色の瞳の、快活そうな女性だ。
「ああ、君が。君のハイポーション惜しかったよ」
「殿下! 本当ですか?」
「うん。もう少し、魔力操作をうまくやれば万能薬だ」
「万能薬! 頑張ります!」
「ハハハ、見ていてね。参考になれば良いけど」
「はい! 有難うございます!」
それから、我も我もと皆前に寄って来た。
「前の人はしゃがんで下さい。後ろの人にも、見える様に」
ソールが慌てて注意してくれる。
「皆、魔力を込めれるだけ込めている感じなんだ。そうじゃないんだよ。よく、見て。
今魔力を込め始めたけど、少し微妙に色が違ってきてるでしょう? このまま魔力を込めると抵抗があるんだ。少しずつ、丁寧に、魔力を馴染ませる感じだ。はい、これで万能薬だ」
「凄い……」
「え、もう?」
「俺なんて、ポーション作るのももっと時間がかかる」
皆、それぞれ思うんだろう。
「今、自分はもっと時間がかかると、思った人……」
俺は皆を見渡す。1人の男性が手を上げた。
「俺、あ、私です。いつももっと時間がかかります。なかなか魔力が入ってくれないのです」
「それはね、最初からいきなり全力でガツンと魔力を込めようとするからだよ。
もっと優しく、最初は少しずつ様子を見ながらやってみて。魔力が馴染みだしたら早いから」
「はい! 有難うございます!」
ソールを見て合図する。
「では、皆さん。控室に戻って下さい。お一人ずつ、お呼びします」
すると、1番前で見ていたアイシャが……
「殿下、有難うございました! これを見せて頂けただけでも、今回応募した甲斐がありました!」
「私もです! 有難うございました!」
「有難うございました!」
バラバラと彼方此方から声がかかる。
「良かった。じゃあ、面接を始めるから。名前が呼ばれるまで、待っていて下さい」
うん。俺の掴みはOKだろう!




